お稽古です。
騎士団の所からエリューシャ様のお部屋に戻ってきました。早速お茶の用意。
「ふぅ。部屋に戻ると一息ついた、って感じするわね。」
そのためのお部屋ですから。とはいえ、今からお稽古です。……先生はおりませんが。鈍らないように部屋で身体を動かす名目です。
「ダンス、ねぇ。」
「僭越ながら私が相手を努めさせていただきます。」
侍女たるものダンスの相手も出来なければいけないのだ。男役で。……男役のほうが上手くなったのは秘密だ。
エリューシャ様をリードしステップを踏む。
「貴女男役上手くなってない?」
愛想笑いで誤魔化します。
「……エリューシャ様はダンス、お上手ですよね。」
……この方にダンスのお稽古、必要あるのか。よく外へ出歩いてますし。
「舞踏と武闘って似てるからかしらね。」
言葉が?……いや、動きが、か。
少し激しく回してみたり、身体を反らさせてみたり。
「今日は激しいわね。」
「どこまでいけるか気になりまして。」
「やってみる?」
ならばさらに回してみましょうか。
三回転、持ち上げ回転、これもいけるのか。
「あはは、なかなか楽しいわね。」
「素晴らしい動きです。」
「さあ、もっといきましょう!」
この後私がへとへとになるまで続きました。なおエリューシャ様はけろりとしています。……さすがです。
「いい汗かいたわ。」
「湯浴みの準備はできております。」
ダンスのお稽古の前に侍女仲間に伝えておいたのです。
「そう?ではいきましょう。」
王太子妃たるもの、湯浴みも侍女が行うのです。……ええ、侍女の仕事量は多いのです。
しかもエリューシャ様は側仕えの侍女を私しか付けてないのです。私では手が回らない業務を行う侍女はいるのですけどね。エリューシャ様の前に出てくるのは基本私です。何故なのかはわかりませんが。実家からの侍女もいないとなると何か理由がありそうですね。まあいいですけど。
エリューシャ様のドレスを脱がせ、浴室へ。
「それじゃ、よろしく。」
「かしこまりました。」
やるからには磨きあげますとも。
「では失礼します。」
美しい黄金の髪は濡れてさらに輝き。浴室の熱で白い肌は赤みを帯びる。瑞々しい肌は水を弾き、美しさと共に妖艶さを醸し出す。すらりとした肢体、きゅっと締まった腰、溢れんばかりの胸。同時にマッサージを行い、外側だけでなく内側まで余すところなく私の手で磨きあげていく。ああ、ああ、今日も溜め息がこぼれるほど美しい。この美しさを保ち磨きあげる事、これこそ我が誉れ也。
「……終わりました。」
「ありがと。」
柔らかいタオルで傷つけないよう慎重に拭き取り、香油を塗る。肌着を着せ、新しいドレスを着せれば国一美しい王太子妃の出来上がり。
部屋に戻り、湯浴み後のお茶。
「……ふぅ。さっぱりしたわ。」
さて、次のお稽古といきましょうか。
※ガールズラブではありません。