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18、黒幕は銀髪美人 ※アーサー視点※

 

 メリッサの金髪はとても綺麗だと思う。幼い雰囲気の彼女なのに、その風になびくとキラキラ輝く髪色効果なのか、不思議と大人っぽさを演出する。


 なんだかんだで気の合うメリッサは、俺にとって友人であり姉であり母親。


 そんな彼女と、なぜあんなにも無愛想な男が夫婦しているのかは、俺の人生における最大の謎。まあまだ一年の人生だがな。次点の謎は実の母親。


 ──という話は、今はどうでもいい。


 俺は今、神による運命のいたずらに感謝している。

 俺は確かに願ったよ? 不謹慎にも思っちゃったよ?

 美人な黒幕だったらいいなって。


 でもこういうのって、十中八九、オッサンなわけで。

 ついでにハゲてるわけで。

 油ぎっしゅな肌でもって、俺の顔を見てしかめるわけだよ。


「ふん、不細工なガキだな」


 ってさ。


 ところがだ。


「ご命令通り攫ってまいりました」

「よくやった。報酬はいつものように」

「ありがとうございます」


 なんてやり取りがあって、俺は豪奢な部屋にそぐわない質素なベビーベッドに寝かされる。

 黒装束の男は主に向かってうやうやしく頭を下げて出て行った。結局、目以外を見ることはできなかったな。


 と思っていたら、ベッドを覗き込む人物と目が合った。


 それはまさに女神。


「だーれ?」


 舌足らずな声でもって、1歳児らしい話し方で問いかける。

 そんな俺をフッと目を細めて見つめてくるのは……とっても美人な銀髪のおねえさま。

 しかもしかもだ、絶壁のメリッサと違って、惜しげもなくその豊満なお胸とその谷間を見せつけてくる服を着ていて……!


 よし。

 決めた。

 俺は今からおしゃぶり無しで精神年齢1歳になる。


 なに言ってんだお前という声は、今は無視する。

 脳裏で虫けらを見るような、冷たい目の伯父の顔がよぎったが、今は消しゴムで消しておこう。


 まずはこう、手を上に上げてだなあ。


「だあっこ、だあっこ」


 と言ってみよう。

 もちろん目は純粋無垢なキラキラさ! さらにニッコリと笑顔を付けちゃおう!


 さあどうだ!?


 反応を伺う俺に向かって、女は「ふふ、可愛い子」と言って手を伸ばして来た。

 よっしゃあ、俺の頭脳作戦(?)の勝利!


 さあ、俺を抱っこしろ。そしてその女神の谷間に俺は……俺はぁっ!!!!


ムニッ


 興奮のあまり鼻息荒い1歳児と化していた俺。しかし直後、俺の頬に走る鈍い痛みに、ギョッとなるのであった。


「いちゃい!」

「そりゃ痛いだろ。頬をつねったんだから」

「いちゃいいちゃい! うわあぁ~~~ん!!!!」


 なんとこの銀髪美人、あろうことか1歳児の頬をつねりやがった。これは立派な虐待だ! というわけで泣く!


 精神年齢は18歳だが、不思議なことにこの体、泣こうと思ったら簡単に泣けたりする。これぞ幼児マジック。


 これでもかとワンワン泣いてたら「うるさい、殴られたいのかい?」ときたので泣き止みました。痛いのは嫌い。そして暴力反対。


 しかしよく考えたら、幼児誘拐を指示するようなやつなのだ。まともなわけがないわなと、今更ながらに思う。

 ので、精一杯の睨みをきかす。


「ふん、いっちょ前に怒ってんのかい。可愛いねえ」


 俺の睨みなどどこ吹く風とばかりに笑われてしまった。可愛いと思うのなら抱っこしやがれってんだ。


「おばちゃ……「あ゛?」おねーちゃん、らめ!」


 おばちゃんと言いかけたら、どこぞの父親よろしく濁点つきの「あ」をいただいてしまった。ので即座にお姉ちゃんに変えたらニッコリ微笑まれた。めんどくせえな。


「ママのとこかえりゅ!」


 せっかくの美人黒幕ではあるが、どうやらあまり長居は無用の場所らしい。では当初の予定通り、家に帰ることにしよう。


 と、とりあえず正攻法で帰らせろと交渉。まあ当然ながら「ダメだ」とくるわな。


 銀髪美人は、目を細めて俺の顔を覗き込む。


「お前は大事な交渉材料なんだからね。せっかくさらったのに帰すはずがなかろう?」


 そう言って、ニヤリと笑う美女。

 このまま理由を聞きたいところだが、さすがに1歳児がそれを誘導するのは難しい。というか怪しすぎる。

 今はまず逃げて、この女のことを公爵だとか親父だとかに報告すべきだな。


 というわけで、当初の予定……脱走計画を遂行することにしよう。


「ねみゅい」


 トロンとさせた目をこする。さあ、早く部屋を出て行け。とチロリと目を上に向けた瞬間。


「うわ、可愛い!」


 そう叫んだかと思えば、いきなり抱き上げられてしまった。

 なんだあ、こういうのが好みなのかあ!?


 こういう時って、不思議と意図せぬ行為が相手のツボにはまるんだよなあ。


 ギョッとなり抵抗する間もない俺を、銀髪美人は抱き上げて……そのまま胸に抱きしめた。


 ふおおおおおおおーーーーー!?!?!?


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