40:一緒に作ろう?
デメトリオさんからフルーツ飴が食べたいと言われたけど、材料や果物をそろえるために数日ほど時間をもらうことにした。
厨房に言えば普通に揃うんだけど、ちょっとした計画を実行したくなったので、時間稼ぎの意味もあってお願いしてみたら、思いのほかスルッと頷いてもらえた。
「殿下、とても喜ばれていましたね」
「え、引いてなかった!?」
「勢いに押されていただけだと思いますよ」
それならいいんだけど……ん? いいのかな? まあいいかな。
「ところで、フルーツ飴とはそんなに時間がかかるものなんですか?」
「ううん。引き延ばしただけなの」
そう伝えると、直ぐに作りたそうにしていたのに引き延ばしたのは、別の理由があるんですよね? とカサンドラさんに聞かれてしまった。ほんと聡い人だと。
東方の国や隣の大陸にある国々では、二月一四日は好きな人に告白する日らしい。国によって、男性からだったり、女性からだったりするらしんだけど、ファンからプレゼントをもらってくるだけの父に聞いても、よくわからない。
でも、そういう日にかこつけてプレゼントを渡すというのは、恥ずかしいとか勇気が出ないとか思っている人の『後押し』的な役割をしてくれそうな気がする。
だから――――。
「カサンドラさんも、一緒に作らない?」
「え」
「別に好きとかじゃなくて、日々の感謝とかで渡すこともあるらしいの」
どうせなら、いろんな人に渡せたらいいなと思っているのだと、今回の計画について色々と話していた。
最初は戸惑っていたカサンドラさんも、最終的には一緒に作りたいと意気込んでくれて、二人でさらに計画を練ることにした。
「この数日、二人でよく話し込んでるが、何かあったのか?」
朝食後、部屋に戻りながらカサンドラさんと話していた。二人きりだと思い込んでいた。
いつの間にか後ろにいたデメトリオさんに声をかけられて、ちょっとびっくり。
「あ、えっ、いつの間に!? お仕事かと思っていました」
「ん、忘れもの」
ちょっと恥ずかしそうなデメトリオさんって、やっぱり可愛いよなぁと思いつつも、それならお先にどうぞと道を譲ると、怪訝な顔をされてしまった。
ほんと、こういう秘密とか騙すとか、チェス以外は苦手なのよね。
話したくてしょうがない。でも…………っ!
デメトリオさんを喜ばせたい、びっくりさせたい。ときめかせて、照れさせたい。大好きだって、伝えたい。
だから、色々漏れ出そうなものをグッと押し込めて、ふわりと微笑む。
「リオ、お仕事がんばってくださいね?」
「っ! ん!」
デレデレのデレトリオさん、見れるといいなぁ――――。





