私と口の悪い冒険者、さっちゃん パート1
「私とさっちゃん」シリーズです。他の作品にも遊びに来てくれると嬉しいです。
「ファイアーボール」
浮かび上がった数十個の炎がオークの群れに殺到し、8体いたオークが全滅しました。
「凄いわねぇアンタは気は弱いくせに、魔法の威力はケタ違いだわ。でも火魔法はやめてよね、素材がダメになって、値段が下がるから」
さっちゃんはぷりぷりしながら私に言いました。
「ご、ごめんなさい」
「別にいいわよ、今のは不意打ちだったから危なかったし」
私とさっちゃんは冒険者です。
二人でパーティーを組んでいます。
私は魔法使い、さっちゃんは格闘家兼剣士で凄く強い、頼りになる仲間なのです。
でも、ちょっと困ったことがあるんです。
タイトルでもわかると思いますが…
さっちゃんは、とぉーっても口が悪いのです。
ゴブリンの群れが現れました。
「今度はあたしがやるわ、アンタは補助して」
さっちゃんがやる気満々です。
「う、うん、わかった」
さっちゃんはゴブリンの群れ突っ込んでいきました。
「てめぇーらいい気になってゲヒゲヒ言ってんじゃねー。ガタガタ騒ぐな、ぶっ殺すぞドブネズミがぁ、私がボコボコにしばいてやる覚悟しておけ」
罵声を浴びせながら殴るわ蹴るわ大暴れです。
「さっちゃんどうして剣使わないんだろう」
私が不思議に思いながらも、次々にゴブリンを倒していくさっちゃんです。
「うりゃぁ死ねぇきたねーツラしやがってテメーらなんぞ剣を使うほどでもねーわ」
「剣使ったほうが楽だと思うんだけどなぁ」
「ほれほれ、よえーやつにかぎって群れやがって、テメーらなんぞ100匹いようがかんけーねーわ」
「しゃべっても言葉わからないと思うんだけどなぁ」
私はごくごく当たり前のことを呟いていました。
「こんなもんかな」
50匹以上いたゴブリンは、さっちゃんに全滅させられました。
「クリーン」
「ありがと」
返り血で汚くなったらさっちゃんを魔法で綺麗にしてあげました。
それからまた次々と魔物を倒し大量の獲物を私のアイテムボックスに入れました。
「便利ねーそのアイテムボックス」
アイテムボックスがあれば大量に運べるので非常に楽なのです。
「さ、ギルドに帰りましょ」
パーティー申請の時、リーダーは私ということになっているのですが、私は1度もリーダーらしいことをした事はありません。
さっちゃんがすべて仕切っています。
「別にさっちゃんがリーダーでもいいと思うんだけどなぁ」
しみじみ思う私でした。
でもさっちゃんはとぉーっても口が悪いので、すぐに揉めてしまいます。
だから私がリーダーになるのは仕方がないのです。
「今回はオーク退治、ゴブリン退治、マッドウルフ退治。3つも依頼達成しちゃったわね」
さっちゃんがそう言うと…
「私薬草も取ってきた」
私がすごすごと言いました。
「なら四つね」
結果に満足したさっちゃんでした。
「大量ぉ〜大量ぉ〜金貨ザクザクーヒュゥ」
さっちゃんはご機嫌で謎の歌を歌いながらブンブン手を振って歩いて行きました。
ーーーー
冒険者ギルドの換金所に到着しました。
「換金願いします」
こういう時は私が話をします。
私がアイテムボックスから大量の獲物を出しました。
「嬢ちゃん達はいつもすごいなぁ、良く稼ぐな」
大量の獲物に驚いた換金所のおじさんが言いました。
そうなのです、私たちは冒険者でもすごくお金持ちなのです。
「嬢ちゃんの獲物は、いつも状態がいいからなぁこれからも頼むぞ」
「はい」
私が気が弱そうに返事をして、換金所後にしました。
「今日はもういいわね宿に帰るわよ」
さっちゃんがそう言って、私達は宿泊している宿に帰って行きました。
ーーある日の冒険者ギルド
「いい依頼ないわねぇ」さっちゃんがぼやいています。
私たちは今、冒険者ギルドで依頼を探してしているのです。
冒険者は、普通は冒険者ギルドで依頼を受注して、依頼を達成します。
そしてギルドに戻って、獲物や依頼者の依頼達成証明書などを提出し、受理されて報酬が得られるのです。
そうやって依頼を探していると…
からん♪
ギルドについてるドアのベルが鳴りました。
このベルはギルドに誰が入って来たとすぐわかるように設置しています。
「シケたギルドだな」
いかにも柄の悪そうな5人組の男たちが入ってきました。
おそらく遠くから来た初めての人達でしょう。
私たちはそれを無視して依頼を探し続けていました。
すると…
「よぉ嬢ちゃん達、俺のパーティーに入らないか」
ーテンプレがやってきましたー
「あ、すみませんもう私たちパーティー組んでるので」
こういう時は私が相手をします。
「嬢ちゃん達2人じゃ危ないだろ、俺たちが守ってやる」
