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7:デメトリオさんが、王太子!?




 王太子殿下と呼ばれ、返事をして封筒を受け取ったのは黒髪の近衛騎士であるデメトリオさん。

 危うく悲鳴に近い声を出しそうになった。

 私はただ単に壁に控えているだけの、侍女。お忍びで参加して、なんかもらえるらしいものをこっそりもらって帰るだけなのだから。目立つわけにはいかないのに。


 入場してきたデメトリオさんが、なんだか偉そうなオジサマの隣にいるなとは思っていた。

 近衛騎士だから誰かの護衛でいたんじゃなかったんだ。ていうか、王太子殿下なのになんでおじいちゃんと一緒に庭園にいたのよ……意味わかんない。


 私が謎に焦っている間も宰相さんは、次々と書状を渡していく。壁際に控えていた侍女で渡されたのは私だけ。いやまぁ、偽物の侍女だし、渡されるから参加したんだけども。

 隣に並んだ本物の侍女さんたちの視線がめちゃくちゃ痛い。全然お忍びで参加できてなかった。


「では陛下から開封をお願いいたします」

「うむ。ふっ…………はいはい」


 遺言状に『はいはい』って返事ある? と思っていたら、新たに国王陛下になられたらしいダークブラウンヘアーのオジサマが、ちょっと寂しそうな微笑みを零しながら読んでいる。

 その顔が、どことなくデメトリオさんにもおじいちゃんにも似ていた。あぁ、親子なんだなぁって、納得がストンと落ちてきた。


「まぁ、要約すると国王になれだけだよ。あとは父がやり残したことの引き継ぎかな。余計なお世話も入っているが。こちらの一枚はプライベートな内容で相続には関係ないので、皆には伏せさせてもらう」


 国王陛下がそう言うと、三枚のうち二枚だけを宰相さんに見せていた。


「次に王太子殿下」

「…………チッ。くそジジイ」


 聞き間違いかと思った。

 王太子殿下からの『くそジジイ』はなかなかに破壊力がある。謁見室内がどよめくくらいには。


「遺産の相続一覧と、余計な世話の二枚だ」


 デメトリオさんが宰相さんに二枚とも見せると、宰相さんが目を見開いてデメトリオさんを凝視した。彼は彼で、宰相さんを睨み返してまたもや舌打ち。隣の国王陛下は、手紙を覗き込んで苦笑い。

 そして、なぜか三人ともこっちの方――謁見室の後ろの壁際――をチラチラと見ながら小声で話している。

 なにかあるのかな? と思って辺りを見回すけど、何もない。他の人たちも、ちょっとキョロキョロっとしていた。


 三人の会話の内容は全く聞こえないけど、何かモメてるっぽい。デメトリオさんが不機嫌になっていくのが、ひしひしと伝わってくる。


 ――――おじいちゃん、何を書いたのよ!?




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