39:おねだりが可愛かった
食後のお茶を飲みながら、デメトリオさんが少し聞いてもいいかと確認された。
答えられることなら何でもどうぞと言うと、なぜかアウト判定をくらったけど、今回は横に置くらしい。
「オムライスだったか? あれは東方の国の料理だと言ったな」
「はい」
「今まで食べたトマトパエリアやピラフとは違った食感だったが、米の種類は一緒なのか?」
「はい、一緒の品種だとは思います」
王城で一度だけリゾットが出たときがあったけど、お米はその時のと同じだと思う。
「普段食べているものより、もちもちしました?」
「あぁ。もっちり、ねっとり? こう、まとまりがある食感というか。そんな感じだったな」
「東方とわが国ではお米の扱い方が違うそうなんです」
「ほぉ」
父から聞き齧ったことだけど、と前置きして私が知っていることを色々と話すと、デメトリオさんがキラキラとした表情で前のめりぎみに話を聞いてくれた。
吸収したい、みたいな感情が見えるから、話しているこっちも楽しくなってきて、気がついたら二時間もおしゃべりしてしまっていた。
「っ、ふぅ。各国の名産品は献上されると食事に出るが、卿が食べてきたものは少し毛色が違うようだな」
「そうですね。平民街の食事処でよく食べているみたいですよ」
…………懐の問題で。とは流石に言わないでおいた。
「串に刺したいちご飴、ぶどう飴、どんなものなんだろうな」
「美味しいですよ。飴の部分はカリッと簡単に噛めて、中から甘酸っぱい果汁が飛び出てきます。甘さと酸味が丁度よくて、ついつい何個も食べてしまいます」
「もしかして、作れるのか?」
「はい。わが家の定番のおやつですよ」
野苺とか大きくなりすぎたブルーベリーとかとそこら辺から摘んできて…………というのも、言わないでおいた。
家族三人で嬉々として、ハイキングと言いながら果物摘みしていた、というのは流石に恥ずかしい。
「俺も食べたい」
「へ?」
「食べたい。ダメ?」
コテンと首を傾げて、聞かれた。心臓がギュムムムムムと締め付けられた。なにこれ、心臓止まるの!? これも初恋風邪なのかな? 今すぐ目の前のデメトリオさんを甘やかしたい!っていう衝動に、つい立ち上がってしまった。
「いや……無理にとは言わない…………すまん」
ショボンとするデメトリオさんがめちゃくちゃかわいい。
「っ、何個でも! 何百個でも作ります!」
「うおっ、いや、うん。ありがとうな、うん」
テーブルに両手をダシッとついて、前のめりになって答えたら、ちょっと引かれてしまった。
これは恥ずかしい。野生の果物狩りに出てたことより、恥ずかしいかもしれない!





