62:祖父たちの不安
お茶会の後、少し休憩してからの近しい親族での晩餐会。わりと疎遠だった祖父母たちもお祝いに駆けつけてくれていた。
数日前から王都には着いていたらしいけど、私たちは準備や事前打ち合わせに忙しいだろうからと王都内のホテルに宿泊していたので、父の件は知らされていなかった。そのおかげで、父方の祖父は顔面蒼白になっていた。
「パオロはまだ帰らんのか!?」
「はい」
「国王陛下たちとの約束を破るとは。あの馬鹿め……」
「お義父さん、どうか……全力で叱ってください!」
母がどうか寛大にとか言うのかなと思っていたら、まさかのけしかけていた。しかも全力とかまで付けている。いや、私も気持ちは一緒なんだけど。
「エマちゃん、大きくなったわね。最後に会ったのは七歳のころかしら?」
「はい。お久しぶりです、お祖母ちゃん」
控室では久しぶりに会った家族同士で思い出話や、初の王城内部についてキャッキャと話していたものの、晩餐会の会場に入ると流石に全員の顔が引きつっていた。
両家とも多少裕福で、貴族とのかかわりはあるものの平民には変わりないので、そうなるのは納得ではある。
なんというか、全員から漏れ出るオーラが凄い。それはデメトリオさんも一緒で、正装しているとめちゃくちゃ眩しい。
「さて、みな席に着いたな。順に紹介していこう」
国王陛下が王弟殿下ご夫妻とご子息のユーリ様、降嫁された王女殿下とその旦那さまと二人のご令嬢、最後にデメトリオさんの紹介をしていただいた。
我が家は父に代わり父方の祖父が両家の祖父母と母と私を紹介してくれた。
それぞれが挨拶し、食事をしながら様々な雑談をした。父のことはもちろん、私たちの出逢いや、おじいちゃんとの出逢いも。
両方の祖父母から、おじいちゃんととても素敵な出逢い方をしたんだねと言われ、おじいちゃんの明るい笑い声と、屈託のない笑顔を思い出して、少しだけ涙が出た。
「私どもは、孫はもちろん可愛いです。しかし、ほとんど平民のようなエマが王族に連なる者になる、しかも将来は国母とも成り得るというのは、不安を覚えておりました」
父方の祖父いわく、昔と違い随分と緩和されてきたものの、未だ貴族社会。私に公務などが務まるのかの声はあるそう。
各都市で、王太子妃になる私のことは話題になっているのだとか。
「概ね好意的なものが多いのですけどね」
母方の祖母がそう言ってくれてホッとした。けれど楽観視はできない。『多い』ということは、少ないとしても好意的ではない意見もあるのだから。
「エマ」
デメトリオさんに呼ばれて、俯き加減になっていた顔を上げた。
「大丈夫だ」
ふわりと笑ってくれたデメトリオさん。私を信頼してくれている人がいる。そう思えるだけで、どこまでも前を向ける。
「っ、はい!」
【お知らせ】
https://ncode.syosetu.com/n6066kq/
おねショタな短期集中連載、完結しました。サクッと読めるのでぜひ!





