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地獄と清流

完全従魔契約は主に殺意を向ける事さえ許しません。

向けたら世界に幸せフィルターが掛かります。

そういう設定です。

妾は6度目の覚醒をする。洞窟の外からは光が差し込み、もう朝だと告げている。

この地獄のような夜を生きて耐え抜いた妾を褒めてほしい。


それは昨日の夜まで遡る。


主ことミキヤが妾を手で呼ぶ。

ふと頭に夜伽という言葉が浮かぶ。

とうとう来たか、と妾も心を決めてミキヤに近づく。


妾も長く生きたが実は初めてだ。

生まれ持った力が強く、群れで育てられた時は姫として育った。

大事に育てられた妾に無体を働くものもおらず、妾は順調に育った。やがてその強さ故に誰も近づけなくなった。

おい、行き遅れといったお前。許さんぞ。


そんな妾もとうとう屈服し服従する。

相手は愛い主。多少物ぐさではあるが、圧倒的強さと時折見せる無邪気な笑みを見ると心臓が張り裂けそうになる。

ミキヤのひらひらと妾を呼ぶ動作すら愛おしい。

完全従魔契約のせいもあるだろうが、妾に契約を結ばせる強者を愛するのもまた、魔獣としての本能。


妾はせめて初夜くらい優しくとミキヤにねだる。


「あの……優しくしてほしいのじゃ……」


「優しくって言われてもなあ」


そういうミキヤの目は凄く優しく見えた。

妾は人の姿で近寄ろうと思うが、ふと思う。


ミキヤは本当に人の姿を望むだろうか。

夜伽と思っているのは自分だけだろうか。

もしかして……と一度狼の本来の自分で近づく。


ミキヤはにやりと先ほどよりも嬉しそうな顔で妾を見る。

ああ。そうか。夜伽ではなかったか。


落胆と安心が半分に同居した心でミキヤの横に伏せる。

するとミキヤが手で妾の頭を撫でる。

妾はかなり緊張しながら来る快感の濁流に備える。


「ふぁああああああああ」


妾を襲ったのは全然違う衝撃だった。

それは愛だった。膨大な量の幸せという感情が体全体を駆け巡る。

小さき頃に母の近くで眠っていた頃のような安心感が満ちていく。


あまりの高揚感に変な声が出てしまった。

妾はミキヤを見る。

するとミキヤはどうした?とでも言うようなキョトンとした顔で妾を撫でる。


撫でられる度にこみ上げてくる、愛されているという感情を持て余し、それを心に縫い留めるために目をつむる。


幸せじゃ。


愛い主に頭を撫でられて寝かしつけられる事がこんなに幸せだったなんて、妾は知らなかった。

やがて本当に意識が闇に落ちる。

格別の喜びを噛みしめながら。


妾は一度目の覚醒を迎える。


体がビクリと跳ねる。比喩ではなく本当に跳ねる。

ミキヤの手が妾の尻尾を掴んでいた。掴みながら尻尾の付け根をもみほぐしておった。


あまりの快楽に視界が明滅する。


ミキヤを見ると完全に寝ていた。


「ミツ~」


小さく寝言で妾の事を呼んでいる。その事実にどうしようもなく下腹が熱くなる。

そんな幸せを噛みしめる間もなく、ミキヤは妾の尻尾を弄ぶ。


寝ているので優しさも何もない暴力的な触り方。


下腹の熱のせいか体中がほてる。


もうだめなのじゃ。


「いぐぐぐぐぐぐぐぐぐ」


妾は果てる。

全身に力が入らず思い通りに動かない。ただただ、快感に体を震わせる事しかできなかった。


妾はやめてとミキヤに手のひらを押し当てる。

それのおかげか、ミキヤの手は一度尻尾から離れる。


妾は荒い息を整える。これでようやく眠れそうじゃ。


だが、現実は甘くなかった。


離れたかと思ったミキヤの手は無遠慮に妾の尻尾を鷲掴みにして手でこねくり回す。


「あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」


妾は気を失った。


そんな事が4度あり、5度目の覚醒。もう快楽が体を支配し、ただただ震えた声を出す獣に成り下がった妾。


寝ているのか起きているのか分からない地獄のような夜。夜なのに世界は白く見えるのは、もう妾は長くないのかもしれぬ。


何度も体をこねくり回されて、脱力した妾は、これでも最後の一線は必死に守っていた。


下腹部に力を込めて必死に我慢する。もうすぐ朝。このままではミキヤを妾ので濡らしてしまう。


しかし無常にも寝ているミキヤは全く容赦がなかった。


もう何度も果てて敏感になっている下腹部に、ミキヤの今まで下になっていた手が押し当てられる。


「お゛お゛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」


妾は恥も外聞もなく声を上げる。

今までの比ではない快楽に押し流されるように。


せき止めていたものも決壊し、温もりが地面に広がる。


そして意識も落ちた。



そしてやっと来た朝。


生きている。ミキヤ頼む、起きて。


そう切に願う妾の想いが通じたのか、ミキヤの目が開く。そして状況を確認する。


「うわ、ミツ、オネショしてるじゃん。何歳よ」


その言葉に殺意を覚える。昨日の夜は愛に震えていたはずなのに、今は明確に殺意を覚える。


縊り殺してもいいのではないか。本気でそう思った。


だが、ミキヤを見るとその殺意は一瞬で消え去った。


言葉ではこんな言いぐさではあるが、目が優しく妾を想っているのが伝わってくる。妾の恥を気にしないでいいよと、言っているような優しい想いが妾の心をそっと包み込む。


「す、すまんのじゃ」


妾は自分でもびっくりする程、素直に謝罪を口に出す。


「しょーがないなー。これズボン洗わなきゃじゃん。ほらミツ、いくよ」


そう言って、渋々川へ向かうミキヤ。


そんな彼の言動が妾への気遣いに聞こえた。


川につくとミキヤは躊躇なく全裸になる。


当然下腹部も見えるわけで……。いや。見なかったことにしておこう。


妾は熱くなった顔を川につけて冷ます。


ミキヤはパパっと衣服を洗い絞る。それを岩場に置き、自分の体を洗う。


妾はそれを眺める。


白い肢体は細いが程よく筋肉がついていて芸術のように美しかった。背中も程よく骨と筋肉が存在を主張しながらもキュッと引き締まっている。


ミキヤは自分の体を洗い終わると、こちらを見る。


「ミツ。おいで」


主に来いと少し強めに呼ばれただけで抗い難い喜びが沸き起こる。プライドは行くなと言っているが、もう本能が前進する。


そしてミキヤに腕を掴まれて岩場の間に置かれる。


「あ、あの……主……ちょ……」


主は情け容赦なく妾の体を擦り出す。あの手で。


体は強烈な火照りで水の冷たさを強く感じる。数秒置きに電撃が走り涎が垂れる。


ミキヤは容赦なく体を洗う。顔から腹。そして……。


妾は必死に懇願する。


「ミキヤ。そこはダメじゃ。そこだけはダメなのじゃ。今はダメなのじゃ!」


何度も何度も呼びかけるも、ミキヤは全く聞く耳を持たず。そして妾の下腹部を力強く洗う。


水の中なので無音で解放感だけが体を迸る。


「ぉっぉ゛っぉ゛」


「え? ミツ?」


恥ずかしいやら気持ちいいんだか、もうよく分からなくなってしまった。


妾はミキヤの目も見れずひたすら泣いた。涙は川が流していった。



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