16話 美湖の覚悟
帰宅した後も、宏斗に頭を撫でられた感触が残っていて、
思い出す度に顔が熱くなる。
“山野くんって⋯あんなことするの??
『よくがんばったな!』って私が無理して飲んでること気が付いてたってこと??”
頭の中でぐるぐると様々な感情が駆け巡る。
そしてやはり一つの決断にたどり着く。
溢れ出す『好き』をちゃんと本人に伝えよう⋯
牛乳という繋がりがなくても山野くんと一緒にいたい。
今までたくさん助けてくれたお礼もちゃんと伝えたい。
そしてきっと、初めて牛乳を飲んでくれたあの日から、
ずっと好きだったと⋯⋯
あることがふと頭をよぎる。
あれは中学生になって少し経った頃、クラスの女の子たちが宏斗に話しかけていた。
「山野くんって誕生日いつ?みんなでお祝いしようよ〜」
「あ〜⋯俺、4月生まれだから。もう終わったんだ。」
「え〜!!ざんね~ん。みんなでお祝いしたかったのに〜」
そう、宏斗の誕生日がまもなくやってくるのだ。
美湖はその日に想いを伝える覚悟を決めた。
小学1年生の頃からの9年分の想いを、感謝を、これからの願いを⋯
しっかりと、自分の口で。
もう、見てるだけの毎日は嫌だから⋯⋯