そうは言っいますが、鼻の下を伸ばしてニタニタ笑いながら言っているので、魂胆は丸わかりです。
「いえこれでも大丈夫です、これでも結構長くやってるので」
男たちはだんだんイライラしてきたのか、口調が荒くなってきました。
「危ないから守ってやるって言ってるだろうが」
「大丈夫です」
全く相手にしてなさそうな私たちの態度に腹が立ってきたのか、結構きつめに言いました。
「そっちのちっこい女の子なんて特に危ないだろ」
そのちっこい女の子が一番危ないんだけどね。男たちの方が。
「あ、その子には手を出さないでくださいね」
男たちは私がさっちゃんを守っているものだと勘違いしてるようでした。
「お前魔法使いだろ、その子を守れるとは思えんけどな、がはは」
いや君たちを守ってるのですけどね。
「俺達はこれでもCランクなんだ」
「だから大丈夫だから邪魔しないでください」
さすがの私も少し腹が立ってきて、キツめに言いました。
「お前生意気言ってるんじゃないぞいい加減」
男たちはついに怒鳴りだしました。
すると、さっちゃんが、すっと男たちの前に出てきました。
男たちはついに来る気になったと思ったのか…
「嬢ちゃんは物わかりが良いなぁ」
(あああまずい)
私の心の声が響きます。
さっちゃんは黙っています。
「俺たちのパーティーに入ったらいいことになるぜ」
さらに男たちはニタニタしだしました。
「そういろいろ、とな」
(ああやばい)
「言いたいことはそれだけか」
さっちゃんが珍しく静かな声で話し出しました。
「あ〜」
男たちはまだ状況がよくわかってないようでした。
「だから言いたいことはそれだけかって言ってんの」
男たちはちょっとビックリした表情になりました。
「な、お前も俺たちに逆らうのか」
さっちゃんはほどほど呆れたような顔をしました。
「はー言葉がわからねーのか」
「何!」
「だ、か、ら、言いたいことはそれだけだって言ってんの」
男たちは次々に言い出しました。
「なんか偉そうな奴だな」
「もうやっちまおうぜ」
「こんなガキ大したことないのになぁ」
「あーいろいろ気持ちいいことしようぜ」
「そうだな」
「いろいろと、な」
(あああヤバい)
ついにさっちゃんがブチ切れました。
「てめえらさっきからガタガタ抜かしやがって、テメーらが考えてることくらいわかるわこのエロ野郎が、てめぇらの魂胆丸見えなんだよ馬鹿野郎」
「んな」
男たちはさっちゃんのあまりの変貌ぶりに驚いてました。
「な、なんだ俺たち喧嘩売ってんのか」
「だと言ったら」
「はっお前なんか俺たちが相手になるわけあるか」
男たちは気づいてませんが、この時他のギルドの職員と冒険者の人たちは、これから起こる事態がわかっているのでその舞台を準備しました。
「てめーらなんかたいしたことない」
「ほぉ言ってくれるぜ」
「半殺しになっても文句言うなよ」
(あああダメだぁぁ)
「がははははは笑わせてくれるぜお前に半殺しなんてできるわけねーだろ」
男たちは笑いながらそういいました。
「だ、か、ら、半殺しになっても文句言うなよ」
心底呆れたようにさっちゃんが言い出しました。
「ほう、そこまで言うならやってみな」
(終わった)
ーさっちゃんはやると言ったら本当にやる。例外はないー
ばん、ガン、ゴキン!
「ぎゃあ」
「ぐえ」
ドガが、ばしゅ、ズカっ
「分かったもうやめてくれ」
でもさっちゃんは全員半殺しにするまでやめません。
っが、ばっ、ガン、ドガガガ
「やめてください」
さっちゃんは黙って殴り続けます。
がが、ドガ、バッ
「や、やめ」
ずがががが、どどど、バギ
男たちは全員倒れ伏しました。
「…やめて…くれって…いった…のに」
男が息も絶え絶えに言いました。
「半殺しになってもいいっててめーらが言ったんだろうが」
さっちゃんが何事もなかったようにすました顔で言いました。
そしてさっちゃんは腰に手を当てて、ビシッと言いました。
「言った事は責任を持って絶対守る。それが冒険者だ。分かったか!」
みんなから歓声があがります。
するとハンターギルドの受付嬢さんが来ました。
「あなたたちがどこのパーティーか知らないけど、この女の子たちはAランクよ」
「…マジか…」
バタン!
そう、これはいつものこと、ここでの日常でした。
(あぁ私、出番が少なかったな)
おわり
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
シリーズ第3弾「私と口の悪い冒険者、さっちゃん パート3」私とさっちゃんがAランク冒険者になった経緯が明らかになります。
誤字報告ありがとうございました。