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29話 武辺者の女家臣、襲われる

 月が綺麗な秋の夜。

 西区にある立ち飲み酒場・酔虎亭では、女が車椅子の男にウザ絡みをしていた。


「ねぇねぇ、トマファ君ぅ~。ちゃんと飲んでるぅ?」

「ちょ、ちょっとウタリさん、酔い過ぎですって!」


 嫌がるトマファの肩を抱きこんで、ニヤニヤしながらカップにワインを注いでいるのは、軍略担当武官のウタリだった。そのウタリを引き離そうと、そばにいる小柄な女が必死に引っ張っていたが。


「ウタリさん、トマファ君が嫌がってますよぉ――あと、トマファ君はセーニャさんのものぉ!」


 たまたま仕事上がりに顔を合わせた三人が、「明日も休みだから飲みに行くか」という流れになり、今や領主館の面々がよく立ち寄るようになった酔虎亭へやってきたのだ。料金はリーズナブルで料理の量もたっぷり、庶民にも人気の一軒である。


「んだぁ、クラーレっち。おめぇも酒、飲んでるかぁ?」

「飲んでますってぇ」


 街道沿いのやぐら建設がようやく終わり、現場監督として詰めていたウタリは、積もった疲労とストレスを酒で洗い流すように杯を次々と空けていった。そして気づけば完全にタガが外れた“ご機嫌な暴走酔っ払い”と化していた。


「そかそか! じゃあそこの猫娘、じゃんじゃか酒もってこ~い♪」


 ウタリが空のピッチャーを持ち掲げると、厨房の奥から小さいため息をつきながら店員がやってくる。


「もぉ~! 領主様といい、オリゴ様といい、ウタリ様といい……私をネコ扱いしないでください!」


 やってきたのは、領主館メイド隊所属のプリスカ。

 酒場の娘の恰好をしているが、れっきとした店員である。夜勤がない日は実家の手伝いをしているらしく、口では文句を垂れながらも手際よくお代わりのピッチャーを運んでくるあたりは流石だった。


「ネコじゃん」

「ネコですよね」

「にゃーん」


「もぉ、私は犬派なんですぅー!」


 むくれ顔で頬をふくらませながらプリスカは舌をべぇっとと出す。

 お代わりのピッチャーをテーブルにどんと置くと、文句をぶつぶつ言いながら手早く小銭をかき集めて、ふんっと鼻を鳴らしてくるりと背を向ける。

 ──が、背後から手が伸びた。


 「ちょ、ウタリさん!? またお尻触ったでしょーっ!」


 尻を押さえて跳ねるように振り返り、プリスカは厨房の入口まで駆けていくとひょっこりと顔を出して、頬を膨らませながら叫ぶ。


「セクハラはんたーい!」


 そして、再び舌をべぇっと出して「しゃーっ」と叫びながら、今度こそ本当に奥へと引っ込んでいった。


「やっぱネコじゃん」

「ネコですよね」

「にゃーん♡」


 残されたテーブルにはジョッキの泡が静かにしぼみ、笑い声の余韻だけが残る。

 ──その笑い声も、ふとした瞬間に、ぴたりと止まった。

 酔虎亭のざわめきが、どこか遠くの出来事のように感じられた。


 ウタリは少しだけ目を細め、腸詰の刺さった串を煙草代わりに口にくわえる。

 本当は吸いたかったらしいのだが、トマファもクラーレも煙草は吸わないので遠慮しているようだ。

 その静けさの隙間を縫うように、新しい肴を運んできたプリスカが笑顔を浮かべながら訊いた。先ほどまでムッとしていたのに。――ネコみたいである。


「ところでクラーレ様って……前は何をしてたんですかぁ?」


 クラーレはジョッキを持ったままプリスカに目を向け、少しだけ瞳を細める。


「んー、そうねぇ」


 届いたピクルスをひとつ摘まみながら、彼女はふと視線を上げた。

 天井は高く、梁のあいだから夜風が通り抜けてゆく。その梁に掲げられたキュリクスの街旗が、秋の風にかすかに揺れていた。灯りに照らされた旗は、ほのかに色を変えながら、静かに揺れていた。

 木造の柱、酒と香辛料の混ざった匂い、隣席からこぼれる笑い声──。酔虎亭の空気はどこか温かく、そして遠い昔のように懐かしかった。


「王国の研究所で、作物の病気について調べてたんだよ。実験して、論文書いて、毎日泥だらけでさ。――でも楽しかったよ? ちゃんとやってた頃までは、ね」


 ウタリが表情を崩し、口にしていた串を皿に戻す。


「クラーレっち……」

「ええ、まぁ。いいところでしたよ。社畜として、厳しく、しっかりしつけていただきましたから」

「は――? 社畜として?」


 トマファが思わず聞き返すが、クラーレは平然とした口調のまま言葉を続けた。


「朝五時出勤、午前様の退勤。休みは原則“無いもの”とされていました。あの上司の言葉は絶対で、理屈は通じません。研究成果よりも、報告書の“見栄え”が何より重視されてましたね。あぁ、社畜として何も考えずにやってる身なら──まあ、居心地はよかったかもしれません」

