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悪役令嬢、修道院を下見する

 ごきげんよう。ミシェルです。

 お父様とお母様のお陰で、スノードニアの休暇は、最高の思い出作りになっています。


 ベネディクトは、事情を知らないハズなのに、恐ろしいぐらいに甘やかしてくれます。実は全てお見通しなのでしょうか?


 旅路のベネディクトについて語り始めると終わりがないので、今回は我慢しますわね。



 ベネディクトはその美しい外見と次期公爵という将来性、更に婚約者がいないことから、学園、夜会、茶会など、人前に出れば、必ず淑女たちに囲まれるので、少々人疲れしているというか、女性嫌いの気があります。


 わたくしもベネディクトに引き寄せられる淑女たちの気持ちはわかります。

 見ているだけでうっとりと酔いが回りそうな麗しさですものね。


 わたくしも悪役令嬢の試練のために王子と婚約していなければ、きっとベネディクトを囲む淑女の一人だったでしょう。


 カーディフ王が聖女の配偶者候補として、作為的に女性嫌いの「氷の貴公子」を作り出すために、婚約者を持つことを許していないからこういうことになっています。


 王はこの他にも宰相、騎士団長、魔術師団長に命じて、「インテリ眼鏡」、「脳筋騎士」、「チャラ魔術師」を手配したと聞いています。


 残念ながら、魔術師団長は昨年一家で亡命してしまいましたので、チャラ魔術師は貴族家の令息ではなく、同年代で最も優秀な魔術師に変わりました。


 聖女の配偶者候補として自分の子供を生贄に出すような真似をしたくない家があっても責めることはできないでしょう。


 それに性格の設定などは、令息本人たちの預かり知らぬことですので、実際にそのように育っているとは言い切れませんが、そのような雰囲気がなくもないというレベルで伝承が再現されているかと思われます。


 そういう観点から見ると、王の実子である「俺様王子」が最もイメージからかけ離れているかもしれません。

 わたくしの婚約者は、常識的で淡白な王子ですわ。



 ベネディクトが女性から触れられることを嫌うことを知っているわたくしは、これまで彼に触れようとしたことはありませんでした。

 お父様が哀れなわたくしのために寛大なご指示をなさったのかもしれませんが、わたくしがベネディクトにベタベタすることを許してくれるのは、恐らくこの3週間だけでしょう。

 存分に甘えていく所存です。



 休暇先は、1年後にわたくしが収監される予定のスノードニア修道院の近隣につくられたヴィラの一つでした。


 スノードニア修道院は、戒律の厳しい修道院として有名ですが、実態は普通の牢に入れられない「高貴な」政治犯・思想家の収監所です。

 このため、この修道院の周りには、高位貴族が面会に来たり、囚人本人がのんびり暮らせるヴィラがあります。


 ここでは家畜も放し飼いですが、囚人も放し飼いなのです。


 繁華な場所が好きな方には侘しい田舎でしょうけれど、わたくしは好印象を持ちました。


 修道院は、図書なども充実していますし、何より政治犯や思想家の皆様がとても個性的で楽しそうでしたわ。生存確認がてら朝からお祈りにやってきて、おしゃべりしながら朝茶を飲んで、ひと心地ついたら自分のヴィラに帰る生活で、スローライフと呼ぶそうです。


 院内の戒律は確かに厳しいのでしょうけれども、修道院の中にいる時間が短いので、戒律を破る機会もあまりないとのこと。


 見に来てよかったです。


 

 それから、生家ダジマットの実のお兄様が会いに来てくれました。


 瞳の色がわたくしと同じなのですぐにわかりました。

 修道院の人たちに怪しまれるとよくないので、お初にお目にかかりますのに、立ち話しか出来ませんでした。


 滞在しているヴィラが気に入ったのなら、わたくしが収監されるまでにはヴィラを買い取っておいてくださるそうです。1年ほどの滞在期間を経てダジマットに引き取ってくださるとのこと。


 わたくし何なら一生このヴィラでも良いのですが、生みの両親とも会ってみたいですし、ダジマットにも行ってみたいので、お言葉に甘えることにしました。



 過去の聖女の中には、悪役令嬢の国外追放や極刑を望む方もいらっしゃいました。

 わたくしの修道院行きは王との密約ですが、王子や側近の方々が王の許可なく別の刑を執行してしまうこともあるようです。


 お兄様はそのような状況にも備えてくださいました。


 国外追放なら城を出た時点で引き取ってくださるそうです。

 極刑なら留置所から連れ帰ってくれるとのこと。


 いずれの場合でも、聖女の望みが叶ったように装いつつも、ダジマットの姫であるわたくしが傷つくことのないように十全に手配くださるようです。


 最悪のケースとして、もし、聖女が悪役令嬢以外にも害意を向けるようであれば、わたくしが捕縛して神聖国の聖女専用牢に転送できるように転送先の魔法紋を教えて下さいました。


 これまで一度も連絡を取ったことのなかった家族が、わたくしのことを忘れずにいてくれたことを心から嬉しく思いました。

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