さいはての、NIPPON。後編⑤
購買部で快活にパンを買う美織。
『パンをください。』
『え、袋、いらないですか。』
『いらないです。』
売店のフランスパンと麦パンは、半分食べたところでお腹いっぱいになった。ばつが悪そうに、売店のおばちゃんに幼気な笑顔を放った。
『すみません。やっぱり袋もらってもいいですか。』
『あ。はい。』
おばちゃんは仏頂面で応えられてが、やっぱり人間だった。
部活前に、小腹を満たした美織は、向かった。
部室で先輩たちが怒っている。
『あいつは舐めている。慎一の態度は何なんなんだ盗みやがって。嫌いだ。偉そうすぎる。サッカーだけよくても盗むのはダメだろ。』
米倉 美織にとって今回の事件は腑に落ちなかった。
点を決めた。左手を上に上げて、歓喜を掴み、元太が頭を掴み、慎一が肩に乗ろうとしてきている。そしてうしろから大貫先輩が走ってきている。
あれだけ劇的な予選決勝を収めたのに、慎一が部活のお金を盗んでいたなんて信じられなかった。
慎一のいない部活は、美織にとっては灰色だった。
目の前で、呆けた練習を、やきもきしながら見守り美織は綾に投げかけた。
『今回の事件おかしいと思わない?』
綾は、歯牙にも掛けないで答えた。
『そー。最低だよね。慎一君だったなんてね。美織は、そのお気の毒だね。ほんと。』
美織は、要領を得ない回答に少し唖然したが、続けた。
『そういうことじゃなくて、あり得ないというか、勘というか。』
綾は、それを聞いて少し動揺したが、茫然自若な態度で冷淡に言った。
『美織ちゃんらしいね。』
そして綾は、不遜にも続けた。
『私、ヤッたよ。』
綾の片言隻語は、サッカー部員に対する監督の怒号が鳴り響く中、歴然と美織の耳にこべりついた。




