さいはての、NIPPON。前編③
綾の入部一週間後の日曜日、県大会決勝。前半戦終了。0対1で羽島高校サッカー部は、敗退濃厚の雰囲気を会場が飲み込んでいた。
『お前があそこで決めないからだ、ふざけんなよ、羽田。あそこで外すのは、お前いらねえよ!』
声を荒げるキャプテンを誰も制御不能なくらい、元太のミスは、周りが紡いだ好機を潮時に変化させた瞬間だった。
ミスをするなと言われても人間だからする。自分も叩くし叩かれる。歪んでいるがこれが正常な世界だ。みんな正義でいたいから悪役がいると叩きたくなる。
トイレで塞ぎ込んでいた元太に慎一は声をかけた。
『ドンマイ。仕方ないよ。俺たちには来年がある。成長なんていうのは、認め合うことでは生まれず否定しあうことで生まれるんだよ。』
それを聞いた、元太は、臍を固めた。
『わかった。慎一。見てろ、次こそ決めてやるよ。』
後半戦、始まった矢先に綾は、不遜な笑みを浮かべて美織にこう聞いた。
『米倉さんは、大谷くんのこと好きでしょ。』
動揺を隠しきれなかった美織は聞こえなかったふりをした。
『え?』
綾はその顔に冷笑せずは、いられなかった。
『あなたの顔に、君が好き。って書いてるわ。』
JAPAN IS ALL IN
歓喜。ビールを空中に投げるもの、両手をあげ口を開け目を上に向け、片手をあげて勝利を掴むもの。2014年1点をもぎ取った瞬間日本中が湧き上がった。
後半残り5分、アディショナルタイム。1−1同点。
頃合いの絶好チャンス。大貫キャプテンからゴール前でパスを受け取った。慎一はシュートコースを探るが、DFが2枚。MFが遅れをとってついてきていない。打つしかない。不退転の決意を持ち唱えた。
『いまだ、全てをかける時がきた。』
シュートを打つ瞬間、右手からある歌の声がある気がした。言っている。出せって。理由はない。右だ。ボールも見ないでシュートを打つつま先を無理やり捻って右へ右へと軌道をずらした。
あり得ない。打つべきだ。シュートミスを周りは確信したが、元太は走って頭から飛び込んだ。
『うおおおお。』
大衆の歓声が周りを包む。
元太は、点を仰いで両手を広げ叫んだ。
『1点決めた。やった、やった。決めたんだ、俺は今ここで決めたんだ。』
ホイッスルがなった。
『かったああああ。』
俺は叫んだ。叫びまくった。大多数が入り乱れて、どいつもこいつもそいつも熱狂の中にいた。
波乱の県大会決勝は勝利を収めた。帰り道、街灯が四方に光り影が私の後を追っている。等間隔に4つ並ぶ街頭の先には赤信号が常に点灯していた。
大谷 慎一の後ろをつけて、声をかけた女子がそこにはいた。
『かっこよかったよ。お疲れ様。私、好きかもしれない。』
そう手をとってきたのは。綾だった。
この劇的な勝利の翌日、事件は起きた。
部室内で、部員の財布からお金が盗難されていたのだ。




