49:ユーリ殿下と三人の候補?
女子会が終わったら、みんなは通常業務に戻っていった。切り替え早すぎないかな。私はまだドキドキしている。
ちょっと散歩しようと王城内の庭園に向かうと、同じ年齢くらいのご令嬢が三人と王弟殿下のご長男――ユーリ殿下がガゼボで楽しそうにお茶会をしていた。
これはお邪魔したらいけないなぁと踵を返そうとしたとき、ユーリ殿下とバッチリ目が合ってしまった。
――――ええっと、たしか。
こういう場合はアルカイックな感じで微笑んでカーテシーでいいのよね?
そのあとにササッと去ればオッケーなはず。
「エマ姉上、お久しぶりですね。どうぞこちらに」
セミロングの金髪をサラサラと靡かせて、女子顔負けの甘可愛い笑顔を向けられた。
断りたい。同席しているご令嬢たちの顔が…………ん? いや、カサンドラさんの天元突破眼力に比べれば可愛いかも。
「ごきげんよう、みなさま」
「「ごきげんよう」」
笑顔で迎え入れられたものの、明らかに場違い感が凄い。
「こちらはデメトリオ兄上の婚約者でエマ姉上だよ」
「「あぁ、あの」」
あのって、どの……。おじいちゃんの遺言状のせいかな?
「この子たちは、僕の婚約者候補だよ。えっと……名前はね…………?」
「ベランジェールですわ」
「アルベルティーヌでございます」
「ジョルジェットよ」
もしやユーリ殿下、ご令嬢のお名前を覚えてないのでは? ご令嬢たちが仕方なさそうなため息をそっと吐いたし。
ユーリ様は困ったように首を傾げているし。
優しくて穏やかな少年って印象だったけど、ユーリ殿下って一癖あるのかもしれない。ただ単に最近知り合った可能性もあるだろうけど。
「婚約者候補の方々とお茶会だったんですね。お邪魔して申し訳ございませんでした。私はこれ――――」
「あっ! エマ姉上は兄上とどうやって知り合われたのですか? 遺言状に書かれるってことは、お祖父様ともお知り合いだったんですよね?」
ふぉぉぉぉ、聞いちゃうのかぁぁぁぁ。あれ? そもそも、遺言状のことは伏せてたほうがいい、みたいに陛下に言われてた気がするんだけど。
「ユーリ殿下、お戯れはそこまでに。貴女たちも、噂話に踊らされるのは感心しないわよ」
「侍女が偉そうに――――」
「カサンドラ嬢が言うなら仕方ないねぇ」
ユーリ様はのほほんとそう言って、手元にあった焼き菓子をパクリと食べた。自由だ。自由な人がいる。なんだろう、おじいちゃん味を感じる。
「ほれほ、かしゃんどら、ふはるふぁろっふぃ……んっ。公爵家だからね?」
――――なんて?