「……うわ……」


 トマファが素で引いた声を漏らし、肩をすくめるようにして眉をひそめた。


「その……この前の、あの人もそうですけど……そんな非常識な職場って、本当にまだあるんですね」


 彼の脳裏に、領主館へ無断で押しかけてきた“元所長”の顔が浮かび、背筋がひやりとする。

 そんな中、隣でプリスカがぽつりと呟いた。


「あの時、私もどさくさに紛れて、ぶん殴っとけばよかったです」


 その声は、妙に落ち着いていた。同時に、彼女の右手がスカートの太ももあたりにすっと添えられる。──そこは、メイド隊がナイフを忍ばせている定位置。無言のままプリスカの唇がきゅっと結ばれる。 その目は笑っていない。まるで、また次に同じことが起きたら本当に刺す気なのだろうか。


 殺意が隠しきれていないプリスカのその仕草にトマファはそっと車椅子を引きわずかに距離を取ろうとする。しかしプリスカはトマファの右腕をすっと掴むと自身の肩に手を這わせる。


「こわーい。今度なにか有ったら私を守ってください―」

「ちょ、ちょっとプリスカさん……。年下の子に守れって言われるの、地味にプレッシャーなんですけど……」


 プリスカは一瞬きょとんとしたあと、あざとくそっぽを向く。


「……べつに本気で言ったわけじゃないですー。どうせ誰も守ってくれないしー」


 そう言いながら、トマファの腕をぎゅっと掴んだまま離さない。


「でもトマファ様がピンチになったなら――本気でお守りしますから」


 最後にちらりと真剣な視線を向けてからいたずらっぽく舌を出した。


 プリスカとトマファのやり取りに、ウタリはくくっと笑いながら、皿に乗った揚げイモを口に放り込んだ。


「ま、クラーレっちって昔からそうだったよな。寝ずに夜哨、そのまま日勤ぶっ通し。ほら、あのド阿呆小隊長の勤割がクソで、めちゃくちゃなシフト組まされてたもんな。それでも文句ひとつ言わずにやっててさ――ガッツあるっていうか、ありすぎて逆に怖ぇって思ったよ、ほんと」

「えー、ウタリさんって、クラーレさんのこと知ってたんですか?」


 プリスカはトマファの腕からするりと手を離すと、テーブル代わりの樽の上に肘をつき、身を乗り出してウタリの顔を覗き込む。ウタリはピクルスをつまんで口に放り込み、軽く肩をすくめた。


「あぁ。プリスカは知らんだろうが私もクラーレっちも元は王国軍だ。クラーレは三年奉公を終えて上級学校に進んで、そこからあの所長がおった研究所へ。私は……まあ、いろいろあって中等学校の軍事教官やってから、ヴァルトア様に拾われたってわけ」

「へぇぇー! ってか、クラーレさんって、王国軍人だったんですか!?」


 目を丸くするプリスカは、驚きのままピクルスを一つつまみ、口に放り込んだ。「おいおい、店員だろお前」と、ウタリがぼそっと苦笑混じりに突っ込む。クラーレは肩をすくめ、ぬるくなったエールをひと口だけ飲んだ。


「もう、過去の話ですよ。……たぶん、ね」


 静かな口調だったが、その一言の奥に、消えきらない悔しさと、苦い割り切りが滲んでいた。


「でも、トマファ君」


 その瞳だけが、妙にまっすぐだった。トマファは思わず背筋を伸ばす。


「仕事って不思議と“やってるフリ”が上手い人のほうが評価されるんですよね。まぁ私もそんな世界にいたんですが。そういう人たちは、声が大きくて、報告書もきれいで、上の受けもいい。私は……ただ、ちょっと不器用だっただけです」


