シーツもよう その①
このお話は第38部分『クリスマス特別編 ザ★クリスマス ④』の直後のお話となります。
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「今日のクリスマスパーティ、ホント楽しかった!!」
さっき叫び過ぎたのか…英さんの胸に頬を落ち着けて寝物語を始めると声が少しかすれていた。
「人生ゲーム! 冴ちゃん テンションアゲアゲだったね」
英さんの温かい手が脇腹に置かれたのに反応して、私は頬を滑らせて彼の胸にちょっとエッチな悪戯をする。
「そーなのよ!! 面白かった!! でも…」
不意に思い出して私は身を起こした。
「こどもをお金に換えるのはひどい!!」
むくれた心がパチン!と弾けてお布団をポスン!と叩いた瞬間、それは流れ出た。
「あっ!!」
「どうしたの?」
身を起こしてキュッと抱きしめてくれた英さんに私はそっと耳打ちした。
『… … 』
「えっ?? それ…僕のせいだよね…」
私は慌てて首を振った。
「違う! 慣れてない私のせい…でもシミになっちゃったら恥ずかしいから、今洗わせてもらっていい?」
「それならお風呂場で僕が下洗いするよ」
「そんな事、させられません!」
二人してシーツの引っ張り合いっこして…最終的には二人一緒にお風呂で洗う事で落ち着いた。
さっきまでの二人の行状はそっちのけで、もうお父様達はお休みだろうと(お義兄様一家はお帰りになられた。気を遣っていただいたのかも…)かなりラフな格好で二人、廊下に出た。
私は二人の着替えとタオル、英さんは汚してしまったシーツを抱え廊下を曲がると…
『「あっ!!」』
ばったりお母様に出くわした!!
き、気まずい…
お母様は“極道の何とか”の姐さんみたいな笑顔で英さんに声を掛ける。
「英さん、ふたつお願いいいかしら?」
「は、はい」
「一つは、少しだけさえをお借りできますか? もう一つは…さえの為にお風呂にお湯を張っていただけますか?」
「分かりました。じゃ、冴ちゃん!後でね」
英さんはお母様に会釈してスタスタ歩いて行った。
残された私に
「さえ! 私の部屋へいらっしゃい」
とおっしゃるお母様の後を私は戦々恐々と従った。
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部屋に入るとお母様はお布団の上にお座りになった。
この時間だから一度は床に入られたはずなのにお布団は敷いたばかりの様に整えられている。
私は『また汚してしまっては大変』と抱えていたタオルを広げて畳の上に座ろうとしたら止められた。
「畳の上は寒いわ、タオルを敷いてあげますからお布団の上に座りなさい」
お母様に大輪の花柄のタオルを敷いていただき私はその上に正座した。
するとお母様は自分から膝を崩してしまわれた。
「さえも楽になさい。かしこまったお話ではないのだから」
「…はい」
「英さんって、本当に優しいのね」
「はい、私には過ぎた人です」
「またそんな事を! さえ! あなたは私の自慢の娘で…英さんは、この大切な娘を託すに相応しい人! そういう事よ」
そう言いながら頭を撫でてくれるお母様に私はまたぐにゃぐにゃになりお膝に甘えてしまう。
「ちょっと昔話をしましょう。私の新婚時代の」
「えっ!?」
膝の上でゴロゴロしていた“猫”はすくっと顔を上げ、目をきらりん!とさせた。
「聞きたい!!」
「ハイハイ」
膝の上の“猫”にお母様は優しく語りかけた。
「このお部屋。今は私ひとりだけど…新婚時代は夫婦のお部屋だったの…
お父さんは、ほら!あんな人だからあなた達とはちょっと違ったのかもしれないけど、このお部屋でとてもいい時間を過ごしたわ…
夜もね!
大朗を授かった頃は二人ともただもう夢中だったのだけど…
灯子の時は二人目で…当時はお義父様もお義母様いらしたから…
それなりの気遣いをしてしまったの。
で、ある夜、シーツをかなり汚してしまったの。
『失敗した!!』って思いと『恥ずかしい!!』って思いの両方であたふたしてシーツごと壁にドシン!とぶつかってしまって…
壁に汚れをくっつけてしまったの
ほら、ここ…よ~く見ると薄く跡が残っているでしょ?」
「はい…オフホワイトの絵の具で描かれた美しい模様の様に見えます」
「ふふ、素敵な表現ね。ではもうひとつ!
こちらの飛沫の跡は…大朗のおしっこの跡なの。オムツ替えの時に噴水みたいにされて…
あ、この話をした事は大朗には内緒ね! あの子はさえの前では素敵なお兄さんで居たいようだから」
「えへへ嬉しいな! お兄様の気遣い!
私もね!加奈姉さんから聞いた事があります。
まだ小学生だった加奈姉さんが英さんのオムツを変えようして、思いっ切り顔にオシッコ引っ掛けられたって…
あ、これも英さんには内緒で…」
お互いくちびるに人差し指を当て、ふふふと笑い合う。
「男の子は元気ね」
「ええ、ホース持ちですし…」
クスクス笑いの後、お母様は言ってくださった。
「こうした失敗はすべて幸せを紡ぐ糸なの…
若かった私はまだその事が分からなくて…
灯子には可哀想な事をしたのかもしれない。
だから…さえは失敗など気にせず思いっきり英さんと仲良くしなさい!
そうする事が、あなたの“あかり”には一番大切で…
二人の幸せに導かれてこそ“あかり”はこの世に戻って来られるのだから…」
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私が脱衣所に入って来ると英さんがちょうど風呂場から出てきた。
「自動だと『お湯張りアナウンス』が騒がしいだろうから手動でやってきた。ちょうどいい湯加減だよ」
ああ、この人はいつも…周りの人達に優しい…
本当に本当に…
私でいいのだろうか?…
でも
やっぱり!!
他の人には渡せない!!
そう考えると
私の目から涙がはらりと落ちた。
「えっ?! お義母様に叱られた?」
私は大きく頭を振った。
「違うの!! お母様はとっても素敵な事を教えてくれたの! だから!」
「だから?」
「キスして!!」
そのまま二人でお風呂に入って
仲良くシーツを下洗いして
その後、
お風呂場の中で
もっともっと
仲良くした。
。。。。
イラストです。
サンタ衣装の冴ちゃん♡
やっぱり幸せな冴ちゃんを書いていると心が楽しくなります!!(*^。^*)
皆様にも素敵なクリスマスが訪れますように(#^.^#)
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