【第二章・第四十四話】胸元に煌めくそれは
どこを見渡しても、煌びやかな装飾ばかり。
気が遠くなるほどの眩さに囲まれたその場所に、僕は立っていた。
アストノズヴォルド皇国にて、広大な敷地を誇る建物。華美でありながらも、決して派手なわけではない。群青と純白で彩られた、蒼白の城。
その皇城の中でもより一段と輝きを放つ部屋が、大ホールだ。
社交界シーズンになると、各国から貴族が集まり、毎日のように舞踏会が開かれる。つまり、平民であり、そのうえ孤児でもある僕とはなんの縁もないはずの場所だった。
「コロクルム・ドクトゥス殿。今日より貴殿を、我__ドクトリナ・プルデンスが率いる、ラピスライト・アストノズヴォルド殿下直属の皇国ウィンクルム医療騎士団の団員に任命する」
そんな人生が変わったのは、明らかにあの日だったのだろう。
本気で夢を叶えるために奮闘した甲斐あってか、僕は晴れて皇城の門をくぐり抜けられるほどの位に就くことができた。
未だに緊張のほぐれない僕を見て、プルデンス様はどこか苦笑しながらも、言葉を続ける。
「貴殿の持つ類稀なる才能は、民を救済するに相応しい。これからも、どうかその力で騎士団長の我と共に、平和と愛の調和した世界を創りあげる手助けをしてほしい」
震える声で、事前に準備していた台詞を慎重に紡ぎ出す。
「ありがたきお言葉、心より感謝申し上げます。団長より頂いたこの心臓、朽ち果てるまで騎士道を全うし、すべての民が平和と愛で溢れる世界を共に築きあげることを、誓います」
先日に行われた、騎士団に入るために選抜試験。そして、プロデンス様の率いる騎士団に合格したのは、僕だけだった。
正直、試験自体は基礎的なものと、緊急時の対応を見定めるものだった。
通知が来るまでは生きた心地がしなかったが……合格の文字を見た瞬間に震えた心臓の鼓動は一生忘れないだろう。
「では、皇国ウィンクルム医療騎士団団員任命式を記念して、コロクルム・ドクトゥス殿へ、騎士としての名誉を称える外套と、団員より代々伝わる白百合のブローチをここに贈呈する」
その2つの騎士である証を見て、だんだんと実感が湧いてきた。素人目から見ても上質なものだと分かるそれは、大ホールの照明を受けて、さらに光り輝いている。
「厚く御礼申し上げます、団長」
辺りに視線を彷徨わせると、遠目に見慣れた彼女の姿が見えた。
そっと胸を抑えながら、そこがじわじわと温もりを帯びていることを実感する。
__ああ。やはり、彼女は僕の……。
どこまでも煌めく空間の中、とびきり素敵な笑顔を浮かべている彼女に、伝えても伝えきれないほどの愛を贈りたくなった。




