皇国戦記20万PV記念作品「一般市民」
「配給制にならないだけでもましか」
俺はそう言いながらスーパーで買物をしていた。
「まあな、第2次大戦の時には、かなり厳しい統制だったと聞くからな」
俺の友人が、ブロッコリーを選びながら俺に言った。
第3次世界大戦とも言われている戦争が始まってから数ヶ月。
戦況は変わることは無かったが、戦場は刻一刻と変わっていった。
「しかし、戦争前と比べて、かなり高くなったな。卵ですら数倍になったぞ」
10個入りのMサイズのパックが、実に750円前後になっていた。
「そうだよな、昔は128円ぐらいで買えたものな。これも戦争か…」
「インフレも激しくなってきたからな。デフレなんて死語になりつつあるよ。ずいぶん昔に、言い合っていたインフレになるために一番簡単な方法の答えって、なんだったけな」
「円を刷りまくって、市場の貨幣価値を極端に減らすこと。これで、すぐにインフレになる」
「確か、それって、代わりに極端な円安になるんだったな。そして、どうしようもなくて、結局日本は破綻すると」
「まあね。そんな気はしていたんだけど、実際にインフレになると、かなりキツイな」
ブロッコリーを棚に戻し、カートを押して横へ移っていく。
「物資が足りなくなったために、需要と供給のバランスが崩れて、物価が上昇することによるインフレ。そういうかんじだな」
「しかも給料は据え置き。どうやって暮らせっていうんだろうな」
「来月からは、一定の期間をおいて、デノミを実施するとか政府は言ってたけどな。どこまで信用できるやら…」
「んなことは、市井の一国民が知っているわけないって。どうしろっていうんだよ。デノミがおっつかなくなったら」
「その時はその時で、お上が考えてくれるだろ。そう言い続けていてもダメなんだろうけどな」
俺は、キャベツの山から、一番上にあったものを手にとって、新鮮かどうかを確認する。
「ん、これにしよう」
「一玉いくらだ」
「4万3千円。これでも安いほうさ」
山になっていると行っても、3つしか残ってないから、あとは平坦な場所に積まれているものしか残っていない。
それでも、無いよりはマシだと言った諦めが混じった顔をしながら、カゴへといれる。
「こんな戦争、いつになったら終わるんだろうな」
「さあな」
しれは誰でも同じ事しか言えなかった。
いつ終わるか分からないこの戦争は、いつの日にか終わるという事で、全員一致していた。
未来は誰にも分からないとは、この時のような場面で使われるべき言葉だと。