50:図書館へ
カサンドラさんが公爵家っぽいことを王弟殿下のご子息――ユーリ殿下が言っていたけど、ちょっとよく聞き取れなかった。っていうか、そういう大切なことをなぜ私は知らない、知ろうとしてなかったのよ。
あれ? 待ってよ……? そもそも、王城に勤めている侍女さんたちって、割と地位高い貴族出身のはず。
これ、ちゃんと把握しておかないと、夜会でご親族に会ったときにお礼とか言えないし、相手にも失礼だ。
――――マズい!
ユーリ殿下の謎のお茶会は、丁寧に挨拶して逃げ出すことに成功した。
ちょっと散歩するはずが、変な汗をかきどおしだ。
カサンドラさんに部屋に戻ると伝え、足早に庭園を抜け出した。
「ふはぁ……おっとりしたかわいい少年かと思っていたのに……」
「エマ様の二つ下ですよ」
ユーリ殿下、十八歳なのか。もう五歳くらい若く見えるんだけど。流石にそれを言うのは失礼かな。
「ところで、えーっと……ふはるふぁろっふぃ? って言ってたっけ?」
「スカルフィオッティですよ。ただただ名前だけ立派なだけなのですが、一応公爵家です」
スカルフィオッティ公爵家は知ってる! この国の創立時から王族に仕えている一族のはず。
カサンドラさんいわく、たまたま母親がデメトリオさんのお母さんと友だちだったことから、乳母になり、自分はその流れで侍女になった、ということだった。
ついでにと、他の侍女さんたちのことも聞くと、やっぱりというか、ほとんどが伯爵家と侯爵家の娘とのことだった。
「ちゃんと覚えておくわ。ご家族とお会いしたときは、お礼もいいたいし」
「そうですね。そういった声かけがあると、とても嬉しいもののようです」
「だよねぇ。よし、貴族名鑑をちゃんと読み直そう」
決意を固く、図書館に向かうことにした。
王城の図書館は一階にあり、誰でも読める本と、王族のみ閲覧出来る本がある。
司書さんのいる席の真後ろの扉が、王族専用の部屋に繋がっているのだとか。
デメトリオさんいわく、よくわからない盤上遊戯の本が多いのと、歴史書や家系図などがあるそう。
実はちょっと気になっている。
よくわからない盤上遊戯の本って、なんなの? って。
「いつか入ってみたいなぁ」
「何か気になるものがあるのですか?」
「うん」
カサンドラさんに『盤上遊戯の本』の話をすると、なぜそれに興味を持つのかと聞かれた。
もともとチェス以外にも、盤上遊戯は好きなのだ。
父の相手をしていたせいで、チェスばかりになっていたけど、たまには違うものもしたいし、未知のものがあるのなら、見てみたい。
ただの好奇心ではあるのよね。





