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【電子書籍11/15】 『王太子の嫁な!』と遺言状に書いてありました。  作者: 笛路 @書籍・コミカライズ進行中


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66:俺の光芒




 ■■■■■

 



 チャペルの扉がゆっくりと開くと、扉の隙間から光芒が挿し込んだ。それだけで、なぜか涙が出そうになる。


 ヴェールの向こうで柔らかく微笑んでいるエマがチャペルに入ってきた。ドレスは俺の瞳にしたいと言ってくれたエマ。

 この国では白いウェディングドレスは『貴方の色に染まりたい』となり、相手の色を使ったドレスは『貴方と永遠に歩みたい』という意味になる。

 エマのその気持ちが嬉しくて、ドレスを決める打ち合わせの間、ずっと浮き足立っていた。

 デザインを見て、仮縫いを見て、ずっとこの日を想像していた。


 エマは俺の目が向日葵のようで綺麗だと言うけど、君のほうが向日葵のような人だと何度か伝えた。

 真夏に咲く向日葵のように眩しい笑顔。相手を照らし包み込み、温めてくれる愛に溢れた心。

 エマこそが俺の向日葵なんだ。


「……殿下? デメトリオ殿下、娘を、お願いいたします」


 エマの父であるルシエンテス男爵からエマの手を渡されて、意識が現実に引き戻されてハッとした。


「っ、あぁ。確かに受け取った」


 新婦の手を父親が新郎に渡す。これは大切な儀式なのに、ボーッとしてしまっていた。というかルシエンテス卿、いたのか。帰って来ていることは知っていたが、エマしか見えていなかった。

 少し苦笑いされてしまった気がするが、まあいい。




 式は順調に進み、エマと誓いの手紙と指輪の交換になった。

 指輪は、祖父がエマに渡していたものを預かり、祭壇にあるリングピローに置いている。俺の指輪はエマが注文して作ってくれていた。当日まで秘密にしたかったらしく、エマの気持ちも汲んで、リングピローになるべく視線を向けないようにしている。


「では、新郎から」


 宰相の言葉に頷き、懐から手紙を取り出した。


「エマ、君と結婚すると決まってから、ずっと口に出来ない言葉があった」


 そこで言葉を切って深呼吸した。

 この手紙を書いたとき、彼女に本心を伝えることが怖いと思っていたからだろう。


「出逢ったころから、君に憧れていた。君の中に、俺の居場所が欲しかった。君に愛されたくて、仕方がなかった。俺が君にこうやって懇願する前に、君は俺に居場所をくれた。もう既に君の中にいるんだと教えてくれた」


 エマはきょとんとした瞳で俺を見つめていた。そういうところがエマらしい。気付いてなかったということではなく、俺がこの場でそんなことを言ったのにちょっと驚いている、といった顔だろう。


「王族だろうと、人だ。誰かに愛されたいという想いはある。愛しい人から、愛されたい。立場的に言えないこともあるが。それでも、俺は君から愛されたいとずっと叫びたかった。祖父からの邪魔が入って、進んだのか拗れたのか分からずモヤモヤとしていた。そんな俺を、いつでも明るく照らしてくれた。君は俺の光芒なんだ。エマ、君のその温かく優しさに溢れた愛で俺は前を向けた。君にどれだけ返せるかは分からないが、一生を掛けて愛し続けるから、一生を掛けて受け取ってくれないだろうか?」


 少しだけ首を傾げてそう聞くと、頬を染めたエマがコクリと頷いてくれた。


「皆の前で俺――ヴィルフレード王国王太子デメトリオとして誓う。エマ・ルシエンテス、君を一生愛し続ける」


 祭壇に置かれて指輪を受け取り、エマの左手薬指にゆっくりとはめた。

 視線を手からエマの顔に移すと、彼女が今にも泣き出しそうな表情になっていた。その表情に悲しみなどはなく、喜びの感情が見えたことで、危うくキスしてしまいそうになった。

 

 ――――危ない。




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✾ 10/25シーモア先行配信! ✾


『王太子の嫁な!』と遺言状に書いてありました。
貧乏男爵令嬢と王太子殿下の焦れったいほどの両片思いを強制成就!?
書籍表紙


表紙絵はm/g先生!
デメトリオさんがとにかくカッコイイ! そして、エマたんがもう撫で回したいくらい可愛い!

(作者がキモいのは横に置いて……!)

♣ 王太子の嫁な!ちゃん ♣
リブラノベル様より、11/15 配信です。コミックシーモアは、10/25先行配信!
ぜひぜひ、お手元に迎えていただけると幸いです。


▷▶▷ シーモア

― 新着の感想 ―
なんて素直で真っ直ぐな愛の言葉。 それを伝えるデメトリオはほんとに素敵です。
いよいよ結婚式本番! 夜の本番はもうちょい待ちましょうw
そうだ…発情デメくんになるのは結婚式が終わって寝室に行ってからだよ……王太子だから初夜は見張りが立つから2人っきりにはなれないだろうけど……出歯亀頑張ります。 録画Σp[【◎】]ω・´)じー
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