表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/79

16:異常に強かったらしい




「しかし、一番の問題は卿の収入だな」

「へ?」

「賞金は仕方ないとして、指導料も値上げをすべきだ」


 父と私がぽかんとしていると、デメトリオさんに家の調査はおじいちゃんが生きていたころに既に済ませていたと言われた。

 そういえば、宰相さんと家に来た時もだけど、どうやって素性とか分かったんだろう? 家に帰るのを尾行したとか? 

 父に後をつけられてて気付かないなんて鈍感だなぁ、なんて馬鹿にされていたら、デメトリオさんが苦笑いしていた。


「二人とも、自分たちの家名がどれだけ有名か気付いてないな? ルシエンテスと聞けば、一瞬で『無敗のチェス王』と頭に浮かぶほどには有名だからな?」

「「へ?」」


 父がいやいやー、まさかぁ!と顔の前で手を振っていたけど、デメトリオさんは真剣な顔で「マジです」と言い放った。


「あと、エマのチェスの強さは異常だからな? ……なんで二人ともまたきょとんとしているんだ」


 デメトリオさんもおじいちゃんも、そこそこ強い部類だと言われた。

 デメトリオさんの方がわりと強かったけど? まぁ、それはいま言わなくてもいいか。


「え? エマも大会出てみる?」

「んー。楽しくないからいい」

「っ…………楽しくなかったのか!?」


 デメトリオさんがガタリと立ち上がって、顔面蒼白で聞いてきたので慌てて違うと伝えた。


 チェス自体は好きだけど、大会って凄くピリピリしているから嫌いなのだ。人によっては相手の家族構成まで把握したりして、雑談によって精神を揺らして来る。ああいうのはとても自分には向かないし、楽しめない。


「あはは。僕は楽しめるからねぇ」

「卿は……何を言ってもニコニコしてそうですね」

「うん。可愛いんだよね。その程度で負けると思ってるところが。別の努力すればもう少し強くなれるよって言ってあげるけど、なんでか怒るんだよねぇ」

「なるほど。エマの煽りグセは卿のせいか」


 なにがどう『なるほど』なんだろうか。煽った覚えは一切ないんだけど?

 私がムッとした顔をしたのが分かったのだろう。デメトリオさんが目を座らせて「庭園」とだけ呟いた。

 あれこそ不可抗力じゃないの!




 何だかんだと雑談に花を咲かせてしまったけれど、父の指導料は見直すこととなり、私の妃教育の日程もある程度決まった。

 早速、明日から妃教育開始だ。

 家で受けられるものは家で、王城で受けたほうがいいものは王城で。少し移動等が大変だけど、デメトリオさんがいる王城に行けるというのは、実は嬉しかった。


「エマ、明日な」

「はい」


 帰り際、馬車に乗る直前にデメトリオさんが頬にキスをして『明日』と言ってくれたことが本当に嬉しかった。彼も、私に会いたいと思ってくれているということが、未知の世界に足を踏み入れる恐怖を和らげてくれる。


 地位や教育のなさで何か言われるかもしれない。それでも、私は彼の隣にいると決めた。

 やれることは全て、全力で。

 負けても、立ち上がる。

 それが私の信条。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
チェスの強さは異常 おじいちゃんがチェス盤2セット持ち込んで、二面差しとかやってたら、少しは自覚できた……かも……?
チェスもスボーツなのでスポーツで一流の人はメンタル強いですからね…立て直し方知ってるので強い強い。負けても勝つまでやる人が一流の人なので、そこにいるということはそれだけで強いんだよな〜〜と思います。負…
エマのパパンはチェスの腕だけでなく心理戦も強そうね。鋼メンタル!でも流石に娘が王太子の婚約者って言われた時はビビってたけどな!w 王太子の婚約者の父と個人的に話せる機会が持てるなら今まで以上に貴族も…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