“もうひとつの” Sailing ④
今回はパキパキ仕事をする加奈ちゃんです(*^。^*)
運転は賢ちゃんに任せて助手席でナビしてたんだけど、やっぱり賢ちゃんは社長さんだ。
色んな所から電話だのメールだの来るから、
いつの間にか“秘書”みたいなことをやっていた。
賢ちゃんに聞いたら、いつもは全部自分でやってるって
ダメだよ。
ながら運転は危ないし捕まる。
「私がやってあげようか」と言うと
「加奈ちゃんは大切な仕事しているから」と言われる。
まあ、仕事は大事だったけど…
そう、既に過去形になってる。
この一日で私の人生は確実に流れが変わったのだ。
今は自分の心の示すままに生きていきたいと強く思う。
それが一番良いと思える…
「ん、賢ちゃん! アナタのお膝元がトラブルだよ。本社の人からHELPメール、タブレットの方に画像送ったって」
「加奈ちゃん悪い! タブレット、見てもらえるかな」
私は、ほんの少しだけカレの内ももに悪戯をしてから、膝の上に乗っかっているタブレットを拾い上げた。
送られた画像を見てみる。
「…これは」
「ん? どうした?」
「どうやらユーザーさんの、ラインの繋ぎ間違えが原因らしいね。“ヒヤリハットだ”。こんなの、色を揃えてあげれば防げるのに…」
「加奈ちゃん!」
「なに、賢ちゃん♡」
「ウチの技術に説明できる?」
「あ、“師匠”さんでしょ? できるよ」
賢ちゃんの横顔は満面の笑みだ
「可愛いし頼りになるね」
次の信号待ちで、賢ちゃんはスマホをタップした。
「おう! オレだ! 今? 大切な仕事中。これから新任の統括から話があるから…そう、冴ちゃんイチ押しの人、で、オレの…」
賢ちゃんは助手席の私を見てウィンクした。
「嫁さんになる人」
『えーっ!!』と叫んでいるスマホを渡された私は照れ照れだ
「あ、箭内といいます。どうも、はい、でも統括になったのは婚約より先なので!忖度ではないですよ… うん、冴ちゃんの姉です。はい。いま賢…、社長がそちらへ画像送ってくれたので…そうそれ。これラインの繋ぎ間違えですよね。ユーザーさんの…そう、確かにウチの責任ではないけれど。これ色分けして同じ色同士のラインを繋ぐようにすれば…そう、あ、すぐできます? できれば今日の午後には… OK?!、ホームセンターで部材を…じゃ、それでお願いします。 担当の方、今横に居る? 良かった、ちょっと代わってもらえます?」
私は一呼吸置いた
「もしもし、はい、統括の箭内です。今聞いていただいたように、これはウチの責任ではありません。だから相手様にはお詫びにお伺いするのではなく、お礼にお伺いするのです。相手の方はお年を召してますか? そうですか、手土産は1000円くらいの、日持ちがするもの…おかきとか堅いものはだめよ。コンビニで買うなら店員に聞きなさい。 あと『冴茶ソ』のほうじ茶のセットも持って行きなさい。あれは洋風の焼き菓子にも合うから。いいですか、キチンと背筋をのばして、心から感謝を申し上げるのですよ。貴重な情報をいただきたのですから… はい、じゃ師匠に代わってもらえます?」
賢ちゃんはいつの間にか、車を路側帯に留めてウィンカーを出している。
「師匠、今日の訪問、ついて行って上げて下さい。それで現場での要領や作業時間、分かりますよね。それを元に、今までのユーザーさんを順番に付け替え訪問をして次の更新や買い替え、あと冴茶ソなどの拡販に繋げましょう! はい、社長? 今、出れますよ… アハハハ 試しに言ってみてください」
と賢ちゃんに電話を替わる。
賢ちゃんも照れ照れで話していたが、ビデオモードにして私に画面を示した。
画面の向こうの師匠の周りに人だかりがしているので
「よろしくお願いいたします」と頭を下げ、手を振った。
電話を切った賢ちゃんは「タバコ、いいか?」と私に聞いてから窓を下ろした。
潮風がまた、カレの額を撫でる。
「加奈ちゃん!良かったよ」
「嬉しい、賢ちゃんの役に立てて」
「冴ちゃんが…『加奈子さんは私よりずっと仕事できる』って言ってたのが分かった」
「冴ちゃんと賢ちゃんにそう言ってもらえるなんて、感激!!」
「ねえ、賢ちゃん!」
「ん?!」
「私、師長に病院を辞める相談をしようと思う。いいかな?」
「…加奈ちゃん、それは…」
「私、賢ちゃんの全てのパートナーになりたい」
「オレ、仕事だと容赦しないよ」
「その言葉、そっくりお返しします」
二人同時に吹き出して、
タバコの火を消した賢ちゃんと長い長いキスをした。
例え仕事で言い合いしても、私たちはずーとずーと仲良しだ。
当たり前の様にそう感じる私たちが、
そこに居た
。。。。。。。。。
2024.10.28更新
久しぶりに加奈子さんを描きました。
どこに入れようか迷ったのですが、こちらにしました(#^.^#)
この二人だと“向かうところ敵なし”のような感じがしてきます(#^.^#)
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