70:毎晩?
夕食から戻り、主寝室のソファでデメトリオさんとおしゃべりをしていた。話題はさっきの『妃殿下』の制度について。
どうやら、昔は正妃のほかに側妃を娶る事が決められていたらしく、その名残なのだとか。
「祖父の祖父にはいたらしい。正妃の他に三人」
「さんにんっ」
「ふはっ。ん、引くよな」
おじいちゃんのお父さんが跡目争いで大変な目に遭ったことで、側妃を必ず娶るという法律をなくしたいと動いたのだとか。父王や議会に働きかけたものの、完全にはなくせなかったけれど、そこから『必ず』という文言を消すことには成功したのだとか。
もともとは、不妊の可能性などから予備の妃として娶られていたものの、恋多き当時の国王のせいで、王妃も側妃も精神を病むことが多かったらしい。
「祖父がよく『あのジジイは本当に最低だった』と言っていた。妃たちの諍いを笑顔で眺めていたらしい」
「キャットファイト的なやつですか?」
「いや、毒の盛り合いや言葉に出来ないレベルの嫌がらせだな」
「ふあ……趣味悪っ」
つい本音がボロリしてしまったけど、デメトリオさんは真顔で頷いていたので彼もそう思っているようだ。
おじいちゃんのお父さんの代くらいから、王妃一筋なのはある意味で高祖父のおかげだろうな、なんてデメトリオさんが苦笑いしていた。
その後もなんだかんだとおしゃべりして、お風呂に入って、夜着の上からガウンを羽織って主寝室に戻ったところで、はたと足が止まった。
ベッドでデメトリオさんが、真剣な顔で書類に目を通していた。今週中いっぱいは新婚期間として各国の対応以外は休みにしているらしいけれど、もしかして仕事を結構圧迫してしまっているのでは、と。
私が入口で立ち止まってベッドに来ないことに気付いたようで、デメトリオさんが書類から目を離してこちらを向いた。
「ん? どうした?」
そう言って首を傾げた直後、ハッとした顔をしてサイドボードに書類を置いて発した言葉が「いや、別に、普通に寝る日もあるからな!? アレが毎晩必ずとかじゃないから! 安心して……いや、それも違うというか!」だった。
明後日の方向の勘違いとあまりの焦りように、お腹を抱えて笑ってしまった。
「っ…………仕事の方か…………!」
両手で顔を覆って照れるデメトリオさんがとっても可愛い。
どうにか息を整えて理由を話し、ベッドに入った。
彼に寄りかかり、笑いの余韻に耐えつつ、さっきの書類のことを聞いてみた。
「あぁ、お義父上を誘拐した少年の調査書だ」
「え…………」





