さいはての、NIPPON。後編⑧
『BRASIL 2014 UEFA WORLD CUP』
絶対に負けられない戦いが、そこにはある。23人の選手。金に輝くトロフィーがテレビで流れる。
美織は上を向いたら、二人警察が呼んで屋上に入ってきた。
『おい!何してんだ!』
美織は、初めて咽び喚いた。
『いやあああああああ。』
2014年12月10日 とある歌手の全国ツアー真っ只中。
現場近くにいた高校生から110番通報があった。警視庁羽田署員が駆けつけたところ、現場には10代の高校生男女が倒れており、その場で死亡が確認された。
取調室にて、尋問をしていた。
『君が、殺したんだろ?わかってんだ。背中から君の指紋がついてる。状況を説明してくれないかな。困るよ。君、このままだと一生棒に振るよ。』
書記の人が立って庇ってくれた。
『落ち着いてから、言ってあげたほうが。』
それから、時間を空けることになったのか、しばらく牢屋の中で過ごすことになった。
美織にとって、最後の、綾の笑みは理解不能だったけれど感触は残っていた。男、金、狂わせてる狂わされた相手を見て否定したくなった。殺人で疑われ弁明する気持ちにならない。もうもはや、全てがどうでもいい。
3日後、面会の依頼が来た。
待合室に向かうとそこには、元太が入ってきた。
『ああ。ドナル・D・エースなのかファンキー・D・パフィなのかわからなくてさ、俺おかしくって。思わず教師に行っちゃったよ。それは、混ざってますよって。』
調子の狂う元太の話は、前までの私なら、笑ってバカとかアホとか言いながら平穏さを楽しめていたが、今となっては雑音でしかなかった。
美織は、言った。
『うるさい。』
真面目な顔つきで事件の経過を教えてくれた。
元太は、続けた。
『綾は、そのヤバすぎた。監督、担任、家庭科の教師まで、関係が出過ぎて公表できないってさ。』
見たことのない表情をこちらに向けていた。
元太は、続けた。
『仕事と感情は切り離せる。怒られた時とかイライラするとかそういのはない。機械になるんだ。死ぬなよ。』
美織は言った。
『それ励ましているの?どんな種類の感受性で見守るべきか、そう言う提案をして欲しかった。』
元太は、続けた。
『俺にとって、走ることはひたすら走るだけだった。意味なんてなかった。自由にサッカーができたらなんでも良かったんだよ。善い行いは、必ず罰を受ける。こんな馬鹿な話があるかよ。あいつらは死んだけど、何も残らなかった。死んで美しいだなんて、ありえない。残された人間はこんなにも悲しいし、おかしい。』
そう言われて美織ははっきりした。
感情を切り離したその先に見えたのは、怒りでも悲しみでもなく、自分だけがいた。
元太は、吐き捨てた。
『俺たちは、あいつらの分も生きて世界に言ってやろう。ここがNIPPONだって。』
この年の日本代表は、奇しくも予選敗退するのであった。
さいはての、NIPPON完




