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STAGE1

半分ギャグのボーイズラブ風味です。更新遅いので、読む際にはご注意ください。

自慢じゃねーけどさ。

俺って何気に、凄い奴な訳よ。


成績だってまぁまぁだし、スポーツだってできる。

ルックスもまぁ、そこそこ?だし

トークも面白い。


そんな訳で、俺ってば結構女の子にもてちゃったりしてさ。

バレンタインの数とか毎年自慢だった訳なんだけど…


どうやら、俺よりほんのちょびっとだけ多くチョコを貰ってる奴がいるらしい。


あまりいい気はしなかったけど、まぁそれはそれ。

チョコの多さで人間決まる訳じゃないし。

心の広ーい俺は1歩譲ってやってたワケ。



チョコで負けても、これだけは絶対に勝てる。

そんな“モノ”を俺は持っていたから。



それは女の子の人気でも、

スポーツでも

成績なんて物でもない。



人によっては下らないなんて言うかもしんねーけど

俺にとっては超重要。超大事。

ってか、マジで人生カケテマス?



だから、絶対に負けるわけにはいかなかったんだ。



たとえ不様に再戦を申し込んででも…



+++++++++++++




ガチャリ、と最後にレバーが鳴る。

相手の攻撃が1発当たった瞬間に、今まで神業としか思えないスピードで操っていたレバーをその手から離した。

画面の中で使い慣れた愛着のあるキャラが殴られていくのを、まるでドッペルゲンガーでも見るかのように呆然と眺める。


いや、確かにある意味ではドッペルゲンガーなのだろう。

相手も彼と同じ、『滝沢』と呼ばれる格闘キャラを操っていたのだから。


相手の一連した攻撃が終わると、エコーのかかった悲鳴を上げて「滝沢」が倒れる。

「滝沢」を操作していた男---須藤すどう 圭吾けいごもそのまま背中からばったりと倒れ込むのでは無いかと言う程、顔を蒼白にさせた。


「すげーーっ!秋葉タッキーが破れたぞ!!」

「おいおい、4天王の中の最強と称されるタッキーだぜ?よりによって同キャラで倒せるもんかよ?!」

ギャラリーは親切にも、その意外性を強く騒ぎ立て、“負けた”という現実味のない出来事を強く反芻させた。


ガタンッ


茫然自失に陥っている須藤を再びこの世へ引き戻したのは、皮肉なことに彼をそんな目に陥れた、対戦相手の席を立つ音だった。


慌てて弾かれたように立ち上がり、その手を掴む。

「待てよっ!名前言っていけ…!」


悔しいぐらい真摯に聞こえたそのセリフは、相手の口を割らせる潤滑剤になった。


北川きたがわ雅弘まさひろ


名前だけそうボソリと告げると、ギャラリーをかき分け颯爽とその場を後にする。


(北川…雅弘だって…?)


須藤は周りの視線を気にせずに、自分に初めて屈辱を味あわせた人物の背中を見送っていた。


(俺にチョコレートの数で勝った男が、アイツだってのかよ…っ?!)






