演習場その2。
「お疲れ様です。」
「死ぬかと思いました……。」
全てを浄化するキラキラ空間から生還した私。
アウル殿下は次の予定へ。
「いってらっしゃい、アウル。」
「いってくるよ。」
キスですか、桃色空間が形成されております。お熱いことで……。
ようやく再起動した侍女を連れて殿下が出発した。
「さて、エリューシャ様。こちらもいきましょうか。」
「そうねぇ……、いや、演習場の中とか騎士団の施設を見たいわ。どうせ次はお稽古事でしょう?」
「……はい、お稽古がみっちりと。」
ここに来たことで詰まってます。……この方に必要なのかはわかりませんが。
「お稽古もやるけどそれはいつでもできるでしょう?それより、今見れるものをみたいわ。」
……たしかに。
「負けましたな、エリー殿。」
団長、追い討ちですか。
「……連絡を取りますのでしばしお待ちを」
「ええ、よろしく。」
一度退出し、近くを歩いていた騎士と侍女に言伝、連絡を頼みしばし待つ。
……騎士の方、なんかめちゃくちゃ慌ててたな、見られたくないものでもあるのだろうか。
「レーネ殿、王太子妃様の視察についてですが、危険な物を片付けますのでお待ちを。」
「わかりました、終わりましたら連絡を。」
「了解しました。」
……この騎士、連絡に使ってるけど同じ所往復するの大変よね。
「大丈夫です、それが仕事ですから。」
……顔に出てたか。
「ではまた連絡します。」
「はい。」
騎士が行ったのを見届けエリューシャ様の所に。
「エリューシャ様、準備が整うまでしばしお待ちください。」
「わかったわ。」
時間がかかるだろうからお茶の用意でも。……王族がくる所は大抵茶の用意ができるようになってるんだよね。
お湯が沸くまでお茶請けの準備。今日は殿下も来たし絶対なにかが置いてある……はい、ありました。クッキーですね。毒がないかは魔術で確認した後毒見。おいしい。その後自分に魔術をかけてまた確認と。……便利ね、魔術って。お湯を沸かすのも魔石ってやつで動いてるし水を出すのも魔術。ほんと魔術便利。ないと生きてけない。
そうしている間にお湯が沸いた。ポットに茶葉よし、お茶請けよし。お茶の味見を軽くして……おいしい、よし。さあいきましょ。
「お待たせしました。」
エリューシャ様とアクロイ団長にお茶を出して、お茶請けも出す。
「お茶請けが出来合いなのはご了承ください。」
「わかってるわ。」
「ふむ、美味しいですね。」
それはお茶請けの事ですか、お茶ですか。……お茶ですね、はい。よっしゃ。
「貴方とお茶するのも久しぶりね、ロイ。」
「そうですね……。魔獣征伐以来でしょうか。」
……魔獣征伐。
「あれから7年……早いものねぇ。」
「ええ、本当に。」
魔獣征伐。7年前にあった魔獣の大氾濫とその壊滅、という出来事ですね。あの時は世界規模で魔獣が溢れてたんですよね……。この国ではアウル殿下、エリューシャ様、アクロイ団長ともう一人を核に戦ったんでしたっけ。
「あの時は大変だったわねぇ。……今はかなり持ち直したけどね。」
「今も大変ですよ……。色々と変わりましたから。」
あの後すぐ私がエリューシャ様付きになったおかげで覚えてます。あれから色々精力的に活動されてるんですよね、御三方。
「変わるのはいい事よ。」
「ええ。……あの方の望みでもありますからね。」
……なにこの懐古な雰囲気。というかあの方って核になったもう一人だよね。
「あの子の理想に近づけたかしらね……。」
「どうでしょうね……。」
……重い。
「そういえばこの前会いましたよ。」
「元気だった?」
「ノロケられました。」
……生きてんのかい!死んだ人かと思ったわ!
「ちなみに貴女の前任者よ、レーネ。」
「……そうなのですか。」
前任者の事はよくわかりませんが、確かエリューシャ様と学友、だったらしいです。これも侍女仲間談。
「天才、というやつでしたね。」
「秀才でもあったわ。……錬金術師だったのよ、あの子。」
錬金術師……魔術が今のように普及する前にあった古の技術、それを扱う者ですね。10年ほど前からまた復刻する動きが出てきているんですよね。なんでも、その頃に錬金術を極めた人がいたとか。……あぁ、なるほど。
「そうでしたね。あれは素晴らしかった。」
「おかげで色々価値観も変わったわねぇ。」
ちなみに私もその流れで錬金術を少しかじってます。……古のロマンがいい。
と、ここでノックが。
「入りなさい。」
「失礼いたします。施設内の準備が整いました。」
「わかったわ。……ではいきましょう。」
「かしこまりました。」
手早く片付けて、いざ騎士団視察へ。
は、話が進まない……。