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さいはての、NIPPON。前編②

高校一年生になり、半年が経とうと、10月に季節外れな転校生がやってきた。


『鳴海 綾といいます。父の仕事の関係で、転校してきました。よろしくお願いします。』


『空いている、席がそこにあるから。みんな仲良くしてやってくれ。それで朝の出席を取るぞ。お、その前に今日の連絡事項は。』

眠そうな教師がかったるそうに話しているが、俺は無視した。


おおよそ、姿勢も綺麗で、顔も端正。長い髪は艶やかで、端麗。高校一年生の思春期真っ只中の真一にとっては、彼女の一挙手一投足、いや、大人びた色気とやらにしばし魅せられた。



教師から言われた。

『あ、そうだ。隣の大谷。案内してやれ。お前、学級委員だしな。』


俺はしばし面倒に感じたが、ここでは、はい、以外の選択肢はない。はい。いちいち抵抗していたら、精神が持たない。何ではない。理由もない。そこにいるから、だけなのだ。そんな誰かの小説に書いていることを思い出したが、鳴海さんの構内案内を引き受けた。



放課後、一通り校舎を案内すると、部活の時間が近づき教室までの道中、見知った声が俺たちの足を止めた。


『おい。一年エース。お前は今日から9番な』

悪気もなく、そう言ってくるのは3年生キャプテンの大貫先輩。


『お、お疲れ様です』


大貫先輩は、1年生でエースを掻っ攫う俺たちを、好ましくは思っていならいらしく無理難題を部活後に押し付けてくる。

『明日までに、次の試合の相手選手の年齢と背番号と得点率データをまとめといて。』


慎一は内心面倒に感じたが、諦観して回答した。

『はは。明日ですかあ。それは、わっかりまっした。それにしもさすが先輩、そんなところまで抑えるんですね。』


先輩の威厳を保てるように一言発した。

『まあな。』


慎一は、この数字は何使うんだよ。甚だ疑問だと強く感じた。言われたことはあえてすぐやらない。やったら次のが来るからだ。これをモットーにしていることを、隣の鳴海さんに悟られないように振る舞った。

『任せてください、はは。頑張ります。』


校内放送で監督から大貫先輩のお呼び出しがかかり、一言放って帰って行った。

『やべ。忘れてた。』

その大貫先輩の去就に、椎名林檎の曲をプレゼントしたい気持ちだった。


鳴海さんはふと、言ってきた。

『嫌いだわ。あなたは愛想を振る舞って人に好まれる代わりに、自分から嫌われている。』


慎一は、間髪入れずに返した。

『ふん。自分だけを好んでいるものは、他人からは嫌われるんだ。』


それから、鳴海さんがサッカーの練習を見たいというから連れて行ってやった。


慎一は、面倒な案内役を全うし、サッカーの熱狂の中へと入った。

上級生との模擬戦練習はレベルが高く疲れる。乾いたのどに、染み渡る酸味の味。喉が渇いたところに、水質が舌を通して全身に染み渡る。



練習が終わって、自分の部屋で慎一は先輩から指示された宿題を取り組もうとノートを開けて逡巡した。

次の試合は、県大会予選決勝だ。人生に於いて訪れる厳しい勝負の時に絶対に勝ちに行く、そして楽しみに行く、その全てを込めるしかないなと、それくらい重要なミッションとして取り組むつもりだ。

ただ、今日は眠い。ダメだ。体が重たい、気持ちもやる気も出ない。睡眠の中に落ちていた。





一方その頃、時間を遡り男子の無邪気な活動の陰で、二人が邂逅した。米倉 美織と鳴海 綾だ。

美織の隣で、サッカー部の練習を見ていた綾は疑問に思った。

『どうして米倉さんは、サッカー部マネージャーにしたの?。』


美織にとってその質問は奇妙にも感じた。

『美織でいいよ。私ね。フフ。あんまり考えたことないよ。ここを逃したら死ぬしかない、死んでもいいから突破したい。そんな男子が頑張ってる姿って、なんか応援したいもん。』


その一言に感動したそうな綾は、唐突に涙を流した。

驚いた美織は、誘った。

『綾も、マネージャーやらない?。女子一人だと寂しいし。綾となら楽しそうな部活生活を送れる気がする。』


そう誘われた、綾はマネージャーに入部することとなった。


美織は、楽しもうという気分を切り出せば成功するだろうと思い、頑張って取り組んだ。ただ、女が女をたらしめるものなんて、男の中にしかないんだとも感じ始めていた。


2014年W杯とある試合で、日本代表は1点をもぎ取ったのだ。歴史的快挙と大々的にマスコミ新聞各社が翌日の朝刊で報道した。


これは奇跡か偶然か、物語は正常から異常な方向へと誘われていく。

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