48:恋バナをしたい!
アリなのかナシなのか、ぐるぐると考えていたら、デメトリオさんにじっとりと見られていた。
「ナシですよね!?」
「何がだ」
「婚前のもちょもちょするやつです、はい」
「……っ、ブフッ。もちょもちょ! っはははは!」
デメトリオさんが吹き出したあと、酸欠になるほどに笑っていた。
ちょっとイジケていたら、かるーく謝られ、定例会議に出るから湯を浴びてくると、額にキスして浴室に消えて行った。
私もお風呂に入ってこようかなと、ベッドから降りていたら浴室のドアが開いて、上半身裸のデメトリオさんが出てきた。
「ぎょわっ!?」
「どういう叫びだ。なぁ、エマ」
「へ? はい?」
「一緒に入るか?」
「ふぁいりましぇんっ!」
盛大に噛みつつ返事をして自室に走って逃げた。
後ろから聞こえるデメトリオさんの笑い声がなんかモヤッとする。
「大変ご迷惑をおかけしました」
「違う!」
「はい?」
眼力天元突破な真顔でカサンドラさんに謝罪されたけど、私が聞きたいのは違うのだ。
恋バナ、恋バナがしたい!
そして、もちょもちょのことも聞きたい。とてつもなく出歯亀したいのだ。
「ソファにすわろ! お菓子とジュースと、クッションも!」
カサンドラさんがクッションは必須なのですかと聞いてきたが、必須なのよね。恥ずかしくて、照れて、萌えて、悶えて……とにかく何かをギューッて抱きしめたくなるはずだから。
「なるほど」
恋バナ会場を二人で作っていたら、他の侍女さんたちもそっと参加してきて、まさかの六人で女子会を開催することになった。
お仕事とか知らない。女子会のほうが優先でいい。今日だけは!
そもそも私のお世話って、そんなに人いらないはずなのに、結構に配属されているから皆ちょっと暇なのよね。
「で、なんて告白したの!?」
「それが……言わせてもらえなくて。陛下から…………欲しいと」
「「っきゃぁぁぁぁ!」」
全員で叫んで悶えて、クッション抱きしめて。それでそれでと、照れるカサンドラさんから根掘り葉掘りして、また叫んで。
ちょっとだけもちょもちょした内容も聞いて、脳から煙がでそうになりつつ、いつか私もデメトリオさんとそういうことするんだよねと考えては、クッションを潰す勢いで抱きしめた。
「カサンドラ様、そのこれからどうなるのですか? 流石に一夜限りの、とかではないのですよね?」
侍女のハリーさんが前のめりで聞くと、耳まで真っ赤にしたカサンドラさんが俯きながらポケットをまさぐると、指環を出した。
「それって……!」
「はい」
皆が驚いた顔をして指輪を見ているけれど、私にはなんのこっちゃだった。
「何の指輪?」
「「えっ…………あ!」」
何に驚かれたのかと思ったら、国王の指輪だと教えられた。
「あ、陛下が親指に付けてるの?」
「はい。あれは国王になる際に即位記念として作られるもので、王の紋章と個人の紋章と名前が彫られていて、世界に一つしかないんです」
「…………めちゃくちゃ重要な指輪じゃない」
婚約指輪と結婚指輪を作るまで持っているようにと陛下に言われたらしい。
それってもう完全に『王妃にする』って宣言と一緒なんじゃ!?
「カサンドラさんがお義母様?」
「あ……なんか変ですね」
「「うん、ちょっと変ね」」
全員がうんうんと頷いて口々に変だと言って、ちょっと笑って、またキャーキャー言いながら恋バナをした。





