配信記念SS②:小さな約束をこれからも
たまには、ということでデメトリオと二人で小旅行。といっても護衛の騎士たちは付いているのだけど。それでもこういった時間は本当に確保が難しくなっているので、二人で何をしようかとあれこれ話し合った。
「――――結局、二人とも『のんびりしたい』しかないんだよな」
「二人で、ですよ?」
「ふっ、そうだな」
少し遠出し、隣国との境にある湖畔の別荘にきた。暖炉を焚きながら、窓辺で降り積もる雪を眺めながらおしゃべり。
「寒いと思ったら、まさか初雪とはな」
「美しいですね」
「ん」
デメトリオが後ろからふわりと抱き締めてきて、頬にキスをしました。振り返れば唇に当たる位置に執拗に。
「リオ」
「んー?」
「湖畔を散策しませんか?」
「チッ」
なんとなくの狙いは分かっていて、わざとそう言うとデメトリオ得意の舌打ち。それが可愛くてクスクスと笑っていたら、ガブリと耳朶を噛まれてしまった。
「ひゃぅん!?」
「っくくくく……いい反応をもらったし、今は諦めてやる」
――――今は!?
今は諦めるということは、夜は諦めないということで……一週間無事でいられるかしら? なんて、まだ来ぬ未来を心配してしまった。
湖畔に吹く風は平地より少し冷たい気がする。だからだろう、繋いだデメトリオの手が熱く感じるのは。
「あれっ、何かいますね」
「ん? ああ、シロギツネだな」
湖畔付近の林の中でチラチラと動く小さな白っぽい生き物。
「随分と小さいから子どもだろう」
「白くはあるんですが、ちょっと茶色いんですね」
「大人になると真っ白になるぞ」
そういえば見たことがないと話すと、雪が深まると平地にも出てくると教えてくれた。そして、一緒に見ようとも。
こういった小さな約束は、出逢った頃からよくしている。デメトリオの癖なのか、私のためなのか……。
ふと思い出す、出逢いと結婚のきっかけ。
おじいちゃんの遺言状が原因だったけど、きっとあれは強制じゃなかった。たぶん。
かなり本格的な場で発表されちゃったし、逃げ道がそこそこ塞がれてはいたけど、私たちがジレジレしていたせいでおじいちゃんに余計な気を回させたんだろうなと思う。
そしてデメトリオは、そんな不安定な私たちの関係を維持するため、いろいろと画策してくれていたんだろうなぁと思う。
「リオ」
「なんだ?」
「これからも、沢山の約束をしましょう」
「うん? もちろんだが、どうした?」
「小さな約束って、幸せだなぁと思いまして」
そう伝えるとデメトリオがふわりと微笑み、繋いだ手を持ち上げて手の甲にキス。
こういうところ、ちょっとキザだなと思うものの、素敵だなとも思うわけで、結局どんなデメトリオも好きだなぁと再認識。
「ふふっ。好きですよ」
「っ!? くそっ、急にそういう攻撃はやめろ……」
耳まで真っ赤にして照れるデメトリオは一番好きかもしれない。なんて思いながら、更に熱くなったデメトリオの手をしっかりと握り締めた。
―― fin ――





