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嘘告白されてみんなの前でバラされたので、僕は屋上から飛んだ  作者: 万和彁了


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第10話 引きずる影

 最近僕の家に火光さんが通うようになった。近くのマンションを借りて住んでいるそうだ。


「gitに上げたから確認してちょうだい」


「わかった。見てみる」


 ネット越しに共同制作していたけど、直で顔を合わせる方がやっぱり開発効率はいい。リビングにホワイトボードを置いたり、大きい作業用デスクを置いたりして、なんかスタートアップベンチャーみたいでちょっと楽しい。そう。こういうことをしている間は楽しい。


「どうしたの?曇ってる」


 火光さんが心配げに僕を見詰めている。僕は首を振る。


「まだいろいろ本調子じゃないみたい。でも大丈夫だよ。大丈夫」


 フラッシュバックの侵襲はssriの御陰かおさまってはいる。だけどものすごく動揺する瞬間もあるから、それを彼女の前で晒すのは怖い。


『次のニュースです。大物芸能人の光皇院鳳凰さんが自宅でなくなっていることを所属事務所が発表しました。遺書等が遺されていたことから自さ……』


 テレビから聞こえてくるそのニュースに僕の指先がぴたりと止まる。


「聞かなくていい!」


 火光さんはすぐにテレビを消した。そしてすぐに僕のそばによってくる。


「あなたのことじゃない。だから大丈夫。大丈夫だからね」


 背中を撫でられて頭を抱きしめられた。柔らかい感触が少し恐怖から僕を遠ざけてくれる。だけど。


「ごめん」


「謝らなくていいの」


「ごめんねぇ」


「いいから!そんなのいいから!」


 まだ駄目なんだ。もう普通には戻れない。そのことが自分を強く打ちのめす。一生このまま?みっともなく恥を晒し続けるのか?ならいっそ。


「いいからぁ。いいの。あなたがいるだけでいいからぁ」


 火光さんが泣いている。僕は泣けない。自分のことで精一杯で、それが情けない。どうすればいいんだろう。何をすれば僕は。













 あたしはすぐに養成場に放り込まれた。レッスンをマンツーマンでひたすら受けさせられた。いろんな先生がダンス、歌唱、演技、話術、様々な技術をあたしに仕込んだ。高校を辞めたから時間はいくらでも使える。あたしはあたしのためにひたすら技術を磨いた。そして正式にアイドルグループ「バンナφ」に配属になった。


「るいかです。よろしくお願いいたします」


 先輩たちに向かって大声でお辞儀をする。視線を感じる。値踏みするもの、好奇の視線、あるいは敵意。でも別に興味はなかった。あたしにとってはここは踏み場でしかないのだから。


「へぇるいかって言うんだ。なんか面白いことできる?」


 早速先輩の中から無茶ぶりがくる。多分、あたしが万和さんのお気に入りだってことはもうバレてる。


「ええぇ?!先輩いきなりしごきですかぁ♡あたしまだまだなんでぇ出来ればどうやったら面白いのができるのか教えて欲しいくらいですよ♡」


 レッスンで外面はいくらでも擬態できるようになった。人間やればいくらでもできるって知った。これなら勉強とかを頑張っていたら、あんなことにはならなかったかもしれないのに。


「あ、そ。そういうキャラなのね。まいいわ」


 無茶ぶりは回避された。だけど面倒くさそうだなって思う。女の子だけの集団なんてロクなもんじゃない。自分が女だからわかる。足を引っ張ることだけを考えるんだ。


「じゃあんたは一番後ろね」


「はーい♡任せてください☆」


 キャンキャンした声が自分がから出るのが不思議でしょうがない。むかしはもっとだるそうに喋ったはずなのに。


「はい。1,2,1,2」


 振付師さんの言う通りに、レッスンルームでグループ全体で踊る。今度の定期公演であたしは一応端っこでデビューする。自己紹介とかはないらしい。グッズもないって万和さんに言われた。そしてレッスンを終えて、私服に着替えて帰ろうと思った時だ。


「お疲れ様でしたー☆」


「何帰ろうとしてるの?新人は掃除してきなさい」


 そう言ってさっきしごいてきた先輩のサザンカさんがあたしにぞうきんを投げてくる。雑巾はあたしの足元に落ちた。


「ちゃんと床を綺麗に拭くのよ。小学生みたいお尻高く上げてね」


「はーい♡わかりましたー☆」


 あたしは素直に雑巾を拾って、小学生のように隅っこから床を拭いた。今日はスカートが短い。


「くく、パンツ丸見えなんだけど」


「きゃん♡見ないでください///」


 別に覗かれてもどうとも思わない。でもこの人たちはこうやって、あたしを辱めておかないと気が済まないだろう。そうしないといつまでたっても帰ってくれない。それは困る。この後も、万和さんの用意した特別レッスンがあるんだ。遅刻は出来ない。


「じゃあ頑張ってねぇ」


「わかりましたー☆お疲れ様でーす♡」


 そして満足した先輩たちは帰っていった。それを見届けて、あたしは雑巾をとっととしまう。


「るいかちゃん!まだ床掃除終わってないよ!」


 同じように残されていたピンク色の髪の女の子に咎められた。顔はとても綺麗だしスタイルもとてもいいけど、どこか気弱そうだ。


「どうせ確認なんてしない。それに業者が後から来るから意味ないよ」


「え?そうなの?!」


「あなたいじめられてるのよ。まああたしもだけど」


 あたしがそう言うとピンク色の髪の子はがっくりとしていた。多分今まで意味のないことやらされてきてがっくりしているのだろう。


「なまえは?」


「え?わたしの?」


「こういうときは先に名乗った方がいいよ。聞かれると会話のアドバンテージ獲れないからね」


 こういう話術はインストラクターから習った。それを馬鹿正直にこの子に伝えるのもどうかと思うけど、この子は弱いから大丈夫だと思った。


「わたしはすみれ。本名は花影純恋(すみれ)


「そう。じゃあ明日からすみれちゃんって呼ぶ。でもすみれ。あなたもいますぐに雑巾拭きなんてやめなさい」


「でもやれって言われたから」


「やれって言われたからやる必要あるの?じゃあ言うわ。雑巾拭きはやめろ。鬱陶しいから」


 あたしがそう言うと彼女はびくりと体を震わせた。


「やめろ。意味ないもの。その時間で練習した方がずっと有意義」


「なんかさっきとキャラ違くない?」


「アイドルだもの。みんなの前と内じゃちがうでしょ」


「そ、そうなんだ」


 だけどここまで言ってもまだすみれは雑巾を持っている。あたしはそれを奪って用具入れに投げ込んだ。


「無駄な時間はあたしたちにはない。練習しなさい。じゃあまたね」


 あたしはそれだけ言って、次のレッスン会場に向かった。なんでこんな無駄なことをしたのか。自分でもわからなかった。


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