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嘘告白されてみんなの前でバラされたので、僕は屋上から飛んだ  作者: 万和彁了


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第4話 ポイント・オブ・ノーリターン

 デート。心躍る言葉だった。初めて誘ってみた。オッケーは貰えた。池袋に行くことになった。よく行く場所だ。きっとうまくエスコートできる。僕は心地よい心臓の高鳴りを感じながら布団の中で明日を待つ。




「池袋でラブホ誘われたら、怒って断るんだ」


 そう綿島から提案があった。どこへ連れて行ってもらえるのか楽しみにしているときにこれなんだもの。


「そんなことにはならないと思うよ」


 あたしはそう言って釘を刺したつもりになった。だけど。


「いや。相手は絶対に調子乗る。そこを激しく断れ。いいね」


 みんなの期待の籠った目が鬱陶しい。そう思った。家に帰って、その日のための服を選ぶことにした。彼はいつもあたしの目しか見ない。目以外も見て欲しい。体のラインを強調するミニのワンピにすることにした。胸元も谷間を強調するやつ。なにか服に文句をつけたら、愚痴ってやる。そんなつもりの勝負服。選ぶのが楽しかった。そしてあたしは眠りにつく。







 集合は池袋の駅。予定よりも早く行ったら、もう紫吹さんはいた。


「あれ、待たせっちゃった。ごめんね」


「ううん。今来たとこ。ほんとだよ」


 ちょっと僕たちの間に間が空いた。こういう時どうすればいいんだろう。紫吹さんはバックをしきりに撫でていたように見える。いつもよりもなんか派手というかセクシーな格好だ。


「なんかいつもよりセクシーな大人な感じだね」


「…うん。うん!そうなの!」


 笑顔を見せてくれた。そして僕たちは街に出る。まずは水族館へ行った。けっこう話は出来たと思う。その後、僕の希望で同じビルにある博物館に行った。めそぽたにあぁああ!


「メソポタニア?エジプトじゃないの?」


「僕はエジプトよりもこっちの方が好きなんだ。ここ面白いよ。昔の文字で自分の名前を創るコーナーとかあるの」


「まじで?!すご!」


 紫吹さんは意外に展示物を丁寧に見ていた。一言二言感想を述べていた。


「目には目を。歯には歯を」


「ちょっと残酷だよね」


 人類の法典の中でも古いものの一つであるハンムラビ法典の展示があった。


「悪いことした人は同じものを失うのかぁ。……仕方ないよね。きっとそうなんだよね」


 紫吹さんが浮かない顔をしている。フォロー入れた方がいいかな。


「でも真摯に頑張ったら赦されるんじゃないかな?でもそれは人の顔色をうかがうものじゃなくて神様に対してだと思うけど」


 母の受け売りだった。母は熱心なカトリックだった。まあ日本では動じに寺社仏閣の祈祷とかお札やお守りなんかもありがたがっているから祈りそのものが大事みたいな抽象的な思想なんだけど。


「悪い人は悪いままじゃないかな」


「僕じゃなくて母だけどね。根っからの悪はない。その環境は悪を成させる。だから悔い改めよって言ってた。ここの中の神様に今していることは正しいのかと祈れってね」


 なんかカルト臭いけど、母はそう言っていた。だから僕はそれを可能な限り守ろうと思っている。


「悪い人もいい人になれる?」


「多分。いいや。きっとなれる」


 紫吹さんは俯いていた。だけど。


「うん。そうしたいね」


 微かに微笑んだ。博物館から出てご飯を食べて、街をぶらぶらしてた。楽器屋を見つけた。そこに展示されているベースに僕は興味を持った。


「ちょっと待ってて!」


「え?なにどうしたの?」


 僕はすぐに楽器屋に入る。紫吹さんも慌ててついてきた。別に待っててくれてもよかったのに。


「このベース!あの限定品ですよね?!」


「ええ。よく気づいたね。不思議と売れ残っちゃって。ネットに出そうと思ってたんだけど」


「買います!」


 僕はベースを即買いした。デビットカードで爆買いである。そしてついてきたバックを背負って店を出る。紫吹さんがそこで待ってた。


「え?楽器買ったの?!」


「うん。このベースまじもんの限定品で新品未使用はマジレアだからね。ここで買わなきゃ手に入らない」


「デート中だよ」


「……ベースくんに罪はないから」


「あはは。へんなの!」


 紫吹さんは笑った。


「じゃあさ。弾いてよ。カラオケ行こ」


 そして僕たちはカラオケ屋に行った。ベースを耳でチューニングした。


「この間の曲弾いてよ」


「いいよ」


 僕はこの間流した曲を弾く。それに合わせて紫吹さんがハミングした。二人だけの演奏会。特別な時間。彼女は僕のことをわかってくれる。そんな淡い希望を見出した。楽しい一日だった。









「ふーん。普通にデートしたんだ。たいくつー」


 リルカは面白くなさそうにそう呟いた。


「なんか失敗談とかないの?」


「とくに」


 あたしからすれば何の落ち度もなかった。強いて言えば服をもっと褒めて欲しかったし、もっと見てくれてもよかったはず。そこは悔しい。


「だけど厭らしい視線に耐えてるんだからるいかはすごいよ。あんなキモい奴のな」


 綿島がそういうが、彼からそんなものを感じたりしないし、逆に綿島は何時も胸かスカートの足を見ている。そっちの方がキモい。しかしそもそもなんで彼をキモいなんて言えるんだろう。彼はいろんなことに真剣に取り組んでいて結果も出している。ここにいる駄弁ってグダグタしている連中よりもはるかに輝いていると思った。何かが間違っている。だけどあたしにはそれをうまく言語化できなかった。


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