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第1話 嘘で始まる懺悔

 僕にウソコクしたクソ女がステージの中心で踊り歌っている。彼女は今や日本一のアイドルでこのドームで単独ライブをやるに至った。


『『『『る・い・か!る・い・か!る・い・か!』』』』


 彼女の芸名は本名の下の名前をそのまま使っている。ひらがなで可愛くしたつもり。だけど僕は知っている。黒髪ロングで清楚気取ってるけど。彼女が笑顔を振りまくような天使じゃないんだって。


「みんなー!ありがとー!あたしがここまでこれたのはみんなのおかげだよ!」


 手でハートマークを作り可愛いアピール。だけどこのドームの誰もが彼女に夢中。いや心酔していた。圧倒的カリスマ。もともとは大手のアイドルグループにいたけど、その中でさえ際立つ美貌と歌唱力と表現力で芸能界のトップまで走り抜けた。かつては一時だけど隣にいた女の子。今や手を伸ばしても届かない。


「だけどね。みんなにごめんなさいしなきゃいけないの」


 突然るいかは悲し気な笑みを浮かべる。会場がその様子に動揺する。


「最後のこの曲は今まで未発表だったの。それはね。今日この日のために。あなたたちのためじゃない。あなた(・・・)のために歌うね」


 誰のことだろう。そして静謐なイントロが流れる。アイドル曲とは思えない重たさと冷たさ。だけどそれでも会場の空気が変わった。いや彼女が変えた。その表情は悲し気なのに儚く可憐。幽玄でありながら甘い声で力強く歌う。



さようなら、わたし


見栄ばかりで、顧みることなかったわたし


映えだらけで、光鎖し遮るばかりわたし


さようなら、わたし


錯誤ばかりの 外連味ばかりわたし


過去だらけの 化粧だらけわたし


ごめんね。君泣かせて。傍に居られないわたし


傍。痛くて。形見抱くだけのわたし




 会場の皆はうっとりと聞き惚れていた。だけど僕はその歌声に過去を思い出してならない。彼女の乗るステージがだんだんと宙へと昇っていく。見上げる僕は彼女と目が合った。あの日。僕が屋上から飛んだ瞬間のように。
























 人生にモテ期は何回か来るらしい。目の前にもじもじとしているとても綺麗な女の子がいる。名前は紫吹(しぶき)誄歌るいか。金髪でギャルギャルしているのがちょっと怖いけど。


「あたし。天羽(あまは)のこと結構好き。付き合ってよ」


 いままであんまり会話したことはなかった。彼女は一軍のリーダー女子だし、僕は三軍、ですらないぼっちである。しかしこういう時どうすればいいんだろう。もちろん返事はオーケーなんだけど。入って即答えたら、がっついててキモいとか思われたりしないよね?


「あ、え。あ、はい。よろしくお願いします」


 なんかお辞儀をしてしまった。お見合いかよってセルフツッコミしたくなるいたたまれなさ。だけど目の前の紫吹さんはくすりと笑った。


「きんちょーしてる?なんかかわいい。こっちこそよろしくね」


 こうして俺たちは付き合うことになった。










 面白いことって人生には全然ないってあたしは思う。クラスのいつもの面子でカラオケに来た。だらだらと適当に歌って青春を浪費する。うちらのグループのうち私以外の女子は同じグループの男子と付き合ってる。誰かと付き合ってないのは私とリーダーの綿島くらい。まあ綿島は元カノいるからあたしとは少し違うけど。でも最近周りがあたしと綿島をくっつけようとしてる感じがする。綿島はまあ顔はそこそこいいし、部活のサッカーもいい線行ってるけど、正直ぴんと来ない。無駄にビブラートを利かせながら歌ってどうでもいいことに悩む。初めての彼氏にはちょうどいいのかもしれない。でも恋愛ってそういうものなのだろうか?


「るいかー!罰ゲーム決まったよ!」


「え?罰ゲーム?なになに?あたしいつびりったの?」


「いや逆に一番点数高い人がいいっしょってさっき決まった!」


 それってあたし狙い撃ちじゃん。これでも自覚あるくらいには歌が上手い。罰ゲームを押し付けられた。


「なにか奢ればいいの?」


「そんなの罰じゃないでしょー!るいかの罰ゲームはウソコク!」


 そう言ってミリカがあたしにスマホを見せてくる。そこにはけっこう。いやなんかずいぶん綺麗な顔の男の子の盗み撮りがあった。白皙の何たらって感じ。

「天羽叙是(ジョゼ)ってうちの男子!いつもぼっちだからちょうどいいかなって!こいつにウソコクしてドッキリ!面白いっしょ!」


 ケラケラとミリカは笑っている。


「名前ジョゼなの?ウケる」


 でも綺麗な顔に相まって似合ってる気がする。ジョゼ。ジョゼ君?


「でしょ。まじキラキラネーム!親の顔見たいわー!でこいつってぼっちだから絶対告ればオッケーするはず。それでるいかには色々な指令をやってもらうから!」


「無茶ぶりはやめてよ」


「流石にそこまでしないって!でも一時でもるいかが彼女じゃん。むしろ天羽にご褒美っしょ!あはは!」


 あたしは肩を竦める。


「でも嫌になったらすぐ言えよ。俺がわからせてやるからさ」


 綿島があたしの肩に手を置く。別にそんなことにはならないと思う。どうせただの暇つぶしなんだしね。





みんな!ウソコクはだめぜったい!

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