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転生なう ~守護霊なう in ボーナスステージ~  作者: 宇龍地
第一章 宗教と神様は別
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吾輩は猫ではない

奴隷の猫耳さん視点です

 困ったことになった

 地上に降りてきたは良いものの、まさか降りた先が獣人とは・・・


 この世界では人間や動物に神が降りることが間々ある

 その際動物に降りれば神獣、人間に降りれば生き神として敬われることになるのだが、獣人に降りると困ったことが起こる

 呪い憑きとして扱われてしまうのだ


 元々獣に近い獣人に神が降りた時、獣の部分が大きく出ることになってしまい、結果的にそれを見たものから化け物扱いをされてしまうのだ

 全くもって不本意だが、恐怖の対象となっても仕方の無い姿なので甘んじて受ける他無い


 そして、勝手に降りた手前誰かに言って天に帰る訳にも行かず、この命が尽きるまで化け物扱いを受けねばならないのだ


 そんな訳で、降りた先の獣人の娘には非常に悪いことをしてしまったが、このまま付き合ってもらう他無い

















 暫くすると獣人狩りに遭った

 獣人はこちらの人間からすると差別して良い対象となっており、奴隷として頻繁に狩られるのだ


 わたしが表に出なければ、この娘もただの獣人でしかない・・・あえなく捕まってしまった

 暫くすると、獣人狩りの犯人が賞金稼ぎに捕まり、殺されてしまった

 賞金稼ぎは借金があったらしく、奴隷商に引き渡される前のわたし達を引き受け、今度は別の奴隷商に引き渡したのだ・・・なんと言うことだろう?この世に神は居ないのか!?


 わたし達は二束三文で奴隷商の手に渡ると、程度の良い者は貴族が愛玩用に・・・力の強い者は作業奴隷として鉱山や伐採場に売られていき、とうとうわたし(この娘)だけ残った

 この娘も本来は愛玩用として売られるはずだったのだが、一緒に捕まった者の証言で呪い獣人であるとばらされ、売るに売れなくなってしまったのだ


 そんな訳で、どうした物かと悩んでいる奴隷商の前に妙な子供が現れた

 子供はこの娘を興味深げに眺めると、なんだか少し悔しげな色を見せた


 奴隷商は子供に話を向けたようだった

 どうやら子供がこの娘に興味を持ったのを見逃さなかったようだ


 「おや坊ちゃん、奴隷を買いに来たんですかい?」

 「いつまでも宿暮らしをするわけにいかなくてさ。かと言って学校に行きたいから下働きが居ないと差別されるし・・困ったもんだよ」


 まずは他愛の無い世間話から・・・


 「そりゃ大変ですなぁ・・・お役に立ちたいところですが、うちは見ての通りモンスター専門でして」

 「こいつら奴隷として売りに来たんじゃないんですか?」

 「ああ、こいつらは・・・なんというか所謂虐待用の奴隷みたいなものでねぇ」


 こちらの事情をある程度話す


 「人間の奴隷は人権があるんであんまり無茶は出来ないんですよ。だから人権の無いモンスターを買うんです」

 「頭も良くないので下働きにも余り使えないんですよ、それでも良ければお売りしたいんですが・・・さっきも言ったように人間に出来ない事をさせる為の奴隷なのでそれなりの金額なので他の奴隷を買った方が良いと思いますよ?」

 「この子・・・値札ついてませんね」

 「あ~・・・こいつですか。いや、実はモンスターという事で買ったは良いんですがね?実は呪い獣人という奴でして・・・」

 「呪い獣人?」

 「呪い獣人は人権があるので虐待奴隷としては使えない、そのくせ獣化すると下働きが出来ないので雑用奴隷としても売れない困り物で・・・」


 興味を向けているのに気付いていたくせに、今気付いたようにしれっと事情を説明する


 「坊ちゃんなら、この子を買値で譲って差し上げても良いですよ?」

 「へ?」

 「いや、でもお金全然無いですよ?大銅貨で10枚しかもって来てないし」 

 「それっぽっちで奴隷を見に来たんですか・・・そりゃ途方に暮れるのも解ります」


 子供は自分が出せるだけの額を提示したようだ・・・これ以上では親の承諾が必要だろう


 「ならそれでお譲りしましょう・・・食費ばかりかかるのも面倒ですし」

 「え?五分の一にも行ってませんけど良いんですか?」

 「ええ、実は借金のかただったのでもっと安く手に入れたんですよ」

 「何か注意事項とかあるんですか?」

 「わたしも身請けして日が浅いのでまだ獣化した姿を見ていないんですよ、条件も知りません」


 この子供の気が変わらない内に情に訴えかけ口車に乗せて売りつけるつもりですね?

