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【電子書籍11/15】 『王太子の嫁な!』と遺言状に書いてありました。  作者: 笛路 @書籍・コミカライズ進行中


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63:最後の夜

 



 親族のみの晩餐会は、ピリッとするかという瞬間はあったものの、家族愛から来るものだった。結局は、終始穏やかに終わってホッとした。

 部屋に戻る間際、ドアの前でデメトリオさんに呼び止められた。明日は会うときは祭壇の前になるから、少しだけ二人の時間を過ごさないかと。


「結婚前夜に逢引ですか?」

「んぶふっ……なぜその言葉のチョイスになるんだ」


 デメトリオさんが少年のように笑いつつ、別に後ろめたいことなどはないからな? と念押ししてきた。

 今日一日、デメトリオさんの笑顔があまり見れていなかったので、意図はしていなかったけれど笑わせられてなんだかホッとした。


「冗談です。中庭に行きませんか?」

「ん」


 日中はじっとりと暑くなって来たものの、夜は結構冷えるのでカサンドラさんにローブを出してもらい中庭に向かった。


「私どもはあちらの方に控えていますので」

「うん。ありがとう」


 カサンドラさんと近衛騎士さんたちにお礼を言い、デメトリオさんと中庭のベンチに並んで座った。

 ふと思い出すのは、月下美人を夜通し眺めていたあの夜。大人なキスを知った夜…………顔が熱い。


「……思い出すんじゃなかった」

「ん? 何をだ?」


 口から漏れ出ていたらしく、デメトリオさんに顔を覗き込まれてしまった。何でもないですと答えても彼はあんまり納得してない様子。


「エマ、今日が最後の夜だ。禍根や遺恨はなくしておきたい」


 真剣な顔でそう言われて、胸がギュムムッと締め付けられた。

 陰で冷血王子だとか色々と言われているデメトリオさんだけど、とても優しいし、感情も表情も豊かだ。

 あと、時々打たれ弱いダメトリオさんにもなる。ダメトリオさんは結構可愛い。

 それらが、私だけに見せてくれる姿だということに気付いたとき、どうしょうもないほどの多幸感に包まれた。

 私の全身が、心臓が、血液が、この人が愛しいと暴れ叫び回る。

 

 禍根や遺恨なんてもの、ある訳がない。


「デメトリオさんっ」

「っ、はい」


 なぜか居住まいを正された。


「私、明日のこと、これからのこと、凄く凄く楽しみなんです。デメトリオさんの隣を歩けるのが嬉しいんです」

「ん。俺もだ」


 頬を薄っすらと染めて微笑むデメトリオさんが、本当に愛おしい。

 締め付けられるような、爆発してしまうような、相反する気持ちを持て余してしまっていて、どうやって発散したらいいのかが分からない。


「さっきの『思い出すんじゃなかった』というのは……その、月下美人の時のことを思い出してしまって…………」

「しまって?」

「…………聞きます? 止まれます?」

「ん、無理だな!」


 物凄く張り切って『無理』だと言われた。そういうところもデメトリオさんらしい。

 クスクスと笑いながら「では、明日の夜、二人きりの時間で」と言うと、デメトリオさんが熟れたトマトのように顔を真っ赤に染めて、両手で隠してしまった。


「…………エマの煽りがエグい」

「すみません。今回はわざとです」

「小悪魔だ…………」


 照れつつイジけるデメトリオさんが可愛くて、クスクスと笑いながら最後の夜を二人でのんびりと過ごした。




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✾ 10/25シーモア先行配信! ✾


『王太子の嫁な!』と遺言状に書いてありました。
貧乏男爵令嬢と王太子殿下の焦れったいほどの両片思いを強制成就!?
書籍表紙


表紙絵はm/g先生!
デメトリオさんがとにかくカッコイイ! そして、エマたんがもう撫で回したいくらい可愛い!

(作者がキモいのは横に置いて……!)

♣ 王太子の嫁な!ちゃん ♣
リブラノベル様より、11/15 配信です。コミックシーモアは、10/25先行配信!
ぜひぜひ、お手元に迎えていただけると幸いです。


▷▶▷ シーモア

― 新着の感想 ―
ほんとーに二人のやり取りが尊い!
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