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転生なう ~守護霊なう in ボーナスステージ~  作者: 宇龍地
第三章 竜の背骨と帝国と魔王
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水の枯れた村

 この世界の治水工事は俺の前世の治水工事とはちょっと違う

 所謂「秘匿技術」だ

 今回のような毒素を含む水の処理に関してもこういった「秘匿技術」と言う名前の魔術が存在している


 水神教に伝わるこの魔術は、簡単に言うと濾過技術となる

 ただ、俺が知っているような小石や砂、貝殻を使った濾過ではなく「水質浄化」の永続魔術を施されたフィルターを使った濾過だ

 流石にそんな魔術は知らないので、俺は興味深々でその術を見させてもらった


 まず作るのは溜池だ

 毒に犯された水を溜池に溜めておく

 この溜池の中に施すのが毒物を沈殿させる術と浄化させる術だ


 前世風に言うと、ゴミや有害な物質を絡め取って沈殿させる薬品と、塩素などによる殺菌に当たると思って良いだろう

 これに因って大雑把に浄化された水が次の溜池に流れ込む

 この溜池は非常に深く、フィルター状に小石などが敷き詰められているが、これにももちろん毒素を除去する魔術が施されている


 この溜池の存在は、雨などによる増水を見越したものだ

 増水に因って、一つ目の溜池で浄化出来ずそのまま下に流れてしまう水を、二つ目の溜池でフィルターにかける

 フィルターそのものの浄化能力は低いが、そもそもここに流れ込む水は普段流れているものよりも毒素は薄いため問題は無い


 最後に、川に合流させる前にまた溜池を作る

 ここで最初の溜池以上の浄化を行い、川に合流させるのだ


 前世風に言うと用水路に流す前に浄化槽を通し、更に本流に流す前に浄化すると言った感じだろうか?

 何言ってるのかよく判らなくなってきた


 まあ、とりあえずこの有毒な沢からの流れはある程度浄化されて本流に合流すると言う事らしい


 こうやって本流に合流するまでの流れを浄化しても、結局長い間たまった毒素もあるので完全に浄化するのは難しい

 そこで、まず根元の浄化処理をした後更に本流からの取水口にも毒素の吸着装置を沈める

 根元をどうにかする前にこういった物を入れても、すぐに機能しなくなってしまうので順番が大事なのだ


 本流はどうするんだと言う話もあるかもしれないが、本流まで完全に浄化してしまうと今度はこの毒素を必要とする生物が生きられなくなってしまうので、そこまで考えてこのような形を取っていると言う


 じゃあ、滝壷から本流までの流れはどうなんだって話もあるが、実際その流れを見た限りでは生き物は見受けられなかった・・・毒素が強すぎたのが原因だと思われる

 生き物が水を飲みに来た気配も無かったので、正しく死の川だったのだろう


 そんなこんなで滝壷を拠点に浄化作業を続ける事一週間、土木魔法に明るい掃除屋を集めた事もあり比較的スムーズに作業も進み、そろそろベースキャンプを移す事になった


 探索をしつつ下流に向かうと、水を汲もうと思って途方に暮れている獣人の兄弟を見つけた

 言語把握の額冠を使い話を聞いてみると、少し離れたところに獣人の村があり、その村の井戸が枯れた為、この川に水を汲みに来たのだという

 ここは毒が流れていたんだが大丈夫かと聞くと、この川の水を使いに来たのは彼らが把握できる歴史では初めてだったというので、飲み続けて体調を崩すような事は無かったらしい


 とりあえずこの川はもう数日かけて浚う必要があると言う事で、迂回先を教えた上で、暫くは水を汲みに来ないでも済む様、村で水を作ってやることにした

 次のベースキャンプはここに作ると言う事で、俺だけが彼らの村に行く事になった

 ここまで来れば突然来られてやばいような相手は居ないので、居てもお飾りになるだけだから仕方ない


 むしろモンスター相手なら俺だけのほうが楽だしな

 逃げやすいと言う意味で












 村に着くと、そこにはケモ耳が溢れていた

 いや、溢れていたというには疎らだったか・・・人口は50人にも満たないし

 村は森の入り口から若干離れた見晴らしの良いところにあり、森からいつ魔獣が出てきても対応できるようになっている


 井戸は村の中心にあり、確かに干上がっていたようだ

 とりあえず井戸の中ほどをめがけて水生成の魔術を使う

 井戸はどういう訳か、まるで乾いたタオルのように水を吸い込む

 どうやら地下水そのものの量が大きく減っているようだ


 井戸の淵まで水を満たすが、未だに水位は下がり続ける・・・このままでは埒が明かないので溜池を作る方にシフトする事にした


 まず土木魔法で直径10m、深さ5mの穴を掘る

 次に、掘り出した土の中から粘土を抜き出す

 抜き出した粘土で穴をコーティングして、水が周りに吸収されるのを防ぐ


 次に小石をより分けて底に敷き詰める

 若干足りなかったので周囲から小石を集めてもらった

 これでゴミなどが沈んでも小石の間にもぐりこむはず


 あらかた作業が終わった所で池を水で満たす・・・これで暫くは水の問題は無い


 簡単な濾過装置を作ってやって、「池の水はすぐに汚れるから、まずこの中に水を入れて綺麗にしてから沸かして飲むように」と教える

 この辺りは王国の獣人居住区にも指定されている為、一応文化的な生活への理解は深いので問題なく伝わったようだ


 こうして、獣人の村での水問題は解決した

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