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「五回も無視するなんて、悪い子ねぇぇぇ。ここから先は何が起ころうとも、どうかご自身の責任で――」










 翌日。昨日の事件が嘘のように、穏やかな朝を迎える。

 疲れ果てて寝てしまったれど、あれだけの出来事だったんだ。一連の事件には早乙女恋治はもちろんのこと、一家揃って根深く闇に染まっている。

 ヤクザに任せてしまったが、やはり警察に知らせる必要はあるだろう。


 しかし今日は日曜日、体の疲れは未だ取り切れていない。あとほんの少しだけ、横になっていたい。

 ごろんとベッドに横になると、枕元には携帯が転がる。

 家の前で告白されたあの日、けじめの為に京介の連絡先は消してしまった。


 でも……話したい。

 今……話したい。

 

 一連の出来事について話したいというのもあるけれど、それ以上に今はただ、京介の声を聞きたくて堪らない。

 記憶を頼りに、想いだけを拠り所に、私は京介の電話番号を頭に浮かべる。


 ゼロ――ハチ――ゼロ――

 話して、それでどうするというの。

 サン――●――ナナ――ゴ――

 そんなの決まってる。

 ロク――●――●――ヨン――

 好きだと、改めて伝えたい。


 会いたい、京介に会いたい。そしてこの手で抱き締めたい。

 気が遠くなる程にコール音が繰り返し、その果てには愛しの彼が待っている。


「――――もしもし」


 出た! 京介が出てくれた!

 私ね、あなたと話したいの。

 京介に伝えたいことがあるの。

 

「京介! あのね、私は――」


 好き。

 京介のことが大好き。

 柊愛子が辿り着いた、真実の愛が今ここに。



「違うよぉ……」



 ――――あれ。



「愛した人を間違えるなんて……酷いじゃないかぁぁぁ」



 あれ。



 あれあれ。



 あれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあぁあああああああああああああぁぁぁ……



「なんで! どうして! なぜ恋治が京介の電話に!」

「愛子ぉ……君に伝えたいことがあるんだぁ。愛子……僕はね……」

「だからっ! なんであなたが――」



 やっぱり愛子のことが大好きだ愛してるんだ君ならいつか僕の全てを分かってくれる君しかいない愛子のことしか考えられない愛子だってそうだ君には僕しかいない僕しか君を理解できない僕と君は結ばれる運命なんだだから一緒に話そうデートしようキスをしようしようしようしよう●●しよう君と僕とで●●しようじゃないと僕は君を●●して●●して●●してしまうだからしようしようしようしよう愛子しようしよう愛子会いたい会いたい会いたい会いたい愛子に会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いに行――



 壁に向かって携帯を放った。反射的に投げつけた。

 白の壁紙には窪みが残り、床に転がった携帯の画面はひび割れて、無機質な不通音を繰り返している。

 頭の中は真っ白だった。まるで頭が回らず、しかし私はすぐにでも、思考を巡らせなければならなかった。


 だって……だってだってだって――――京介は?

 京介の電話に恋治が出たというのなら、京介自身は一体、何処に行ってしまったというの!?


 まさか……


「い、行かなきゃ……京介に会いに行かなきゃ……立ち上がって歩かなきゃ……扉を抜けて、京介の下へと走らなきゃ……」


 血の気が引いて五体が冷え込む。感覚を失う足を引き摺り、救いを求めるように手を伸ばす。

 その手は部屋の扉に向かい、取っ手を体の重みで引き下ろすと、愛する京介を求めて、私は扉を開け放つ。


 悪魔の待つ、呪いの螺旋に続く扉を。



 紅蓮の瞳は燃え盛り、凍てつく髪は月の輝きを。

 血の気の通わぬ白い肌と、枯枝の如き痩躯な手足。

 それらはまるで、生気を感じぬ死者のよう。


 その時、私は全てを理解した。

 ありえないのだ、二人も殺した殺人犯に、これまで何の音沙汰もないなんて。

 ありえないのだ、私の妄想だけで全ての片がつくなんて。

 夢だったのだと、そう思う私の心が幻想で。

 全てはあの時、賽銭を投げた瞬間に、既に私の終わりは始まっていたのだと――


「お願い……私を……許して……」


 恋の神様は、恋に盲目な者の前に現れる。

 彼女に掛かれば、恋の成就率は☆百パーセント☆




 何があろうと、絶対に――




「だぁぁぁめぇぇぇ……」

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