 言葉の端が、わずかに揺れる。


「でも、だからこそ気づけたんです。本当に意味のある仕事って、“誰かのために、地に足をつけてやること”なんだって」


 クラーレは、ジョッキを見つめながら微かに笑う。


「評価がほしいわけじゃない。――今は、ちゃんと実感があるんです。自分の手で何かを動かしてるって」


 静かな口調だったが、その奥には刺すような痛みが滲んでいた。

 ウタリが目を伏せたまま、ぽつりと呟く。


「……本当にくそったれだったんだな、クラーレの前の職場」


 クラーレはゆっくりと首を振った。


「だから、今がすごく幸せなんです。ちゃんと評価してもらえてるし……トマファ君みたいに目標にできる同僚も、初めてできましたから」


 小さく息を吐いて、冗談めかすように微笑む。


「ただ、あの頃は、あれが当たり前だと思ってたんです。――いまでも、ときどき夢に見るくらいには、ね」


 その言葉は、静かに、揺れる蝋燭のように夜の帳へと溶けていった。

 酔いも、賑わいも、どこか遠のいていくように感じられた。



      ★ ★ ★



 それは、春の終わり頃のことだった。

 まだ空気に朝霧が残る時間、王国農業研究所の温室には、一人の若い研究者の姿があった。


 クラーレ・サルヴィリナ。耐病性に特化した作物の研究を担当して三年になる。温室の中には、枯れかけた苗と、かすかに希望をつなぐ芽が入り混じっていた。


「……やはりこっちは、まだダメか」


 彼女は手帳に何かを走り書きし、黙々と水をやる。

 指先はひび割れて爪の中も土汚れで真っ黒、そして袖口も泥で汚れていた。それでも顔には静かな光が宿っていた。決して楽しげというわけではない。だが、どこか満ち足りた表情だった。


 その穏やかな時間が変わったのは──一年前、イアル・ラドムが所長として赴任してきてからのことだ。イアルは「実家が太くて王宮のコネで送り込まれた」と噂されるような男だった。農業に関する知識は皆無。研究施設への視察は初日の一回きりで、その後は報告書と査定表の山に埋もれていた。


 クラーレの論文や実験記録には一度も目を通さず、口にするのはいつも決まり文句だった。


 「報告書の様式が悪い」

 「これでは成果が見えない」


 だが、何をどう直せばいいのかなんて一切言わない。質問しても、「自分で考えろ」の一言で終わる。──それが、彼のやり方だった。こんな上司の元でクラーレを含む何人かの研究者は日々の実験と記録に忙殺されていった。


 そして、翌月の実験計画書を提出しようとしていた頃、クラーレは所長室に呼び出された。


「クラーレ君──君、今月末で解雇ね。

 ――まあ若いんだし、身体でも売れば、食っていけるでしょ?」


 一瞬、時間が止まったように感じた。

 クラーレは、ただ無言でその場に立ち尽くしていた。

 罵倒も、怒号もなかった。

 ただ、静かに一度だけ頷くと、所長室を出て研究室へと戻った。


 “今月末”と言われたが、それは三日後のことだった。

 あまりにも急な、そして一方的な解雇通知だった。


 その日のうちに、クラーレは温室の鍵を返却した。

 研究ノートもすべて、自ら研究所の焼却炉に投げ入れた。

 めらめらと燃え上がる火の中に、無表情のまま、一冊、また一冊とノートを放り込んでいく。研究者にとって命と同じとも言えるそれらを、躊躇いなく、燃やして灰にしていった。


 翌朝、彼女は荷物をまとめると黙って研究所を後にした。

 研究に関する引き継ぎをする気もなかった。

 もう、過去を振り返ることもなかった。

 ただ──胸の内は、からっぽだった。

 研究そのものは心から楽しかった。だが今の研究所は苦痛でしかなかったのだとようやく気づいたのだ。


 しばらくのあいだ、彼女は就職活動を続けた。

 そんなある日、一通の手紙が届く。

 その一片のつながりだけを握って、クラーレは都市間連絡馬車に乗り込んだ。

 心の奥には、ほんのわずかな希望と、小さな悔しさの種だけが残っていた。

 彼女が向かった先――それは、かつて軍属だった頃に共に過ごした上官、そして今まさに酔虎亭でご機嫌な暴走酔っ払いとなっているウタリがいる、城郭都市キュリクスであった。



      ★ ★ ★



 過去の情景が胸をかすめ、クラーレは静かに息を吐いた。

 ジョッキを口元に運ぶも、ほとんど飲まれていない。泡はすっかり消え、ぬるくなっていた。

 沈黙が落ちた卓上に、ウタリの声が低く響く。


「――はぁ? 若い女だからって言っていいことと悪いことの区別もつかねぇの、そいつ」


 言葉の端に怒りがにじむ。酒が入っているせいか声も少し大きかった。

 トマファは思わず背筋を伸ばし、普段の柔和な顔つきを引き締めて言った。


「そこまでひどいことよく言えましたよね。不愉快です」


 クラーレの話が耳に入っていたのか、隣で飲んでいた酔客の男がゆっくりとこちらへ振り返る。

 プリスカはよく知ってる人なのか、「よぉ親父ッさん」と気楽に声を掛ける。

 そしてクラーレたちとも顔なじみの銑鉄細工の親方はジョッキをテーブルに叩きつけるように置く。


「悪ぃな、立ち聞きしちまったみてぇで。――で、なんだそれ?」


 四人をぎろりと睨みつけ、顔を真っ赤にして怒鳴りだす。


「そんなヤツ、今から新都にでも行ってぶっ飛ばしてこようぜ! このクラーレちゃんにひでぇこと言ったクソ上司を!  おい野郎ども、馬でも荷車でも出してやる、今すぐにでも! なあ!」


