43:バレてたよね?
昼食はちょっと気不味い空気で終わってしまった。怒っているとかではなくて、お互いに初めてちょっとすれ違ってしまったことに緊張している、みたいな感じ。
昼食後に厨房に行って、フルーツ飴をラッピングした。流石に全員分は厳しいので、他の侍女さんや使用人さんたちには、それぞれの休憩室にお皿でドーンと渡すことにした。デメトリオさんに渡すのは夜なので、皆に渡すのは明日の朝になってしまうけど。
「よし、夕食ではもっと話す!」
変に緊張するから駄目なんだ。いつも通りに楽しい空気の中でデメトリオさんたちと過ごしたい。
「あ、夕食後はカサンドラさんは、私についてないで決行するんだよ!?」
「っ……本気、ですか…………」
「せっかく作って、せっかく可愛くラッピングしたんじゃん」
陛下たちに渡すにあたって、毒見はすでにしてもらっていて、ピンチョスタイプになっているので、毒味役の人たちが私たちの希望に沿ってプレゼントするフルーツ飴を決めてくれた。
毒見の意味は?と思わなくもないけど、執事さんがそれで良いと許可をくれたので、いいんだろうけど。
「んっ……これ凄く美味しいですね」
「今日のエビは大きいな。エマは本当にエビが好きだよな」
「はい! 大好きです!」
私がちょっと沈んでいたのがバレたのか、料理長がメインをエビに変えたと料理人さんたちに教えてもらった。皆が優しすぎるし、甘すぎる。でも、めちゃくちゃ嬉しいから、ニコニコになってしまうというもの。
「っ、ん。そうか、ん。良かったな」
「ブフッ、ゲホッ……ゴホッ」
デメトリオさんが歯切れの悪い返事した瞬間、国王陛下が吹き出した。そして本気でむせてるけど大丈夫かな?
「誤嚥ですか? 年齢的にもお気をつけくださいね」
「そんな年齢じゃないよ! 全く、エマ嬢の『大好き』に照れてる若造のくせに、口だけは一丁前に育って」
「「……」」
いや、なんで二人が喧嘩するのよと言いたい。言ってもいいのかちょっと謎だけど。
夕食後のデザートやティータイムはなしで部屋に戻ると伝えると、陛下が「私のデザートまでないの!?」としょんぼりしていた。
「後でお部屋に届けてもいいですか?」
「え、私にも何かくれるのかい?」
「はい!」
うん、やっぱりなんかバレてるよね。この会話。いいんだけど。
きっと陛下は心底驚いてくれるはずだから!
私は私で、ちゃんと気持ちを伝えたい。
ひょんなことから王太子妃になるって決まっちゃったけど、ちゃんとデメトリオさんのことを想ってるんだよって。
デメトリオさんには部屋で待っててと伝えて、アイスハウスに大急ぎで向かった。
「カサンドラさん、頑張ってね!」
「はい。エマ様も」
ラッピングしたフルーツ飴を、緊張から抱きしめたい衝動に駆られるのをグッと堪えて、大急ぎでデメトリオさんの部屋に向かった。
ノックをして、後ろ手にプレゼントを隠して部屋に入った。
「あのね、もう、ほとんどバレてると思うんだけど……」
「んー。たぶん、そうだろうな、程度だ」
ソファに座ってクスクス笑うデメトリオさんの横に座って、スーハーと深呼吸をする。
「これ、バレンタインのプレゼントです」
隣の大陸とかの文化で……と説明すると、知ってるよと微笑んで受け取ってくれた。
「やっぱり、全部バレてた」
「ん。開けていい?」
「はい」
デメトリオさんが柔らかな笑顔でラッピングを開封して、袋の中を覗くと目を見開いた。
――――ドキドキするっ。





