表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/14

フラーの家と職探し③

そうは言っても、エビータをはじめその他の娼婦たちから、「娼婦にはなるな」と強く説得されれば、自身のこれからの成長を考えればここを出ていかねばならない。フラーは胸にもやもやするものがありはしたが、(あきら)めて家と仕事を探すことを決意した。


エビータと家探しに行く日の当日、フラーは食堂でゆっくり昼食を取ってからエビータの私室へと向かった。エビータはその前夜に一時滞在(※短時間滞在)のお客の相手をしていたため、昼時まで睡眠を取っていたのだ。


エビータは寝起きが良く、フラーが彼女の部屋を訪れると、既に着替えやら化粧やらを済ませていた。フラーは彼女の髪だけ結ってあげることにした。エビータはそれが当然なのか、すでに鏡台の前に座っていたので、フラーはそのまま彼女の後ろに回り込んだ。


エビータの髪にブラシを入れていく。フラーの髪とは違い、毎日髪を洗ってヘアクリームなどで手入れしているエビータの髪は、非常に(つや)がありなめらかだ。フラーはエビータの髪に(くし)を通しながら、ふと思った。


(ボクもここを出たら、もう男の子の格好なんかしなくてもいいんだから、ドレスやスカートを着たりできるかな?それから髪を伸ばして・・・。あ、ドレスの前に髪を伸ばす方が先かな。こんな髪じゃあ、ドレスもスカートも似合わないもんなぁ。)


「エビータ、髪留めはどうする?」


「ピンだけでいいよ。」


「髪型は?」


「シンプルにまとめてくれれば、他はあんたに任せるよ。」


「オッケー。」


(エビータぐらいの髪の長さになるにはどれぐらいかかるのかな?あ、でも髪を伸ばすならエビータたちみたいに毎日お風呂に入った方がいいのかな?あれ?そうするとお風呂付きの家を借りなくちゃいけないな。うーん?お風呂ってみんな(※娼館外の一般の人たち)どうしてるのかな?)


「エビータ。」


「うん?」


「ボク、ここを出たら髪を伸ばして、女の子の格好をするんだ。」


「ああ。そりゃいいねぇ。」


「でね、ボク、考えたんだけど。」


フラーは一通り(くし)を通したエビータの髪に、オイルを軽く馴染(なじ)ませていく。


「なんだい?」


「エビータたちの部屋ってお風呂ないじゃないか。客室にはあるけど。」


そこまで告げるて、エビータはようやく察した。


「お風呂ねぇ・・・。普通のアパートは付いていないよ。」


「えっ!?」


「ちょっとお金を出せばお風呂付きのアパートもあるにはあるけど・・・。あんたが今後、自分の力だけでやっていくなら、かなり稼がないと厳しいよ。」


「そうなの?じゃ、普通の人ってお風呂どうしてるの?」


「大衆浴場に行ってるねぇ。」


「大衆浴場・・・。」


「ま、でも、最初のうちはあたしが援助してやるって言っただろ?風呂付きの家を借りてもいいよ。」


「ほんと!?」


「ああ。」


「ありがとう!エビータ!」


フラーはエビータの背中に飛び付いた。


「フラー、嬉しいのは分かるけど、せっかくセットした髪型がくずれる!」


「あ、ごめん、すぐ直すよ。」


フラーはすぐさまエビータの背中から飛び退()くと、バツが悪そうに自分のせいで乱れたエビータの髪を結い直した。


「・・・エビータ、ボク、家って借りたことないから、いろいろ教えてね。」


フラーがそう言えば、だがしかしエビータはフラーの予想外のことを述べた。


「あたしも知らないよ。奴隷娼婦が知るわけないじゃないか。奴隷になる前は実家暮らしの少女だったし。」


「えぇっ!?」


驚くフラー。


「じゃ、今日、どうするの?」


フラーは心配になっておずおずとエビータに(たず)ねた。


「助っ人を呼んであるから心配いらないよ。」


「助っ人?」

【作者より】



【更新履歴】


2024. 5. 5 Sun. 20:39 再投稿

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