 その声に、他の酔客たちもどっと沸き立った。


「おいおい、聞いたか!? どこの馬鹿だそりゃ!」

「そうだ! クラーレちゃんにそんなこと言ったヤツ、ぶち転がせ!」


 あっという間に、店内の空気が一変する。

 クラーレは肩をすくめ、ジョッキを持ち上げた。


「みなさん、落ち着いてください。……彼、もう勝手に自滅してますから」


 それでも怒りに火のついた酔客たちは、「名前は?」「顔覚えてる?」「キュリクスで見かけたら城壁から叩きだしてやれ!」と口々に言いながら盛り上がり続けた。


 そこでトマファやウタリの横で静かに聞いてたプリスカが、呆れたように声を上げる。


「もう〜。これ以上騒いだら、領主軍の警ら隊に来てもらうよ! ──あ、今夜の警ら担当、アニリィ様だ」


 “アニリィ”という単語が出た瞬間、酔客たちはピタリと静まり返った。


「……やべっ、俺、まだ死にたくねぇわ……」

「ワンチャン、あの“姫”に一杯飲ませれば生存ルート確立するぞ」

「一杯で済むか、破産するわボケ」


 緊張と笑いがないまぜになった空気のなか、ウタリは乾いた笑いを漏らし、トマファはほっと息を吐いた。

 クラーレは、すっかり温くなったエールを口に含みながら、ぽつりと呟く。


「ま、忘れていい話ですよ。……私はもう、自分にとって素敵な場所、見つけたんで」



      ★ ★ ★



 クラーレだけでなく、熱意ある若手研究員たちが次々と研究所を去っていった。中には低賃金と過重労働に耐えながらもエラールの農業に希望を持っていた者もいた。だが所長イアルはそういった努力には「報告書に反映されないから無価値」と判断した。そのせいか本当に有能な人間から順に失望してゆき、静かに研究所を後にした──。

 有能な人材を失った研究所は、表面上こそ変わらぬ日常を装っていたが、内側ではじわじわと機能不全に陥っていた。やがて組織は静かに、しかし確実に崩れ始める。


 最初の兆しは、王宮への報告書の提出数が極端に減ったことだった。

 所長イアル・ラドムのもとには、王宮から「最近の進捗報告が届いていない」「論文提出予定はどうなっているのか」といった催促が、毎日のように届くようになった。


 焦ったイアルは、残された研究員たちに報告書や論文の提出を命じた。しかし、上がってきた書類の内容は目を覆いたくなるようなものばかりだった。報告書の文面は毎回ほぼ同じ。測定結果の数値はどれも不自然なほど似通っていた。


 そして、クラーレたちが研究所を去ってから、半年も経たないうちに――その崩壊は、誰の目にも明らかな形で表面化していった。しかしそれでも所長イアル・ラドムの仕事に対する姿勢は変わらなかった。

提出された書類には一切目を通さず、数字と書式さえ整っていればそれで満足し、確認印を押してそのまま王都への提出文書に添えて送り出していた。──彼にとって中身には、最初から興味などない。興味があるのは給料と出世だけだったのだ。


 だが、イアルが適切な対応を怠った結果、次第に王都からの疑義や問い合わせが増えてゆく。


「今期、貴研究所から提出された論文について、他国の研究機関から再現性に関する質問が来ております」

「ところで、年初に掲げられた研究テーマの成果報告は、いつ頃になるご予定ですか?」

「……気のせいでしょうか。同じ報告書が、数字だけ変えて何度も提出されているようなのですが?」


 イアルはそのたびに回答を濁し、「なんとかしておけ」と部下に丸投げするだけだった。しかし、残された研究員たちは、今まで真面目な研究などしてこなかった連中ばかり。ゴマスリと王宮への献金、そして実家の太さで今の地位にへばりついいる役立たずの研究員らは焦った末、かつてクラーレが残した論文の写しや報告書の断片を“思い出しながら”再構成しようとした。


「研究ノートが無い? そんなはずはない、倉庫を探せ!」

「無いなら、似たようなことを書けばバレないだろ」

「大丈夫。所長は何も見てないし、誰も本気でチェックなんかしないって」


 だが──クラーレの研究ノートは、退職時に本人の手で焼却されていた。

 それでもなんとか形にすべきと、十分な裏付けもデータもなく、ただただ曖昧な記憶をもとに仕立て上げられた論文は、当然のごとく査読で引っかかった。それだけでなくここ最近提出された報告書にも疑義があり、農業研究所へ極秘調査が行われるようになる。


 その調査が進むにつれ、いいかげんな論文の引用元として提出されたデータはまるでの捏造だった。他にもグラフの数値も改竄されており、そして何より──記載された理論の一部が、かつてクラーレが国外学術誌で発表した論文と酷似したのだ。



