起きてください。
「エリューシャ様、起きてください。」
昼寝中のエリューシャ様。寝顔も美しいです。
「あと五分……。」
「駄目です、今起きないと寝起き最悪ですよ。」
「んぅー……。」
起きませんね。ならば失礼して。
「エリューシャ様……起きなければ食べてしまいますよ……?」
「んひゃぁ!」
っふふ、耳元で囁く、これかなり有効。
「びっくりした……レーネ、やめなさいっていつも言ってるじゃない……。」
「起きないエリューシャ様が悪いのです。」
「心臓に悪いわよ!まったくもう……。」
「ふふ。……コホン、おはようございます。とはいえ夕方ですが。」
「おはよう。軽く汗をふきたいわ。」
「すぐにお湯をお持ちいたします。」
用意はしてある。
「お持ちしました。」
「はやいわね。」
「お拭きいたします。」
「背中おねがい。」
背中かよチッ。……丁寧に拭きますとも。エリューシャ様の美しさに曇りがあってはいけないのです。女は背中で語るのですから。
「なんか手つきが怪しくない?」
「そんなことはありませんが。」
「そう、ならいいけど。」
あっぶねー。
体を拭いたら部屋着を着せて寝室から移動。目覚めのお茶です。
「コーヒー飲みたいわ。」
まさかのっ!
「かしこまりました。少々お待ちを。」
淹れる前でよかったわ。
コーヒーは……あった。挽いて粉にして、それと火の魔石を準備。フラスコに水を入れて、外をよく拭いて、と。
「せっかくなので、目の前で淹れますね。」
フラスコの下に魔石を置いて、加熱。
「へえ、面白い形してるわね、それ。」
沸騰してきた。フィルターよし、ロートに粉よし。フラスコの上に差し込みますと。
「……お湯が上がってきたわ。どうなっているの。」
面白いですよね、これ。全部あがる前にかき混ぜて、粉から抽出しましょう。層になったら少しそのままに。
「なんでも圧力が関係しているらしいですよ。」
そろそろかな。魔石を停止、火を外す。軽くかき混ぜて、落ちるのを待ちましょう。
「火を消すと落ちてくるのね。」
落ち切ったら、完成。
「お待たせしました、コーヒーです。今日はグラスゴルの豆を使ってみました。」
「いい香り。……おいしい。この苦味がまた……いいわねえ。」
美味しいコーヒー、いいですよね。
「時間はまだあるの?」
「そうですね、もうしばらくしたらお着替えを。とはいえ、コーヒーを楽しむ時間はあります。」
「そう、わかったわ。……一人じゃ飲みきれないから、貴女も飲みなさいな。」
「……ありがとうございます。」
コーヒーブレイクとしましょう。
「さて、そろそろ。」
「ええ。」
コーヒーを片づけて、ドレスの用意。コルセットを締めて、と。
「もう慣れたけど、コルセットってきついよねえ。」
「ええ。エリューシャ様は腰が細いですからあまり締めなくていいですが……。」
「貴女も十分細いと思うけど。」
「正直勘弁願いたいですね。」
今日は少人数の晩餐ですから、食べても問題ないようあまり締めずに。きらびやかなドレスを着せて、ドレッサーの前へ。今日のドレスは薄い緑で。
「よろしく。」
「心得ております。」
化粧を施して、髪を結う。……素がいいですから化粧もそれを活かす感じで。
ぱぱっと施して、と。ネックレスはどうされますか。
「そうね、これで行くわ。」
青の石付きですね、わかりました。
ネックレスをつけて、各所をチェック。……よし。
「完成です。」
王太子妃、降臨です。
「さあいきましょうか。」
いざ晩餐へ。
コーヒー美味しいですよね。