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6:開封の儀




 王城の馬場に着いて、馬車を降りる。その際もデメトリオさんがエスコートしてくれた。紳士だ。

 ちなみに文官さんは到着した瞬間に素早く消えていった。なんだか仕事をいっぱい抱えているらしい。


 ほへぇ……とお城を見上げていると、デメトリオさんにどうしたのかと聞かれた。こんなに近くで見たことがなかったので、物珍しかっただけだと言うと首を傾げられた。


「……? 家や庭園からも見えているだろう?」

「はい。だけど、近いとまた違う荘厳さがあるなと」

「ふうん?」


 彼はきっと毎日見ているのだろう。よく分からないといった反応だったから。


 デメトリオさんにエスコートされながら、お城の中にドキドキと足を踏み入れた。通りがかる人たちがギョッとした目でこちらを見てくるのは、メイド服の私をエスコートしているせいなのだと思う。それをデメトリオさんに伝えたけど、無言でジッと私の顔を見たあと無視しやがった。


 おじいちゃんに訴えたい。

 庭園でデメトリオさんが辛辣な態度を取ると、私がおじいちゃんに文句を言って、おじいちゃんと二人でデメトリオさんをイジるのが定番だった。


 ――――もう、出来ないのよね。


 少ししょんぼりとしながら歩いていると、大きな扉の前に到着した。

 謁見の間らしい。ここで開封の儀が行われると言われた。


 謁見の間には二〇人ほどの王族や貴族、騎士様たちが集まっていた。まだ開始時間ではなかったらしく、参加者はもう少し増えるだろうとのことだった。

 壁際には数人の侍女さんがいて、私もそこに並んでいればお忍びで参加出来るだろうとのことだったので、しれっと壁際に控えることにした。


 デメトリオさんは、仕事に戻るとのことで立ち去ってしまい、ハンカチを返しそびれたなぁ……となんとなしに眺めていたら、ハンカチの端に王家のエンブレムが刺繍されていることに気が付いてしまった。


 ――――あ、王族なんだ?


 軽々しく『さん』なんて、やっぱり駄目じゃない? 国王陛下の護衛は、王族の一員とかで地位が高くないと駄目だったとか? でも、王族ってだけでそもそもが護衛対象じゃないのかな? 社交界とかほぼ知らないし、分からない世界だなぁ。

 なんて色々と考えている間に、謁見の間に偉そうな人たちが増え出した。


 一〇分ほどして全員が集まったらしい。皆が綺麗に整列する中、壁際でぼーっとしていたら、私を迎えに来た文官さんが沢山の書状を抱えて前に出てきた。


「ただいまより、前国王陛下よりお預かりしていました遺言状の開封の儀を行いたいと思います」


 進行は前国王陛下より証人として指定されている宰相である自分が行うと、文官さんが言った。

 文官さんって、宰相閣下だったの!? なんでそんな人が私の家に来たの!? え、ちょっと意味が分からない。

 明かされる事実に驚いている間に、話はどんどんと進んでいた。


「こちら、新国王陛下宛でございます」

「うむ」

「こちらは王太子殿下宛でございます」

「……あぁ」


 ――――はい?




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