 * * *



 ある日、イアルのもとに王宮農業研究事業審査局から厳しい文面の通達が届いた。


「提出された研究成果に既発表論文との重複箇所が多数見られます。とくに国外学術誌にて発表されたクラーレ・サルヴィリナ氏の論文内容と酷似しており、出典の明記もなく、研究倫理上の重大な問題が疑われます」



 加えて、補助金交付担当官名義の一通も届いていた。


「現状、貴研究所からは半年以上にわたって学術的成果が提出されておりません。今後も報告書・論文の未提出が続くようであれば、年度末をもって補助金支給の継続は困難と判断せざるを得ません。誠に遺憾ながら、本件は監査部門と共有されます」



 イアルは手元の書簡を震える手で丸め、机に叩きつけた。


「ふざけるな! 全部、あの女のせいじゃないか!」


 人件費節減のために地味な女研究員を辞めさせたら、田舎領主の文官となった。その仕事の傍らで農業研究を続けており、今でも結果を積み重ねていること――しかも、その論文が王都で高評価を得ていると

いう噂すら届いている。


 イアルは再び書簡を机に叩きつけると、一つ考えが浮かんだ。


「そうだ、なら連れ戻せばいい。首に縄を付けてでもここに連れ戻して、“うちの研究員”としてもう一度発表させれば! それで王宮にも示しがつくはずだ!」


 この瞬間、イアルの中で“倫理”は完全に死んだ。あるのは保身、そして失地回復の妄執だけだった。



     ★ ★ ★



 キュリクス領主館・文官執務室。

 静かな午前中。窓から差し込む陽光が書類の端を照らし、羽音一つ聞こえるほどの静寂が広がっていた。机に向かうトマファとクラーレは淡々と手を動かし、紙をめくる音とペンの走る音だけが小さく響いている。その平穏な空気を、無遠慮な足音が破った。


 ──バンッ!


 勢いよく開け放たれた扉の向こうから、男の怒鳴り声が飛び込んできた。


「クラーレ君! ちょっと、話がある──!」


 入口に立っていたのは、くたびれた新都流行りの外套を羽織った中年男だった。髪は乱れ、目の下に濃い隈を浮かべている。イアル・ラドム──王国農業研究所の元所長だった。


「――は?」


 前職の上司が突然やってきたのだからクラーレは作業の手を止める。

 しかし冷ややかにその闖入者を見やるが、再び机の書類に視線を戻すのだった


「話をさせてくれ、頼む。あの時は私も焦っていたんだ。上からの圧もあって――いや、クラーレ君の価値は、分かっていた。だがどうにも、その」


 イアルは要領を得ない言い訳を口走りながら、机越しにじり寄ってくる。クラーレは微動だにせず、椅子に座ったまま冷淡に言った。


「いまさら話をされても困ります。迷惑ですからお帰りください」


 そう言って、彼女は視線を挙げることなく吐き捨てた。


「待ってくれ、聞いてくれ! 研究所は今、君が必要なんだ。君さえ戻ってくれれば──!」


「──だから、帰ってください」


 語調が変わった。冷たく、突き放すような声。だがイアルは引かなかった。焦りと苛立ちの入り混じった表情でずかずかと執務室に入り込み、机を回り込むと──クラーレの腕を、いきなり乱暴に掴んだ。


「無理にでも戻ってきてもらう――一度、王都へ戻れば分かる! 君はきっと!」

「やめてください」


 クラーレの声が、ぴたりと止まった。しかしイアルは、その言葉に耳を貸そうともしない。


 ──ごとり。

 執務室の入口で、車椅子が静かに動いた。


「おやめください」


 トマファだった。小柄な青年は車椅子を無理に前へ出し、イアルの進路を塞ぐように立ちはだかる。


「これは明確な執務妨害行為です。クラーレさんは嫌がっています!」

「邪魔だ。どけッ!」

「衛兵隊を呼びますよ!」

「うるさいっ、どけって言ってるだろ!」


 イアルが怒鳴り声とともに、車椅子を乱暴に押しのけようとした──その瞬間。


「ちょっと! 何してるんですかっ!」


 廊下の先からスカートを翻し軽やかに駆けてきたのは、メイドのプリスカだった。たまたま洗濯物を干しに行った帰り、いつも通りの道草目的で立ち寄った文官執務室。思わぬ騒ぎに出くわしたのだ。彼女は状況を一瞥し、すぐさま踵を返すと、執務室の外に向かって叫ぶ。


「非常事態っ! 一階執務室、非常! 非常! 非常!」


 太ももに右手を宛がってナイフの位置を確認しながら、マニュアル通りに大声で緊急対応を呼びかけた。──普段は静かな領主館の空気が、一気に緊張感が高まってゆく。その空気にいたたまれなくなったのか、あるいは焦りに突き動かされたのか──イアルが動いた。


