The Stranger ②
えっと、今回、試みてみたのは冴子さんがスグルさんを呼ぶときのあだ名?をネコの目のように変える事です。
あと、冴子さんに思いがけない事が起こってしまいます(^^;)
イケメンスグルがお店のチェックをするというので、先にお風呂をいただいた。
洋品店で買ったスウェットはおばちゃん仕様なので裾がつんつるてんなのにウェストがゆるゆるで、ひもを思いっきり締めあげるとモンペのようになった。
下に着ているまるで色気のない下着と実によく合っていて笑ってしまい、「お手伝いするなら靴下とスニーカーも必要か」…などと普通に日常の事を考えてしまう。
そういえば、さっき声を掛けたのにイケメンスグルはまだお風呂を使っていないようだ
普通の人になったついでに様子を見に行くか…
帳場を覗くと、イケメンスグルは店のパソコンを前に何かモゾモゾやっている。
あ、本屋の袋を取り出した…
と、私と目が合うと慌てて机の下に隠してしまった。
エロだな!!
おおかたパソコンの画面もエッチなページなんだろう
まあ、見るなとは言わないけど…
おばあさまが入院した日の夜に見るのは、どうかと思う。
男とはここまでどうしようもない生き物なのか…
「朝は早いって言ってたよね。夜更かしは毒だと思う」
それだけ言って、さっさと客間に帰って来た。
まったく! “人並み”をするとロクなことがない…
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「冴子さん!よろしいですか」
ふすまの向こうからイケメンスグルに声を掛けられて私は目を開けた。
天井から古めかしい和風の照明器具が下がっているのが見える。
他人の家の天井をこんなふうに見るのは…
仕事で男に乗っかられていた時以来か…
自覚はないが、これが寒い人生というものなのか。
仕方のないことだが、それももうすぐ終わる…
とにかく身繕いをしてふすまを開けた。
「あの、仏間まで来てもらっていいですか?」
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スグルさんは、お仏壇のローソクと線香に火を灯して“おりん”を鳴らし、手を合わせた。
私も彼の後ろに座って手を合わせた。
お参りの後、スグルさんは私に向き直った。
「お仏壇の母の写真を見ていただけますか」
なるほど、今の私は…写真の中の人に似ている。
「僕の母の記憶は…この写真の母なんです。実際の母の記憶は、ほぼ無くて…。昨日は、僕もばあちゃんもあなたの顔を見て驚いてしまって…申し訳ございませんでした」
「確かに驚かれるかもしれませんね。 他人の空似ですけど…」
「そう言われると…次の言葉が出しづらいのですが…」
「もう十分驚きましたから大丈夫ですよ」
この男、またモジモジくんか?…
「あの! ですね」
「はい」
ムダにイケメンスグルはすう~っ!!と息を吸って
ゴクリと飲み込んだ
「僕と!! けっ!結婚していただけませんか?」
「へっ?!」
間抜けた返事をしてしまって…
さすがに、しばし固まった。
可能性として、3つ
① 極度のマザコン(可能性高い?)
② おばあさまのご希望 (私の自惚れか?)
③ 昼夜問わずただで使える女が欲しい(これもあり得る)
ここまで頭を巡らせて私は口を開いた
「キミはバカか? それとも私をバカにしているのか?」
「ごめんなさい。でもどうしてもどうしてもお願いします!! もう…長くない…ばあちゃんの生きている間は、ばあちゃんの夢とか希望をなるだけ叶えてあげたいんです。」
「キミの思いは分からなくはないが、それに巻き込まれるのは困る。例え、その短いかもしれない期間内だけだとしても」
スグルはただただ畳に頭を擦り付けながら、私の目の前に通帳と書類を差し出した。
書類を開くとピンク色のママゴトみたいな婚姻届けだ。
彼の『前橋英』と証人欄に『箭内次郎』と署名されている。
「昨日買った雑誌についていた物ですが、正式な婚姻届として使用可能です。それと、このお金はすべてお渡しします」
まったく社長といいこの男といい、どこまで行っても私は金で買われる身なのか…
ぱらっと中を見て、月々の振り込み額と残高を確かめた。
残念なイケメン英くん… キミには楽しみがあるのか?
人の事を言えない私がこう思うのだから…これは深刻だ…
でも、畳にひれ伏したままの英くんに掛けるのは別の言葉だ。
「この箭内ってどなた?」
「僕の師匠。うちの職人さんです。僕にとって親父のような人」
「もう一人の証人は、おばあさまにお願いするの?」
「はい」
「英さん! 顔をあげて。そしてキチンと聞いて」
顔を上げたカレに私はお願いした。
「私をカネで買う様なことは、もうやめて! 私の願いはお金で解決できない事」
「言って下さい」
「私のお墓を守って。あなたやあなたの子供やあなたの孫に至るまで。だから…いつかあなたの元に来る、本当のあなたのお嫁さんにも、このことは言わなければならない。 それがあなたにはできますか?」
カレは、今までのような泳いだ目では無く、真っ直ぐ私を見つめて言った
「あなたが生きている限り、あなたをお守りしますし、僕の孫や玄孫にいたるまで、あなたのご希望通りにします」
言葉なら如何様にも言える。一時の興奮状態が言わせた事だ。
何度も言うが…私はいつも行き当たりばったりだ…
だから、あかり…
少しだけ待って
そしておばあさまの死は望まないであげて…
私、おばあさまの生に付き合う事にしたから…
私はため息をついて、
英さんを見つめた。
「おばあさまにあなたのお嫁さんを紹介してあげて」
それから私は…
どうでもいい下着の上に、白いワンピースを着て、
ストローハットを被った。
ここから先も、なるだけ糖度高めに行きたいと思います。
あ!! エロ抜きです(*^。^*)
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