第一章 美湖・宏斗小学生編 1話 始まりと出会い
「ほらー、起きなさーい!朝ごはんできてるわよー!!」
いつものように朝を迎え、家族の朝食の準備をする。
目玉焼きとウインナー、お味噌汁、昨夜の残りの筑前煮を食卓に並べ、お茶碗にご飯をよそうと、夫と娘がやってくる。
「お母さん、牛乳ある?」
娘が言うと夫も続けて
「あ、俺も牛乳飲みたい」
と言い、はいはいと言いながら牛乳を渡すのが毎日の日課だ。朝食がパンでもご飯でも関係なく牛乳を飲みたがるため、我が家の冷蔵庫には常に牛乳が入っている。
“牛乳好きはいくつになっても変わらないなあ⋯”
私の隣でゴクゴクと牛乳を飲む夫を見ながら、ふと懐かしく昔のことを思い出す。
〜美湖・小学生の記憶〜
◎出会い
桜の花びらが舞い散る4月。
余所行きのワンピースとピカピカのランドセルを身に着け、わくわくしながら私は小学校へ入学する。
友達はたくさんできるだろうか。
勉強はむずかしいかな。
先生は優しいといいな。
期待と不安が入り混じる中、それでも期待の方が大きくて、胸躍らせながら教室へと入る。
先生は優しそう。知ってる人も何人かいる。
これから6年間のワクワクとドキドキが詰まっていた。
けれど、翌日から私の学校生活は不安でいっぱいになる。
給食が始まったのだ。
私は給食の牛乳がどうしても苦手だった。
そもそも牛乳があまり得意ではないが、ご飯とお味噌汁に牛乳の組み合わせが本当に苦手だった。ごはんの日は、給食の時間になると泣きたくなるほど辛かった。「給食は、残さず全部食べましょう」という先生の言葉が私を更に追い詰める。
しばらく牛乳とにらめっこをしていたら、隣の席の男の子がこっそり瓶を入れ替えて飲んでくれた。彼の名前は山野宏斗くん。
私は驚いて彼を見ると、彼は秘密だよと言わんばかりに、人差し指を唇にあてシーとする。
正義の味方?スーパーヒーロー?
いや、まさに白馬に乗った王子様のようだった。
その日から、私には彼が王子様に見えた。