「邪魔だ、どけって言ってるだろッ!」


 怒鳴りながら車椅子を力任せに蹴り飛ばす。トマファはバランスを崩して床に投げ出された。クラーレの腕を掴んだまま、イアルが引きずるように歩きかけた──その瞬間だった。


「──おい、てめぇ。何してやがる」


 低く響いた女の声。廊下の奥から重たい足音が迫る。現れたのは、金髪を揺らす長身の女武官――アニリィ。冷えた鋼のような双眸が、まず床に倒れているトマファを一瞥し、次にクラーレとイアルの繋がれた腕へと視線を移す。場の空気がひと息で張り詰めた。


「ちょ、アニリィ様ぁ! 非常事態ですっ!」


 プリスカが駆け寄りながら叫ぶ。


「見れば分かるよ、プリスカちゃん」


 アニリィの声は怒気を孕んでいたが、その鋭さのなかに確かなやさしさが混ざっていた。プリスカは彼女の隣に立つとガーターから小さなナイフを引き抜いた。その目に怯えの色はない。むしろ、どこか楽しそうですらあった。アニリィはそんな彼女の肩に片腕を回し、そっと引き寄せる。


「いい子にしてな、プリスカ。こッから先は私の仕事だよ」


 その囁きは、彼女だけに向けた、戦場における武官のやさしさだった。


「おい、そこの男。現状を確認する。なおお前には黙秘権は――ないッ!」


 アニリィの声は低く、しかし明らかに怒気を孕んでいた。


「トマファ殿を突き飛ばし、クラーレっちを無理やり引っ張っている。──その状況に、相違はないな?」


 一歩、前へと踏み出す。その足音ひとつで、床の木目がぎしりと軋んだ。

 イアルは目を見開き、狼狽の色を隠せず声を荒げる。


「私は王宮直轄の研究所の所長だ! それに、実家は子爵家だぞ! ……君こそ、私に無礼だろう!」

「え、別に?」


 短く吐き捨てるような言葉に、ずしりと重みが乗る。

 アニリィはちらりと横目でプリスカのナイフを確認し、そのナイフを持つその手をそっと撫でると声をかけた。


「こんなやつ相手にナイフを抜く必要もない。──まず相手の戦力を見極めなさい」


 にっこりと笑みを浮かべながら、静かにナイフを下げさせる。その一挙手一投足に、プリスカはまるで子猫のように素直に従った。


 そのやり取りを目にしたイアルが、思わず一歩、後ずさる。

 ──その瞬間だった。

 アニリィの身体が、一気に距離を詰めた。


「貴族だから? 所長だから? ──だから、何だ?」


 拳を握りしめ、喉の奥で言葉を転がす。


「──私には関係ない。ここはキュリクス領主館。王都でも、貴様の屋敷でもない」


 視線を鋭く細め、最後に言い放つ。


「ここでの狼藉は──私が許さん」


 クラーレの腕を掴んだまま、イアルは呻くように吐き捨てた。


「うるさい! この女は――研究所の人間だ! 黙って連れ帰れば済むんだよ、道を開けろ!」


 そしてイアルが懐から取り出したのは──鈍く光るナイフだった。そしてクラーレの手首を強く握り、無理やり引きずろうとする。


「王宮からの命令でもあるんだ、俺の手で連れて帰る。それで、全部終わる!」


 もはや何を守り、何を敵にしているのかすら分からない。彼の目には狂気とも諦めともつかぬ濁った光が宿っていた。


 ──だが、その瞬間。アニリィの視線が、イアルのナイフを握る手からクラーレに向く。そして一拍の間を置き、彼女はひとつ、息を吸い込んだ。


 その呼吸音を聞いた瞬間にクラーレが動く。

 掴まれていた腕を手首ごと捻り返し、体重を乗せて自力で振りほどいた。

 イアルの身体がよろめき、前に体勢を崩す。

 その一瞬を、アニリィは見逃さなかった。


 「はっ──!」


 鋭い掛け声とともに、一歩で距離を詰める。

 相手の腕を取り、肘で関節を極めたかと思えば、腰の回転で完全に浮かせ――

 イアルの身体が宙を舞った。


 ドンッ!


