表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/13

悪役令嬢の試練の開始

 ごきげんよう。ミシェルです。

 学園の最終学年の始まりと共に、わたくしの悪役令嬢の試練が開始しました。


 聖女はふわふわピンクブロンドに緑色の瞳が輝くぱっちりおめめ。

 聖女伝承の通りの庇護欲をそそる、守られ美少女でした。


 現在、3か月が過ぎたところですが、聖女は特定の殿方に想いを寄せているような気配はありません。伝承では、学園を卒業するその日まですべての殿方を侍らせていた聖女もいらっしゃるようです。


 当代聖女は誰か一人を選んで心を通わせてくれると良いのですが。

 彼女のためにも。

 できれば、ベネディクト以外で……



 悪役令嬢として聖女の配偶者探しを見守るというわたくしの試練は、順調です。


 わたくしは聖女伝承において、第3期と呼べる時期のダジマットの姫です。


 第1期、神は異世界の記憶を持つ存在を人族の国に遣わしました。人族が「聖女」と呼んだので、魔族もそれに従っています。その頃のダジマットの姫は、聖女から「魔王の娘」、「魔女」、「ラスボス」と呼ばれた存在でした。

 

 第2期、聖女が魔族の国に現れるようになりました。その頃を境にダジマットの姫は聖女から「悪役令嬢」と呼ばれているようです。


 第3期、「悪役令嬢」は、聖女と直接的な接触をしないようになりました。「見守る」だけに留めることが優れた対処法だとみなされています。


 悪役令嬢の具体的な立ち位置は、その時々の聖女のホスト国の王がお決めになった方針に従います。


 わたくしの場合は、王太子の婚約者の公爵令嬢です。聖女と直接的な接触を避けつつも、聖女の配偶者選びが恙なく進むように裏方にて邁進するようにとの指示を受けています。

 他の令息の婚約者たちも似たような命を受けたかもしれません。



 そういう理由で、わたくしは、裏方として、伝承に記載された「イベント」を設営するのに奔走しています。


 この3か月で最も大変だったのは、ネコちゃんを借りてきて木の上にのせることでしたわね。


 聖女は木の上のネコちゃんを助けるために学園中を探し回るとの伝承を読んだ時には、「何かの間違いでは?」と疑ったものです。


 この世界にはネコという動物はおりません。


 だから、探し回ってもいるわけがないのですが、聖女はネコがいなかったことに長く固執する傾向にあるようですので、伝承に記された情報を参考に、人語を話し出す前のケットシーの子供をお借りして、低木の上に乗せました。


 聖女は木登りが得意でいらして、圧巻でしたわ。


 現在、作家志望の生徒の助力で、「聖女対策完全ガイド」を編纂中ですの。


 こういう信じがたいイベントには、特別に注記を書いておかねばなりませんね。

 「ネコはケットシーの子供で代用可能」

 「聖女は木登り名人」とね。



 今日は、悪役令嬢が聖女を噴水に落とすというイベントのために、前年から前もって建造しておいた噴水の調整を行いました。

 噴水建造時に浄化機能を付けたのですが、どうやら聖女は浄化機能がついている設備の近くに行きたがらないみたいなのです。

 これはどの伝承にも記載されていなかった新発見です!

 それで試しに浄化機能を停止してみることにいたしました。

 

 この噴水イベントも、万全に準備もしていたつもりだったのですけれど、まだまだでしたわ。


 ずぶ濡れの聖女のお召しかえのドレスは、助けた花婿候補の瞳の色という指定がつい先日判明しましたの。


 慌てましたわ。

 なんとかちゃんと5色準備できた時の達成感は、格別でしたわ!

 なんでも成せば成るものですわね!


 正直申し上げまして、噴水に突き落とされて喜ぶなんて、ちょっと変態的ですわよね?

 理解に苦しむところですが、これを実行しないと、「なんで悪役令嬢の仕事をしないのよ!」っとお叱りを受けることが多いようです。


 基本的に裏方に徹しているわたくしでございますが、名指しで指名された伝承が多い重要任務に関しては、表に出ることになっておりますの。



 わたくしとその他の生徒たちで協力して、イベントロケーションの設営にいそしんでいる間は、聖女と花婿候補たちに悟られないように、彼らを「生徒会室」に押し込め、護衛という名の見張りを立たせて閉じ込めております。


 ベネディクトだけは取り逃がすことが多いらしく、わたくしが回収して、生徒会室へ誘導することもありますのよ。

 校内を一緒に歩けるなんて役得ですわね。


 伝承の通り、生徒会メンバーは悪役令嬢がその部屋に入るのを嫌がるので、ベネディクトだけポイっと中に入れて速やかに立ち去るのが誰よりも得意ですの。

 ほほほ。


 「帰る時にちゃんと迎えに来るから、しばらくそこでおとなしくしていてね」っと言うと、本当に黙って読書しながら待っていてくれますのよ。


 かわいい義弟ですわ。


 ふふふ。


 この「生徒会」というのも、それまでカーディフ王立学院には存在しなかった概念です。 伝承によると学生が主体となって、お祭りを企画するのですって。

 発足からまだ3年目なので、まだ文化祭と卒業パーティーしかありませんけれどもね。


 あら?

 ベネディクトがこちらに向かって歩いてきましたわ。

 今日も麗しいわ。


 少し怒ったような表情も、シャープなお顔が引き立って素敵だわ。


 わたくしに用事があるようですので、ちょっと中座させていただきますわね。

 ごきげんよう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