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【電子書籍11/15】 『王太子の嫁な!』と遺言状に書いてありました。  作者: 笛路 @書籍・コミカライズ進行中


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35/81

34:妙に、歯切れが悪い

 



 ◇◇◇◇◇




 デメトリオさんが急に『ダメトリオ』と呼んでくれと言い出した。

 はじめは意味が分からなくてキョトンとして、でもすぐに語感のよさとかちょっと間抜けな音に、吹き出してしまった。

 

 なんで『ダメ』なのか聞いてみると、瞳を彷徨わせて下を見たものの、またまっすぐにこちらを見てくれた。

 

「どうにも、気が急いてな。エマがそばにいるというだけで……………………」

「と、いうだけで?」

「嬉しくて仕方ないんだ。浮かれすぎて変な行動をしそうになる」


 夕食を食べたときにはそんな雰囲気はなかった。いつも通りのデメトリオさんで、いつも通りにエスコートしてくれていた。

 デートの時だと結構甘やかしてくれるけど、普段のデメトリオさんは一歩引いたというか、凄く紳士の距離を保つ。


 町中で見慣れている彼氏彼女とも、貴族の恋人たちともなんだか違って、時々不思議になることがあった。

 でも、デメトリオさんも私と同じように、嬉しかったり不安だったりしてるんだなと思うとホッとした。


「そっかー」

「ん。エマは? 何か不安だったんだろ?」

「うん」

「教えて?」

 

 首を傾げて、私の顔を覗き込むように見てくるデメトリオさん。いつものしっかりと纏めた髪と違って、お風呂上がりなのかサラサラと流れていた。


 ――――えっ、カッコイイ。


「おい、なんでそこで真っ赤になる。試してるのか?」


 なんでかスンとなられてしまった。せっかくの甘い空気が台無しだ。


「あのねっ!」


 よく考えたら、今まで旅行やお泊りをしたことがなかった。月下美人のときは、お泊りという感覚を持たないままに寝落ちしてしまったからノーカン。


 父がいないのは当たり前だったけど、住み慣れた家じゃなくて、母もいなくて、ほとんど知らない場所に一人。そう考えたら、怖さとか淋しさとかが押し寄せてきた。

 王城に来て数日は興奮状態にあったのか、そこまで気にならなかったのに。


 ちゃんと纏められなくて途切れ途切れになる言葉を、デメトリオさんは「ん」と、いつもの短い返事を挟みながら最後まで聞いてくれた。

 

「抱きしめてもいいか?」

「はい」

「ん」


 柔らかく、でもしっかりとデメトリオさんに抱きしめられて、彼がいつもつけている香水っぽい匂いにも一緒に包まれた。


「あのね」

「ん?」

「デメトリオさんの香水? 凄く好きなの。オレンジとシダーウッドかな? 嗅いでると落ち着く」

「…………」


 顔を少し上に向けて聞くと、デメトリオさんが固まっていた。

 あれ? これもしかしてまた煽り判定なの? と不安になっていると、デメトリオさんが視線を右に左にと揺らし始めた。


 ――――え?


「あ、いや。その……隠しておきたいとか、そういうアレはないんだが。あ、うん。オレンジだな。うん」


 妙に歯切れの悪い返事。何か聞いちゃいけないことだったのか、何なのか全くわからない。


 デメトリオさんが、勇気が持てたら話したいことのひとつだから、突っ込まないでほしいと言った。彼が嫌がることをしたいわけではないので、うんと頷いた。

 デメトリオさんは凄くホッとしていたけど、ちょっと気になってしまっている。


 まぁ、そのおかげで不安やら淋しさとかが吹っ飛んでしまったから、怪我の功名感はあるけども。

 

 


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✾ 10/25シーモア先行配信! ✾


『王太子の嫁な!』と遺言状に書いてありました。
貧乏男爵令嬢と王太子殿下の焦れったいほどの両片思いを強制成就!?
書籍表紙


表紙絵はm/g先生!
デメトリオさんがとにかくカッコイイ! そして、エマたんがもう撫で回したいくらい可愛い!

(作者がキモいのは横に置いて……!)

♣ 王太子の嫁な!ちゃん ♣
リブラノベル様より、11/15 配信です。コミックシーモアは、10/25先行配信!
ぜひぜひ、お手元に迎えていただけると幸いです。


▷▶▷ シーモア

― 新着の感想 ―
自分が望んだ事でも環境が変われば寂しくなりますよね(・ー・̥ ).. んが!しかし! デメトリオ! ダメトリオ! デレトリオ! さんがカバーしてくれるはず! オレンジを纏った2人、やっぱりラブラブで…
 デメたん、ダメたん、ダメたん、ダメたん、デメたん♢  一過性の変態発作で何より! ようこそのお戻り♪
肝心なところがシャイ(笑) 今回は確かにダメトリオですね(笑) この前の回で吹きましたwww エマの寂しさが飛んだようなので(๑•̀ㅂ•́)و✧
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