 鈍い音を立てて、背中から床に叩きつけられる。


「ぐはっ……!」


 みっともない叫びとともに、重たい肉の音が執務室の床に響き渡る。

 そして次の瞬間、イアルの胸元には鋭利なナイフの峰がぴたりと添えられていた。

 そのナイフは、イアル自身が抜いたはずのもの――いまは、アニリィの手にある。

 もし、アニリィがその気だったなら、彼の胸には、すでにその刃が深々と突き立てられていただろう。


 イアルを見下ろすアニリィの視線には、怒りも、憎しみすらなかった。あるのはただ、冷え切った無感情――。まるで戦場で命を数えるように狩り取る“機械人形(オート・マタ)”のようだった。


 その無慈悲な瞳に射すくめられた瞬間、イアルの顔から血の気が引く。腰元から、じわりと濡れが広がる。恐怖に耐えきれず、彼は失禁したのだった。床に滲む情けない水たまりだけが敗北の証を物語っていた。



「大丈夫だった?」


 アニリィがナイフをぽいっと投げ捨てると、軽く肩をすくめてクラーレに振り向いた。


「ええ。きっとアニリィさんなら、確実に制圧してくれると思ってましたから」


 クラーレは落ち着いた声で応える。


「なら、自分でやりなさいよ。あなたも軍属だったでしょ?」


 二人は顔を見合わせて、どこか可笑しそうに笑い合う。確認もそこそこに、アニリィがイアルの襟首をつかみ上げた。


「武辺者の領主館でナイフを抜くなんて自分が刺される覚悟があるってことよ。──覚悟もなしに刃物なんか抜くんじゃないよ」


 そのまま、イアルの身体はズルズルと床を引きずられていく。


「やめろッ、離せ、私は……私は──ぐっ……!」


 必死の抵抗は、アニリィの膝蹴り一発で沈黙した。


「床掃除でもしていくか? ……あぁッ?」


 吐き捨てるように言いながら、アニリィは領主館の大扉を──ブーツの一撃で、容赦なく叩き開いた。光が溢れる正門へ向かってイアルの身体がズサリと投げ出される。泥にまみれた外套が地面で広がり、その場にいた衛兵隊やメイド隊員の視線が、一斉に集まった。その背中に向けて、アニリィが冷えた声を突き立てる。


「官憲に突き出されんだけでも感謝しな」


 静まり返る入口に、風だけが吹き抜けた。


 イアルはうめき声ひとつ上げず、顔を伏せたまま泥の上でうずくまっていた。アニリィはそれを一瞥し、面倒そうに踵を返す。集まりはじめたメイドたちを横目に見ながら、ぽつりと呟いた。


「お客様がお帰りだそうで、塩でも撒いといてやんな」


 そう言い残すとアニリィはクラーレのもとへと歩み戻っていく。

 誰もがその背中を目で追った。

 しかし笑う者はひとりもいなかった。


 ──ただ、胸の内で、同じ言葉を繰り返していた。

 ──スカッとした。

 


 なお、アニリィはその後、ヴァルトアから軽く叱責を受けたという。

「扉を蹴り開けるな。お前がやると壊れる、プリスカが真似をする」とのこと。



     ★ ★ ★



 その後──

「提出された論文および報告書には、盗用および改竄の疑いがある」

「研究倫理規定違反の可能性が認められます」

 王宮からエラール農業研究所への査問官派遣が決定されたのは、それから間もなくのことだった。

 そして、極秘調査と査問官による調査の結果として判明したのは──


 クラーレ・サルヴィリナによる研究は、当時から極めて高い信頼性を持ち、王宮のみならず他国の学術機関からも注目されていたという事実。

 その一方で、イアル・ラドム所長は当該研究について「くだらない」と報告書内で貶めていたこと。

 さらに、クラーレの退職についても「自己都合による辞職」として王宮に虚偽報告していたことが明るみに出た。



 査問報告書には、こう記されていた。


「……なお、前所長イアル・ラドムによる当該研究の評価記録には、主観的かつ不適切な表現が複数含まれており、倫理的問題が指摘されます」


 冷ややかに記されたその一文が、すべてを物語っていた。


 研究所は「学術的信頼性に重大な疑念あり」として、補助金対象から全額除外。

 加えて、近隣の畜産研究所との実質的な統廃合が決定された。

 イアル・ラドムの名は、その後二度と、公的報告書に現れることはなかった。




     ★ ★ ★




 あの騒動から、季節がひとつ巡った。

 キュリクスの郊外──新たに整備された試験農地では、地元の農民たちが並び、黙々と作業に励んでいる。


 その中心に立つのは、鍔の短い麦わら帽をかぶって袖をまくった若き女性文官──クラーレ・サルヴィリナ。


「この区画、先月から線虫が出てたのは確認済みです。耐性種の方、もう一列こっちに伸ばしてください」

「了解でーす!」


 農民たちに手際よく指示を飛ばすクラーレの隣には、ノートと水筒を手にしたトマファの姿。

 車椅子から蹴り落とされた彼は、しばらくはケガ治療のため衛生看護隊のお世話になっていたが、最近では肌の血色もよく、完癒に向かっているそうだ。そのため以前よりものびやかな笑みが浮かんでいる。


