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一
我が家には、ある種変わった庭師が雇われている。
その庭師は寡黙で壮年の見目は悪くない人ではあるが、私が行くとそそくさと身を隠すようにどこかへ行ってしまう。
始めの頃はその失礼な態度に憤慨したけれど――父様曰わく、恥ずかしがり屋なのだそうな。
父様が雇った時は恥ずかしがり屋な素振りはなく、黙々と仕事をする勤勉な庭師だったらしい。
それが変わってしまったのは、私が生まれて成長してからなんだそうな。私が一体何をしたというのか、さっぱり分からない。
父様に仕事に関する報告をする際は筆談で済ませ、私に対してはその筆談すらなくささっといなくなってしまう。
まあ、一介の使用人が雇い主の娘に気安く話しかけるとかが無いのは当たり前の事なのだけど、どこか彼の態度は腑に落ちない。
そして今日も、彼は私を見かけただけでささっと姿を消す。
まるで――私から逃げるかのように。
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