37:手料理
デメトリオさんのお休みの日のお昼、手料理を振る舞うことになった。
食材は厨房にあるものでいいそう。
なぜか国王陛下まで食べると言い出して、デメトリオさんが断固拒否していたのが謎だけど。
たぶん、陛下の分まで作ったらデメトリオさんが本気でイジケてしまいそうだし、今回はごめんなさいしとこう。
「何かお手伝いすることがあれば、お声掛けください」
「はい、ありがとうございます」
厨房の料理人さんたちに食材や使っていい場所を聞きつつ、お料理開始。
いつも私が食べているものでいいと言われたけど、どうせなら得意料理にしたい。
先ずは、お米をお鍋で炊く。この国ではあまりお米を使わないのであるかなと思ったけど、たくさん置いてあった。流石、王城の厨房。
ご飯を炊いている間に、ブロッコリーとエビのバジルサラダとクズ野菜スープをぱぱっと作った。
ご飯を蒸らしている間に、チキンライスの準備。
「デメトリオさんどれくらい食べるんだろ?」
いつもコース料理だから、ほぼ一品料理となると、分量が謎。パンは三個くらいしか食べてないけど。
「殿下なら、エマ様に出された分は死んでも食べますよ」
「えっ、いや、美味しい範囲で食べてほしいよ!?」
「っ、ふふっ」
カサンドラさんが最近よく笑う。美しい人なんだよなぁ。
ふと、ドレス採寸の日を思い出した。カサンドラさんに、柔らかな視線を向けた国王陛下。あの視線の意味……。
――――いまは、目の前の料理よね。
気を取り直して、蒸らし終えたご飯を炒めた玉ねぎ、細切れの鶏肉、トマトペーストが入ったフライパンに移す。
量は父と同じくらいでいいだろう。
ぱぱっと炒めてお皿に丸く盛ったら、次は卵。
ツルンとしたオムレツを作るのは実はかなり得意だったんだけど、初めて扱うかまどでは流石に失敗して、自分の方にそれを置いた。
今度こそ!とデメトリオさんの分を焼いた。
「よかった! 出来た!」
ホッとしつつチキンライスの上にオムレツを乗せたものの、そういえば毒見があるんだったということを思い出した。
本当はオムレツをナイフで開いて、向日葵のように開く様子を見てほしかったとぼやいたら、カサンドラさんが提案してくれた。
「では、殿下の分だけ、その後に毒見をしましょう。私が目の前で行えば、まぁ我慢してくれるでしょう」
「我慢?」
「ええ。我慢です」
カサンドラさんの言う『我慢』が何のことか分からず首を傾げていたけど、見れば分かりますよ、と言うだけだった。
「うーん? 分かった。とりあえずこれで出来上がりです」
「では、オムライスですか? これ以外の毒見をしてもらい運びましょう」
「うん」
――――デメトリオさん、驚いてくれるといいな。





