表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/63

14、旦那様の秘密

 

 クラウド様とラウルド様、外見乳児中身18歳のアーサー、そして私。

 4人でのお茶会が始まった。つっても、私とアーサーは美味しいお菓子(優秀なメイドは離乳食タイプのお菓子を用意してくれたのだ)を食べるのに夢中。対して久しぶりの再会だってのに、兄弟は全然会話もない。


 しかしあまりに無言なのもどうかと思ったのか、旦那様から会話を切り出した。


「ラウルド、向こうでの生活には慣れたか?」

「そうですね、まだ寒さには慣れませんが、屋内では気になりません。そうそう、食事は大層美味しいんですよ。今回は忙しくて買う間がなかったのですが、今度美味しいお菓子を買ってきますね」

「「お菓子!」」


 お菓子という言葉に目をキラキラさせるのは、クラウド様ではない。もちろん私とアーサーだ。1歳未満の乳児と一緒に目を輝かせても恥ずかしいと思わない、それが私。先日19歳になりましてよ!


「そうか、義姉上は19歳になられたんですね。すみません、お祝いを何もできず……」

「いいんですよ、ラウルド様。旦那様からこれでもかってくらいにプレゼント貰いましたから」


 初夏の誕生日には、私の部屋を埋め尽くす服が届いたっけ。全部着尽くすのにどれだけかかるんだって量。

 あとは可愛い花束にお菓子。

 花より団子、私が一番喜んだのはもちろんお菓子だ。


「それから、観劇デートしました」

「へえ、兄上がねえ……」


 私が言えば、面白そうに笑うラウルド様。


「そういったことに全く興味のない人でしたのに、いや愛する人ができると変わるものですねえ」

「ラウルドうるさい。今すぐ極寒の地に帰るか?」

「冗談ですよ、恐いなあ」


 旦那様に対してそんな冗談が言えるのは、ラウルド様くらいだ。

 クスクス笑う彼に、クラウド様はムスッとした表情をする。耳が赤くなっているのが見えてますよ。


 そんなほのぼのした空気が流れる中、切り裂く一言が出るのは直後のこと。


「なあなあ」


 それは可愛いぷにぷにホッペに、クリームをべったりつけた精神年齢18歳の乳児による発言。

 みながなんだと注目する中で、アーサーは聞いたのだ。


「なんでそんなにラブラブなのに、伯父上とメリッサは子供作らないんだ?」と。


 子供というより、無知ゆえの無邪気な質問。

 途端、空気にビシッとヒビが入ったことを、無知なその子は気づかない。


 う~ん、これはデリケートな質問。

 立派な大人ならば、そう簡単に質問してはいけないものだと理解しているだろう。

 だが前世18歳で時が止まった彼は、そういったことを理解する経験をしなかったのか。

 それとも単純に無神経なのか。


 とりあえず「アーサーは女性にモテないでしょうね」と言っておこう。


「なんで!? 俺は将来大魔法使いになってモテモテになる予定だぞ!?」

「予定は未定と申しまして……」

「子供の夢をへし折るな!」

「精神年齢18歳が何を言いますか」

「俺より幼い精神年齢が何を言う」


 なんてやり取りをしていたら、そのうちアーサーは自分の質問も忘れてまたお菓子に夢中になった。

 良かった、精神年齢18歳でも、肉体年齢の幼さが勝ったみたい。子供は言ったことをすぐに忘れるからね。


 チラリと見れば、クラウド様は黙々と紅茶を口にしている。

 ラウルド様は、私と同じくクラウド様をチラチラ見てから……私を見た。


 その目は『言ってないんですか?』と聞いてくるようだ。


 まあ別に隠すことではない。でもわざわざ言うことでもないと思うのよねえ。なにせ一応相手は1歳にも満たない乳児。精神年齢18歳の『彼』も異世界から来ているから、説明したところでどこまで理解できるやら……。


 とりあえず、簡単に説明しておこう。


「アーサー」

「ん?」

「簡潔に言っておくけれど……旦那様は狼になるのよ」

「……」


 さて、これで説明は終わった。やれやれ、それじゃあ次はミルフィーユでも……と手を伸ばす私の耳に、アーサーの呟きが届く。


「つまり男はみんな狼ってことか。伯父上って、ひょっとして見かけによらず結構なエロ親父で、メリッサに嫌われてる? もしやムッツリスケ……」


ダンッ!!!!


 とんでもないことを言いかけたアーサー。

 だが、テーブルに刺さったフォークを見て、「バブウ!」と嘘くさく言って、またお菓子を食べ始めるのであった。


 そんな二人を見て、ラウルド様が「息子の命、いつまでもつだろ……」と半分本気で言ってるのが聞こえて苦笑するしかないわ。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