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王太子妃付き侍女の憂鬱。  作者: なな風
とある一日。
16/17

センティリアの晩餐。

お待たせしました。

 王宮の奥、地上6階ほどの高さ。とある一室にある円卓には、7人の男女が集まっていた。


 入口側に座るは一人の青年。緑髪緑眼、すらりと高い背。耳は尖り、その目には知性の光を宿す。


 その右に騎士礼服を来た若い青年。赤髪青目、眼差しは鋭く。しかし異性だけでなく同性すら虜にする様な柔和な笑みを浮かべる。


 緑髪の青年から見て左にはドレスの上にローブを纏う若い女。薄く朱の入った金髪に銀の眼。才に溢れ、新たなる物を生み出す力を持ちながら、そのふわりとした雰囲気で柔らかい印象を持たせる。


 その左隣にはかっちりとした文官服を纏う若い青年。薄く蒼の入る金髪、蒼眼。薄いフレームの眼鏡の奥には鋭く光る知性を秘める。


 赤髪の青年の隣に座るのは金髪に蒼い眼の若い女。ドレスを纏い、妖艶な雰囲気で勝ち気な笑みを浮かべる。


 眼鏡の青年の左には、美しい装飾の入る服を着こなす、美しいい青年。金髪に緑眼、威厳と活発を内包するその笑みは美しく、万人を虜にする。


 そして最上座に座るは、威厳に溢れた服を纏いながらもそれに呑まれぬことの無い金髪緑眼の男。その眼は鋭く、身体は知性と力を体現し、思わずひれ伏す様な存在感を醸し出している。


 そんな王宮の一室、給仕する者達はどこか緊張した面持ちをしている。


「さて……。」

 最上座に座る男が口を開く。


「なあ、そろそろ飯食わんかね?儂腹減った。」と最上座の男。

「賛成〜、私もお腹空いたの〜。」これはローブの女。

「威厳もへったくれもないのう。」これは緑の青年。


 最初に紹介した順に名前を言うと。

 緑の青年が、エルド・サーヴァント・アルラエルフィ。

 騎士礼服の青年が、アクロイ・ルド。

 ローブの女が、マリア・リンカネス・シャンサー。

 眼鏡の青年が、リーディ・シャンサー。

 ドレスの女が、エリューシャ・センティ。

 美しい青年が、アウル・ヘルトー・センティ。

 そして威厳の凄い男が、グラウディア・グラン・センティとなる。

 

「……とりあえず晩餐会なんですから、もう少しどうにか」とリーディ。

「ならないだろうね?」遮ったのはアウル。

「バッサリいったわねえ。」これはエリューシャ。

「んな事よりメシ。腹減ったんだが。」アクロイはもはや素である。


 祖サーヴァントにして王の相談役、国随一の騎士団長、発明家の魔術師団長、国を支える宰相、貴族の女を統べる王太子妃、次代の国王である王太子、国を統べる現国王。国の重鎮が集まる晩餐会は、割と軽い調子だった。