「クラーレさん、最近ほんとに楽しそうですね」

「まあ、そりゃあね。やっと“自分のための研究”ができてますから」

 クラーレは肩をすくめて少し照れたように笑った。その笑顔にもう過去の影はなかった。


 いま彼女が手がけているのは、キュリクス産小麦の高耐病性系統の確立と、地域還元型農政モデルの構築。提出した論文はすでに王都学会の予備審査を通過し、「極めて実用的かつ興味深い」と高く評価されていた。


 一方──王都農政局の一角。

 古びた記録室の棚を整理していた若手職員たちが、ふとした拍子に口を開く。


「イアルって、いたなあ……あの研究所の恥さらし」

「今? 東辺境の庁舎倉庫の書類庫管理係だってさ」

「マジ? 底辺官吏じゃん。あいつン家って子爵家じゃなかったっけ?」

「いや、ほら。辺境の領主館でバカやったじゃん。なんだっけ? あのノクシィ一派に目をつけられてた武官家」

「それ、キュリクスのヴィンターガルテン家じゃね?」

「うわ、あそこに喧嘩売ったのかよ」

「それが王宮で問題になって、親父さんがガッツリ詰められたらしい」

「で、“家の顔に泥を塗った”ってことで、勘当されたって噂だよ」


 その名は、いまや記録のなかだけに残された、忘れられた無能者のひとつとなっていた。



 ──そして、クラーレは。

 文官執務室の入り口に、小さな木札を掲げた。


《地域広域農業協同研究室》


 それは、新たな再出発の証。

 農民と行政と、そして研究者が一体となって築く、地に足のついた未来。

 クラーレは小さく息を吸い、見上げた青空に静かに微笑んだ。


「さて、そろそろ午後の調査。行きますよ、トマファ君。プリスカちゃん」


 誰に言うでもなくそうつぶやくと、足元の泥を確かめるように一歩踏み出した。

 その背筋は、真っすぐだった。


「わーい、ピクニックー!」

「ちょ、こらプリスカさん! そんな勢いで車椅子押さないでぇー!」




(とある新任女兵士、ネリスの日記)


入隊1か月と30日目


「おっはよー! 最近、朝晩は冷えるから気を付けてね! 特に夜更かし禁止だよ!」


 メリーナ小隊長はいつも通り元気だった。


「あ、そうそう! 明日、ボクねぇ、停職1日でお休みだから指揮官としてオーリキュラちゃん、頼んだよ! ――さて、始末書の続き書いてくるね、ばいびー」


 なにそれ?


 停職1日?

 始末書の続き?


 そんなこと、ぺらぺら話していい事なの?

 思わずオーリキュラさんを見ると苦笑いを浮かべて首をかしげていた。




 情報通でうわさ話好きのマルガリート訓練生が言うには……


 三日ほど前、メリーナ小隊長が夜中騒がしかったあの夜に靴ベラ片手に持って、街中のチンピラをやっつけて回ってたらしい。


「シーラ隊長がくれた新聞なんだけど、ここの欄に詳しく書いてあるよ!」


 そう言ってマルガリート訓練生が読み上げた内容は、まるで三文小説の英雄譚だった。


・黒のスポブラ姿の赤髪少女、靴ベラ持って“夜に駆け回る”


 もう見出しからして吟遊詩人かよ!

 日々の出来事を淡々と書くキュリクス日報はいつの間にゴシップ誌になったんだよ!


「まぁ新聞に書いてあることなんて話半分で信じればいいんだよ」


 マルガリートが社会のすべてが判ったかのように言ってこの話は終わり。




 入隊1か月と31日目


 宣言通り、メリーナ小隊長はお休み。

 だけど練兵所の壁の上に立ってる人、どう見てもメリーナ小隊長だった。

 威圧感半端なかった。


 訓練隊の効果測定の日。

 訓練の習熟度や仕上がり具合を確認するためのテスト日。


 短槍の連携戦、クイラ訓練生と二人でオーリキュラさんに辛勝した!

 指導古参兵の勝ち上がったチームは、今度訓練生同士で勝負。


 モリヤ・ポリーナ組にまさかの完敗だった。


 うそでしょ? 子どものチャンバラみたいな打ち込みしかしてこない二人の連携に後れを取ったって信じられなかった。すごく悔しかった。てかめっちゃ悔しいんだけど!


「ほらー、モリヤちゃんもポリーナちゃんもやればできるんだよ!」

「アニリィ様ありがとう!」

「ありがとー!」


 アニリィ様が二人にそんなこと言ってるのが聞こえてくるからもっと悔しい。

 モリヤとポリーナがめっちゃアニリィ様に懐いているのも悔しい。


 私がもう少し強かったら、クイラの足を引っ張らなかったのかな。




 その日の訓練終了後、めっちゃ走った。

 背の低い人は今日は走り込みしてなかったけど、高い人は今日も走り込んでた。

 しかもものすごく早くて追いつかない。どんどんと周回が広がっていく。

 誰なんだろ、本当に、あの人。


 悔しいから寝る。

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