キーンコーン…

チャイムが鳴る。毎日のように繰り返される一日。

強制的に押し込められる校舎には、人の数だけ喜怒哀楽の様々な感情がつまっている。

その多彩な表情は少しずつ周りの空気に解け、怒っていればその憤りを。楽しければその高揚を、周りの人たちへと伝わらせていた。

クラスという同じ空間に閉じこめられている以上、その一人の感情はもはや一人だけの物ではない。

その人が纏っている空気で、周りの人達の受ける風が変わるのだ。


“貴方がいるだけで、場が華やぐわね“などという言葉はその人がいかに明るい心を持ち合わせているかを讃えたものに過ぎない。



----そして。

この人物が纏っている空気は、その曖昧さによって混乱を引き起こし

クラス中を嫌な気分へと染め上げていた。



「…なぁ、やっぱアレ怒ってるんじゃねぇか?眉ピクピクいってるぜ」


「いや、笑っているんだよ。その証拠に口元がひきつっている。時折掠れたように笑い声が聞こえるしな」


「でも、涙流してるよ?」


須藤は一体何時からそこにいたのか…

クラスの誰よりも先に教室へいたかと思うと、空虚に天井を見上げ、くつくつと奇妙な声を発していた。


第一発見者曰く、『7時前からあの状態だった』らしい。



「なぁ須藤。一体全体何がどうしたってワケ?見ててすんげぇ気持ち悪いんだけど」


その気色悪さに耐えきれなかったのか、隣の席の男が呆れたように話しかける。


「あはっ…あはははははは」


「そりゃあお前が前々から変な奴だってことは知ってたけどさ。それにしても今日のは一段とガイキチじみてるだろ。委員長なんて気味悪がっちゃって教室入ろうとしないんだぜ?」


「ふひゅっひゅっ…ひゅーほほほほほほははははは」


「なんか悩みとか相談とかあるんだったら聞いてやるよ。

なぁに、水くせえことは言わなくていい。俺とお前の仲じゃん。何でも話せってんだ。

…あ、そんかわしこの前借りた昼食代はチャラな。この季節出費が多くて大変なんだよ」


「へへへへへへっ…へはははあはははは」


「もちろん話したくない事もあるだろうけど、無理には聞かない。話せる範囲でいいんだ。

話すことで自分の中で意見がまとまるなんて事もあるだろうし。

もし何か対策が必要なら俺だけじゃなくクラスのみんなして協力してやるからさ。だから……」


「へひゃ〜っひゃっひゃっひゃっ…ぷぷぷひょーっひょひょひょ」


「…………」



カタン、と小さな音を立てて話しかけていた青年が立ち上がる。

続いてこぼれる大きな溜息。

周りの者は皆、彼が呆れ諦めたのだと思った。

しかし、彼は吐いた息をそのまま大きく吸い直し、意を決したかのように飲み込むと、拳を握り込み…


「チェストォーーーー!!」

「ごふっ!?」


ドガシャーン


周りの机や椅子を見事に巻き込んで、須藤が床へ倒れる。

その騒がしさと相反して教室内は一層の静寂に包まれた。


バサバサバサ、と机から教科書がこぼれる音だけが張りつめた空気を震わせる。


「………ふぅー…」


呼吸を整えながら、ゆっくりと繰り出した拳を収める隣の席の男。

その動作に答えるようにして、須藤の埋まっている瓦礫の山が少し傾いだ。

ガラガラと机を退かしながら、口元から血を流している須藤が現れる。


「ぐふっ…今のパンチは…効いたぜ」


「“あのスバラシイ日々をもう一度〜リメンバーオブメモリーズ〜”だ。覚えとけ」


あらかじめ決まっていたらしい技名をワンブレスで述べると、口端を歪め笑みを浮かべる。


負けずに須藤も汚れた口を拭うと、相手を強く睨み付けながら狡猾に笑って見せた。


「へっ…へへへへ」

「はっはっはっは…」


どちらともなく浮かべた笑いは、次第にその勢いを増し隣のクラスに聞こえるほどの声量を得る。

笑い合う二人。緊迫する空気。

次にどちらかが動いたとき…勝敗が決まる。

誰もが息を飲み、その成り行きを見守っていた…

…その時。


「コラーーーっ!チャイムはもう鳴っとるぞ!席に着かんかっ!!」


怒濤のような咆吼が聞こえ、それに触発されるようにガタガタと教室内が揺れる。

その揺れが収まった頃には、先程までいがみ合っていた中心の二人も含め

クラスの全員が整然と沈黙を守って各々の席へと着いていた。



今回の勝負は、担任の先生へと軍配が上がった。






ギャグです。ふざけて書いてます。

でも、高校生のこういう漫画っぽいノリは当時しかできず、忘れがたい思い出になっている筈。

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