 親に相談したら「呪い憑き」という所で拒否されますからね


 「なるほど・・・経費が殆どかかってなくて注意事項の申し送りも出来ない分安く売ると」

 「そう言うことです・・・って随分お勉強なさっておられるようで。どこかのお店(おたな)のご子息でもなさそうですが」

 「つい2年前近くの村に移ってきたんですけどね、親の仕事を探してこの間こちらで勤める事になったんですよ。勉強できないと学校には入れても浮きそうなので割りと勉強しました」

 「そうですか・・いやまいった」

 「ん?」


 ん?


 「先ほどの大銅貨10枚・・・足元を見ましたね?」

 「あ・・ばれました?」

 「ええ、いくらなんでも奴隷を買いに来たにしては少なすぎますよ。恐らく予算は20枚くらいじゃないですか?」

 「!・・・そこまでですか」

 「子供の小遣いとして大銅貨10枚は確かに大金です・・・が、奴隷を買いに来るには少なすぎる。無知な坊ちゃんならともかくある程度勉強をして居ればそんな無謀はしないがそれでも用意できる金額はたかが知れている・・・失礼ながら、親が流れ者であるなら良くて20枚では無いかと」

 「なるほど・・・単に足元見ただけならもっと持ってるだろう所を身分を考えて少なく見積もるか商人さんも若そうに見えて結構な経験を積まれてますね」


 なんと・・・この子供、どうやら少なめに言って値切るつもりだったようです

 まさに子狸・・・背後に狸のような丸いシルエットが浮かんで見えます!!


 「良いでしょう、先にそれでお受けしてしまいましたしね、こちらも勉強代と思っておきます」

 「ありがとうございます」

 「いえいえ、こちらこそ不良債権になる所を原価より高めに売れたわけですし。上出来ですよ」


 お互いを湛えあう姿は正しく化かしあいと言う感じでしょうか

 この子供、末が恐ろしい・・・と言うかわたしこの子供に仕える事になるんですか!?













 暫くすると身なりの良いお嬢さんに声をかけられました

 意外と身分の高い子供だったのでしょうか?

 しかし親の都合で村から出てきたと言いますしそこまで身分が高いとも思えませんが・・・

 とか思ってたら馬車に同乗する事になったようです、わたしは少し離れて同行している騎士の馬に乗せてもらうことになりました

 自分の足で歩かなくて良いのは助かります










 役所で登録が終わるとお風呂に入れて貰いました

 奴隷になってから水浴びもろくにさせて貰えなかったのでありがたいのですが、隅々まで人の手で洗われるのは抵抗が・・・やめてっ!そこくすぐった・・あっ!!!お尻のわれめまでっ!?


 お風呂から出て身体も拭いてもらい、新しい服を着せてもらってぐったりしていると、わたしを買った子供が迎えに来てくれました

 そう言えばお嬢さんからアウル様と呼ばれていましたか・・・


 アウル様にもう出ても大丈夫かと聞かれたので頷くと、一緒に外に出ました・・・太陽がまぶしい


 表に出ると、あのお嬢さんが待ち構えていました・・・なんでしょう?手薬煉引いているようなそんなオーラを感じてしまいます

 馬車に乗り込み、動き出した所でアウル様の新居の話が出ました

 どうやら便宜を図るよう動いてくださったようです


 連れて来られたのは見るからに高級な集合住宅・・・奴隷も買えないと悩んでた子供がこんな所に住めるわけが無いじゃないですか!!


 そんな心配をしていると、そんなことは解っているという顔をしながらしれっと下見に応じるアウル様・・・さすが子狸です、肝が据わってます

 なんだかんだと質問を投げかけてみますが、どうやら相場の半額で住める事になったようです

 しかもアウル様本人の信用で契約金無しとかどれほど信用があるんですか!?

 って言うか、なんだか神の使いとか変な事言ってましたね、そう言えば











 アウル様の泊まっている宿に着き、アウル様から名前を頂きました・・・「ターマ」と

 なんと言うことでしょう、奇しくもこの娘に降りたわたしの名前を付けられました

と、言うわけで「呪い憑き」の正体は神様でした

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