46:大人の階段
◇◇◇◇◇
どえらい大人の階段を登った気がする。
プレゼントを渡して、大好きだって伝えようとしていたけど、今朝のこともあって緊張して言葉が紡げなかった。そうしたら、デメトリオさんがフルーツ飴を食べだしちゃって、タイミングが計れなくなっていた。
ブドウは噛むのが楽しいって話してたら、なんでかデメトリオさんが妖艶に微笑んで、ブドウを咥えた……とこまでは良かった。
「っん……」
デメトリオさんがブドウを咥えたままキスしてきて、ぬるりと口の中のモノを渡された。
――――ブドウ!?
「噛んで」
有無を言わせないようなその命令に、ブドウを噛むと、デメトリオさんが『よくできました』と褒めるような優しいキスをくれた。
オレンジも同じように渡されて、キスをして。
頭が真っ白になりかけたところで「エマ、愛してる」と言われた。
私が言おうと思っていたのに。その言葉が口からこぼれ落ちてしまった。
それが聞こえてしまったデメトリオさんが妖艶に微笑んだ。
「ん、聞きたい」
いまのこの無双状態のデメトリオさんに伝えたら、次は何されちゃうの!? なんて、耳年増な私の脳内は本気でパニックになってしまっていた。
――――あれ?
いつの間に寝たんだっけ? そう思いながら眠い目を擦っていると、すぐ近くから「おはよう」と少し掠れた低い声が聞こえてきた。
「え……」
あたりを見回すと、知らない部屋ではないけれど、私の部屋ではない。そして、どう見ても、同じベッドの中に、胸元が少しはだけたデメトリオさん。
「き――――」
「おっと。まだ早朝だから、叫ぶのはナシ。いいね?」
大きな手で口を塞がれた。危うく大声で叫ぶところだったので、ありがたいような、ありがたくないような。
「昨日は無理させてすまなかった」
その言葉に慌てて布団の中を確認してホッとした。服、ちゃんと着てる。
「流石に、それはしないから」
どうやら昨日の夜、私はキャパオーバーを起こして、気絶してしまったらしい。
よく見れば、サイドテーブルに手桶とタオルがあった。どうやらちょっと熱を出していたらしい。知恵熱かな? 子どもみたいで恥ずかしい。
「……ごめんなさい」
「いや、俺が悪い。つい、暴走してしまった」
ところでなんで私はデメトリオさんの部屋で寝てて、隣にデメトリオさんがいるんだろうか?
「…………成り行き上?」
倒れたから、目の前にあったベッドに運んだ。看病しようと思っていたが、眠くなった。それが成り行き上の出来事、ということらしい。
よくわからないというか、感情がぐちゃぐちゃだ。
「起きるまではまだ時間がある。もう少し寝よう」
「……えと、部屋」
「ここで寝たらいい」
「ふえっ……はひっ」
なんでか、今朝のデメトリオさんは、有無を言わせない雰囲気だった。
――――カサンドラさん、助けて!





