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こんな故郷の片隅で 終点とその後  作者: しまうまかえで
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クリスマス特別編 ザ★クリスマス ②

今回は初の、英さん視点です。


私の中で、ちょっとこなれていない感がありますが…


英さんがプレゼントを選ぶぎごちなさと合っているのかも(^^;)

いつもの待ち合わせの喫茶店。


コーヒーにそれほどこだわりは無いのだけど、ここのオリジナルブレンドはオレの大のお気に入りだ。

冴ちゃんがウチに来てくれて、真っ先に連れて来たのも、ここ

冴ちゃんは感激して、そのオリジナルブレンドの豆を買って帰った。

何回かの試行錯誤の後、その豆で、『まろやか音』と銅のコーヒードリッパーを使って本家を凌ぐほどのコーヒーを淹れたのには驚いた。

さすがにマスターに失礼なので言えないのだが、この喫茶店に『まろやか音』を設置した後ですら、オレは冴ちゃんのコーヒーの方が美味しい、というか好きだ。

冴ちゃんが「英さんの好みに合って良かった」と言ってくれたから…


そんなことを考えていると、ついさっき別れたばかりの冴ちゃんが、もう恋しくなる…


本当に愛しい…


カラン!とドアが開いて、兄ちゃんが入って来た。


冴ちゃんは津島のお母さまのところで姉ちゃんと女子会。


オレは兄ちゃんとオヤジさんとで明日の休みはシロギス釣りだ。


アオイソメを入れる木の餌箱はもう水に沈めてあるし…後は…


「悪いな!スグル!待たせちまって! 高速の事故渋滞、結構キツかった」


「らしいね…厨房のラジオで聞いてた…どうする?オレんとこ、使えるアジングロッドとメバリングロッドが1本ずつしかないんだ。フィッシングランドへ行って買い足す? オレ運転するよ」


「馬鹿野郎~ 釣りの準備なんてあとあと、もっと重要な事があんだろ?」


「…仕事は、問題ない。うん 問題ない」


兄ちゃんは呆れ顔になった。

「冴ちゃんの事だよ、加奈ちゃんから聞いたけど、お前、あいつにまだ指輪贈ってねえだろ? エンゲージリングってやつを」


「ああ、指輪… それはこのあいだ、工房のオーナーに頼んである。オレの結婚指輪受け取りに行った時、冴ちゃんも連れて行って…それとなくオーナーに好みとかもリサーチしてもらったんだ。」


「お前、クリスマスは来週だぞ! 出来上がりは間に合うのか?」


「それは無理… あ、兄ちゃんたちの結婚式には間に合うよ」


「だったら、クリスマスどうするよ!」


それは別に…と言い掛けたオレの言葉に耳も貸さず、兄ちゃんはテーブルの上の伝票を取り上げてさっさとレジへ向かった。



--------------------------------------------------------------------


兄ちゃんがオレを引っ張って行ったのは地元の宝飾店だ。


兄ちゃんが「こんにちは」と店に入ると、店長と()()()()()の両方が近寄って来る

「こんにちは賢さん」

「いらっしゃい」


「本店から取り寄せを頼んでいたのは、どうかな?」


兄ちゃんは、初めてこの街に来てから僅か数か月であちこちに顔なじみがいた。それは姉ちゃんのフィアンセと言う立場や、その人当たりの良さだけでは無く、キチンとこの街の人々を大切にしているからだと思う。それは冴ちゃんにも通ずる事なのだけど、この街の人々はこんな人が好きだし、大切にするんだ。


「店長、しいちゃん、ごめんね。スグルのやつ、エンゲージリングはオーダーメイドなんだってさ。本店のほう大丈夫? 何ならオレ、指輪も、もう1個もらおうか?」


「あー大丈夫大丈夫、そんなの当たり前だから。それよりそんなことしたら私たちが加奈ちゃんから怒られる」

「そうそう、英くんを連れて来てくれただけでも、大感謝だよ… 私達のあこがれの“君”に代表して引導?を渡せるんだからね」


「ひょっとして、しいちゃんとスグルって同級生?」


「同じ高校だったんだよね~英くん!」


「うん… 近所なのに、意外と久しぶりだよね」


「それは英くんが女子に目もくれなかったからでしょ? そのキミがねぇ~あの、冴ちゃんと…」


「そうそう、グーパンされたんだよね」


「はい、夜這いしてグーパンされました…」


「冴ちゃソも気、強ええからなあ」と兄ちゃんが笑う


「あの時はさすがに激震走ったのよ、私たちの間で…『“あの”英が夜這いした』って…」


「そう言えばその後、冴ちゃソが、オレんとこに逃げて来たって噂にもなってたなあ」


「あーもう、兄ちゃんたち、いい加減、オレいじるの、止めてくんない」


「バカいえ! こんな美味しいネタ、簡単に手放せるか」

と皆に笑われた…



--------------------------------------------------------------------

「冴ちゃんってピアスしないよね。」


「加奈ちゃんもここの所、全然してない」


やはりプロなのだろうか?よく見ている。

そんな店長としいちゃんが姉ちゃん向け、冴ちゃん向けと選んでくれたイヤリングを男二人が唸りながら眺めている図だ。


「ピアスも加えればもっとバリエーションが広がるのだけれど…」

と言われたのだが、冴ちゃんが今までピアス穴を開けなかったのは、やはり何か理由があったのだと思う… だからオレはあえて、冴ちゃんがキズつくことはしたくなかった。


結局、兄ちゃんはプラチナとピンクゴールドとイエローゴールドの三連手編みのイヤリング、オレは星のセンター部分にダイヤをあしらったプラチナの()()()()()というものを選んだ。なんでも“圧迫感が少なく”ピアスのように見えるんだそうだ…しいちゃんが自分の耳を使って合わせて見せてくれたのだけど、すっきりとした可愛らしさと存在感があった。


なんにしても男二人がジュエリー用の小さなバッグを提げて並んで出て来る様は我ながら笑えた。


背中の二人からはもちろん、周りからの視線も何だか生温かい感じなのは、この街でこういう贈り物を買う時の、何とも言えない気恥ずかしさなのだろう。







挿絵は英さんの冬バージョンです。




挿絵(By みてみん)




今回のタイトルは BENNIE Kの曲 『 ザ★クリスマス』にあやかりました。

(#^.^#)

この曲はPOPで元気で可愛くて、お話にピッタリな気がしています(#^.^#)

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