 各人、それぞれのお付き侍女に給仕されながら、晩餐を楽しむ。


「のうマリアよ、この前作ったという新作の甘味、あれはいつ売り出すかの?」

「あれは、まだ先かな〜。材料がなかなか手に入れにくくて〜。」

「サージャルに沢山あるらしいのですが、街道が。」

「ああ、最近きな臭いからの。毎度の事ながらバカな奴らだ。」

「思いっきりボロクソに言っちゃってもいいのよ〜、陛下〜。」

「いや流石にどこに耳があるかわかんないわよ?」

「肉うめえ」

「ロイ、お前肉ばっか食ってないでだな……。」

「そういやヴィリアがこっち来るとか言ってたな。」

「マジで〜?いつ来るの〜?」

「来るとしてもかなり先では?」

「何時かはしらん。」

「あの馬鹿娘は何をしとるのかのう。」

「遺跡とか回ってるらしいよ〜。」

「来たら色々話したいの、興味がある。」

「の〜。」

「このワイン美味しいわね。」

「美味いだろう。良いのを見つけてな。」

「さすがアウルねっ!」

「儂を挟んでイチャつくんじゃない。」

「ディー〜、私も〜。」

「後でな、マリー。」

「微笑ましいのう。」

「爆発しろ!」

「あ、父上。色々提案書類出したから宜しく。」

「確認済だ、色々問題もあるがあれならいけるかもしれん。」

「向こうも色々馬鹿娘がやっておるそうだしのう。」

「思うんだけど〜、なんで馬鹿娘?ひいかける何孫って感じじゃないの〜?」

「ほれ、血繋がった唯一のアレじゃし?」

「あ〜。アレかぁ〜。」

「今ので通じるってすげーな。」

「……マリア、ほんとにわかったの?」

「わかっちゃったのよね〜、これが〜。」

「ほう、これはなかなか面白い事になるやもしれんな。」

「ですかね。……私には勿体ない妻です。」

「そんな事言う口は〜、どれだぁ〜?」

「うん、ご馳走様だね二人共……。」

「それにしてもこの世代の優秀さはなんだろうかの。」

「謎じゃのう。馬鹿娘入れて6人、5人はここにおるし馬鹿娘は魔王の嫁か。」

「他の者も名は上がらぬが優秀だとも。特にこいつらの世代はあの時に活躍しておる。」

「……なんとも、世界の采配かと疑ってしまうのう。若しくは……。」

「精霊王、か。」

「わからんがのう。」

「……うーむ。」

「サーヴァント老、ジジ臭いって言われるぞ。」

「突然なんじゃ。というかジジイじゃし。」

「あの中に入っていくロイ君……。」

「そこに痺れる憧れる〜?」

「いえ全く。」

「あら、このデザートもしかして。」

「んふふ〜、新作〜。」

「前に作ろうとしてた奴ではないか?」

「殿下正解〜、ぱちぱち〜。」

「つるりとしてて美味しいの。」

「みずよーかん、っていうんだよ〜。なかなか中の餡と外の固まり具合が決まらなくて〜。」

「味の兼ね合いもありましてね。これ、というものがなかなか。」

「陸だと変な味のばっかなんだもん〜。やっぱり海藻がほし〜。」

「海藻って海の中にある変なやつだろ?まず食えんのかって所からだよな。」

「あれおいしーのに〜。」

「食べた事あるのか……。」

「そのチャレンジ精神はどこからくるのよ……。」

「最近だと豆を腐らせたりしとるらしいのう?」

「発酵させてるんだよ〜。めざせわしょく〜。」

「たまに聞くがそれ、何のことかの?」

「んふふ〜、ひみつ〜。」

「ヴィリアなら知っているかもしれんな。」

「知らないとおもうよ〜?」

「そうなのか。」

「まあ、色々あるんだよ〜。出来てからの秘密にしとくね〜。」

「そういえば話が変わるのだが。」

「なんです?」



 ……延々と続く会話。私達侍女は無言で淡々と給仕をしております。ま、この場は交友でもあり会議でもありますからね。そして途中から酒盛りになる。何もなければこうです。これが三日に一回ペースで。基本的に社交シーズンじゃなければ夜は暇ですしね。


 それにしても、長い。しかも途中で陛下とサーヴァント老が剣舞しようぜ!とか言ってやり始めたり、カードで賭けゲームし始めたり。もはや酒場です。こうなると酒瓶を置いて、あとは好きにやってるから、なんて言われるので裏で私達もご飯食べたり。交代で確認しながら私達も駄弁ります。お酒も少し頂いて、パイプをやったり。この時間だけ、侍女にはとっても緩いんです。なおこの時間、騎士の警備は凄まじい硬さになります。その代わり別の時間では騎士が緩くなって、侍女が警備したり。侍女も強いんですよ、実は。……おっと、酒がきれそうなので補充。……あの御方らどんだけ飲んでるんだ。沢山飲んでも全員平然としてやがる。どうなってるんだろう。


 その日は結局4時間くらい飲んでましたね。





 さて、晩餐会からお部屋に戻りました。

「いやー、飲んだわぁ。」

「飲み過ぎでは……。」

「まだいけるわ。」

 どんだけだよ。ビン何本飲んでたと思ってんですか。

「ふぁ……。」

「もう少し我慢を。」

 化粧を落とし、髪をほどいて、ドレスから寝着に。寝室に行き、確認。よし。

「お水を近くに置いておきますので、よかったら。」

「ありがと。……それじゃ、私は寝るわ。」

「はい、おやすみなさいませ。良い眠りを。」

「ええ、おやすみ。今日もお疲れ様。」

「ありがとうございます。」

 深々と頭を下げ、寝室から退出。最後に部屋の確認をして、裏方をする侍女達に眠られたと報告。互いに激励し、解散。

 自分の部屋に戻る。


 うーん、今日は、早めに寝ようかなぁ……。

「ようお疲れ、あいつらまだ飲み会してんのな。」

 そうだった……この本があるんだった……。

「無理に読むなよー、疲れを残すのは厳禁だ。つか寝ろ。」

「そうします。」

 侍女服を脱いで、ベッドにダイブ。

「おう、おやすみ。」

「おやすみなさい……。」

 そのまま夢の中へ。

「寝るの早っえぇ……。」

 ぐっすりです。










仲間は皆結婚してるのに1人だけ独り身のロイ君。モテるんですが……。

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