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あいのものがたり。  作者: 羽結
【第二章】
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【第二章・第四十二話】邂逅と、後悔と



「プ……プルデンス様……!」


「おや、そんなに驚かなくてもいいじゃないか。先程の燦然と輝く瞳……随分と興味深そうに花を見ていたね。植物好き同士、仲良くしたいものだ」


「そんな、仲良くなんて……僕には恐れ多いです」



 ___ドクトリナ・プルデンス。別名・『白百合の君』。


 数年前に起きた戦争にて、あらゆる場所へ復旧の手配を行い、自らも戦地に赴いて怪我人に治療を施すその清らかな優しさから、その名が付いたと言われている。


 国内外にもその名を轟かせ、医療だけに関わらず、様々な場面で活躍している。プルデンス様だけではなく、フェリキタス様、フィエービリス様も、この国の誇りのような方たちだ。



「君は将来、植物に関する職業に就くのかい? あれほど熱心に花を見て考え込む人は、なかなかいないと思うよ。夢中になれるものがあるのは良いことだ」


「……どう、でしょうね。収入が安定した職業ではないですし、僕がプルデンス様のような立派な植物学者になれるとは思いません」


「ふむ……つまり、将来に対する漠然とした不安、といったところかな。君の言う通り、確かに生半可な覚悟で生きていけるような甘い世界ではないね」



 軽く息をこぼすプルデンス様は、どこか困ったような憂いを帯びた瞳をしている。もしかすると、今のように有名になる前は、なにかこの方なりの苦難でもあったのだろうか。


 ……それもそうか。今まで、なんの翳りもなく生きてきた人間なんていない。僕も、シスター・アンゲルスも、シスター・グロリアも。僕に執拗に構い続ける、あの貴族のような少女だって、人はなにかしらを抱えているのものだ。


 ___なら、あのとき僕は、独断で彼女を恵まれた人間と決めつけるべきではなかったのではないだろうか。


 あの人にも、あの人なりの悩みがあったはずだ。それこそ、恵まれている人間には、恵まれている者なりの苦悩が。僕の軽率な判断で彼女をなんの憂いもない人だと断じるのは、絶対にやってはいけない言動だっただろうに。


 それを、僕は嫉妬や羨望という感情を向けてしまった。今思えば、本当に恥ずべき行為をしたものだ。今度会ったときは、きちんと謝ろう。そう僕が心に決めた瞬間、プルデンス様が愉快そうな声をこぼす。



「ここからの言葉は僕の独り言なんだけど……もしかしたら、傍で誰かが聞き耳を立てていても気づかないかもしれないなぁ」



 悪戯っぽい笑みを浮かべたプルデンス様の瞳は、怪しげな光を纏っていた。

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